微生物生化学

福田 青郎 (ふくだ わかお) 専任講師

微生物生化学研究室

研究分野:
生物工学、微生物、極限環境微生物、アーキア、バクテリア、環境適応、微生物分類

微生物の生きざまって、(役に立つかどうかはおいといて、)面白い

【生命のかたちは多種多様】
 「地球上に存在する《生命》をイメージしてください」と言われると、皆さんはミミズやおけら、アメンボなど、様々な動物や植物をイメージすると思います。しかし世の中には、小さすぎて目に見えないだけで、たくさんの微生物がいます。この微生物たちは、人の役に立つものから害を及ぼすもの、逆に人とは全く関係性がないものなど様々です。またいわゆる普通の環境に生きているものから、高温/低温などの常識外の環境で生きるものまでいます。言いかえると彼らは、それぞれが生きるための特別な仕組みを持っているのです。私は微生物を対象に、この様々な仕組みを理解し、また時には応用していく研究を行っています。

【温泉に生きる好熱菌】
 温泉は人間にとって人気の旅行スポットでしょうが、温度は様々です。グツグツ煮えたぎるような温泉に入る気がしますでしょうか?ところがこのような高温環境でしか生きられない微生物もいるのです。このような微生物の細胞内には、高温に生きるのに必要な仕組みがあります。大雑把に言うと高温でもこわれないように、生命活動の道具(酵素)が頑丈にできています(耐熱性酵素)。この頑丈な酵素は工業的に役立ちやすいのですが、さらに耐熱性酵素をより効率的に利用するために、粒が大きく回収の容易な珪藻被殻に発現させるなど、利用するための工夫にも取り組んでいます。また比較的弱い生命の設計図(核酸)を頑丈にするための補助具(ポリアミンなど)もあります。ポリアミン自体は人間も持っていますが、好熱菌のものは構造が大きく複雑で、より強固に安定化する性質があります。このポリアミンが生物に与える効果は多種多様で、全容を明らかにすべく研究を進めています。また関連の物質は健康にも良い影響があったりしますので、その合成酵素の利用についても検討しています。

【貧乏暮らしに慣れすぎている貧栄養菌】
 世の中いつも栄養が満足にあるわけではありません。しかし逆にたべものが足りないなら足りないなりに、その薄い環境で生きていこうとする微生物もいます(貧栄養菌)。むしろ貧乏暮らしに慣れすぎて、栄養が多すぎると生育しなくなるほどです。これまで一般に、栄養豊富な環境で元気に生育する生き物を対象に研究されてきた分不思議に見えますが、栄養が足りない環境は珍しくもないので、生命にとって割と普通の話なのかもしれません。そういえば南極から分離された微生物を調べた時にも、通常の実験レベルの栄養では生育が悪くなるものが多く見受けられました。南極は基本的に植物が自生していないため栄養に乏しく、そもそも基本的に寒い分にはバクテリアはあまり死なないせいでしょうか、彼らにとって貧しい栄養状態に慣れるのが生存戦略として大事だったのでしょう。

研究室の風景

 微生物は多種多様で、その生存戦略もまた多種多様です。人の生活に役立つ場合も少なくはない一方で、そもそも彼らの個性的な動態はなかなか面白いものです。「生きる」とはなにか?様々な場所で生きるための仕組みを明らかにしたいと思っています。