海洋生命理工学
珪藻の光合成と地球環境
地球上のCO2固定の実に20%が海洋に生息する珪藻というプランクトンが固定しています。このことは1997年、大規模な海洋調査と、リモートセンシングを行う人工衛星からの観察を駆使した国際研究で初めて明らかになりました。それ以来、海洋性珪藻は地球の光合成の主役として注目を集めています。しかし、珪藻は二次共生生物というまだ謎が多い生物に属し、彼らの細胞の働きの多くも謎。この解明を目指しています。
珪藻のCO2固定、センシング、そしてケイ酸バイオミネラリゼーションに着目
珪藻は海に溶けているCO2や炭酸イオンを積極的に取り込んで葉緑体にため込み効率的に固定できます。また、この仕組みは、珪藻が環境CO2濃度をセンシングして、強くなったり弱くなったりして、エネルギーを効果的に使います。このような仕組みの解明を目指した研究を展開しています。また、珪藻はナノメートルサイズのケイ酸(ガラス)を細胞壁にもつ特殊な微生物です。このガラスの殻に有用な酵素タンパク質などを発現して、画期的な材料を作ることを目指しています。
特殊な葉緑体の構造と機能を解明
珪藻は二次共生により獲得した4重膜の葉緑体を持ち、その中心部にはピレノイドと呼ばれる液晶タンパク質構造を持ったCO2固定中心があります。この構造と機能はまだ手付かずの謎満ちた世界です。我々の研究室では、このようにまだ誰も調べたことのない分野の扉を開くような、自由で面白い研究に取り組んでいます。