所長あいさつ

関西学院大学  災害復興制度研究所
  所長 山 泰幸(人間福祉学部教授)

阪神・淡路大震災の発災から10年目の2005年1月17日、被災地の大学としての社会的責任から、「人間復興」の理念のもと、被災者の生活の再建・再生を中心的なテーマとする日本初の研究所として、災害復興制度研究所は設立されました。
自然災害が頻発する日本では、早くから自然科学分野からの防災研究が発達してきましたが、これに比べて、被災者や被災地の「復興」に特化した社会科学分野からの研究は充分ではなく、設立当時としては最先端のテーマを掲げた他に類を見ない研究所として出発いたしました。
その後、東日本大震災、西日本豪雨災害など、大規模災害が頻発し、それに伴い、「災害復興」を名称に冠する研究機関が各地で設立され、本研究所を事務局とする日本災害復興学会が設立されるなど、「災害復興」という言葉は、いまや市民権を得ています。

私自身は、研究所の設立準備段階から関わることになり、研究所として最初の現地調査となった2005年3月に発生した福岡県西方沖地震では、現地調査の企画及びコーディネーターを務めましたが、発足直後ということもあり、当時の宮原浩二郎所長、山中茂樹主任研究員はじめ、ごく数名で現地調査に赴いたこと、その際には、西日本新聞社の重村誠志記者が関係機関との調整などにご尽力くださり、我々の現地調査をサポートしてくださったことを、昨日のことのように思い出します。
その後も研究所では、多くの方々からサポートしていただきながら、さまざまな調査研究を実施し、現在に至っております。お世話になった方々に、あらためて感謝いたします。

今後の研究所の方向性として、力を入れたいと考えていることが2つあります。1つは、「国際的な協働」です。近年、大規模災害が頻発し、近い将来には、首都直下型地震や南海トラフ巨大地震などの発生が予測されています。大規模災害からの復興は、一国だけで対応できるものではなく、国際的な支援、協力関係の構築が不可欠であり、益々、その重要性が高まっています。 もう1つは、「地域復興」へとウィングをさらに広げることです。被災地の多くは、被災以前から、人口減少や少子高齢化、過疎化などに悩まされており、地域そのものの復興が課題となっています。災害からの復興の取り組みと同時に、地域の弱点を克服する地域復興の取り組みが求められているのです。

最後になりましたが、この4月から所長に就任することになりました。力不足ではありますが、歴代の所長の背中に学ばせていただきながら、誠心誠意、務めていく所存です。
今後とも、本研究所へのより一層のご支援、ご協力をお願いいたします。

2022年4月