化学生態学(北條研究室)

下地 博之

下地 博之 (しもじ ひろゆき) 助教

研究分野:
アリ-バクテリア共生関係、社会性維持機構、社会性免疫

研究内容

私たちは日常的に目にするアリは、女王を中心とした社会を作って生活しています。このような社会は分業体制を基盤として成立しています。
分業とは、巣の中で育児を行う働きアリや巣の外で餌を集めてくる働きアリ、そして産卵を行う女王といった社会における役割り分担を意味します。このような分業体制は誰かが命令して行われるものではなく、近くにある情報 (例えば他の個体の存在など) をもとに、自律的に行われています。また、多くのアリ種は地中の中という閉じた空間で密に生活を行なっているため、常に巣の外から持ち込まれる病原性微生物が社会の中で広がる危険性を持っています。
このような病気に抵抗するために、アリは巧妙な防御機構を進化させてきたと考えられています。私は、主にアリを材料として社会がどのように維持されているのかに焦点を当てて研究を行なっています。具体的には、次の3つについて研究を行なっています。
1つ目はアリとバクテリアの関係です。実際に野外で採集したアリを用いて次世代シーケンサーによってアリの腸内にいるバクテリアを調べ、得られたバクテリアの機能や感染経路について調べています。
2つ目は働きアリの柔軟な役割り分担の変更です。働きアリの役割りは基本的に若い働きアリが巣の中で働き、歳をとった働きアリが巣の外で働きます。しかしながら、このような分担は必ずしも固定されたものではなく、状況に応じて柔軟に役割りを変更する事ができます。この柔軟役割り変更について、行動解析と分子実験によって調べています。
3つ目は、アリの持つ集団の免疫機構です。アリの社会の持つ分業体制に着目して、外から持ち込まれる可能性のある病原性微生物に対して、どのように巣内での蔓延を防いでいるのかについて、行動解析と分子実験によって明らかにする試みを行なっています。