そうせいTIMES 第3号 ポスト3.11 これからの地方行政~復興に向けて自治体ができることとは~(2011/12/01 発信)

[ 編集者:総合政策学部・総合政策研究科       2015年6月11日   更新  ]

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◆教員のステータス、担当授業科目は、2011年12月1日発行時点。

各教授陣

震災で浮き彫りとなった地方自治問題

村上教授

村上教授

東日本大震災で、地方自治体である市町村の行政管理がほとんど機能せず、「自治体は地方政府として成り立つか?」という問題が提起されました。
自治体である市町村は住民に直結した機関であるため、迅速で的確な行政管理が求められます。これまでの計画が「平時」を前提として作られており、被災地となった自治体などの被害が甚大だったため、物理的にも時間的にも余裕がなかったといえます。

こうした状況の中で、自治体をどのような形で復旧させるかが、当面の課題です。危機管理を前提として、あり方を根本から見直さなければなりません。一例として、福島第一原子力発電所の1号機から4号機が立地していた大熊町は、震災の影響で埼玉県など近隣地域に仮役場を設置しました。しかし、一緒に移動した住民は一割ほどで、実際には県内や全国各地に避難した人が大多数でした。

古川教授

古川教授

震災発生から9カ月が経過した今も、瓦礫の処理が滞っている地域があります。マスコミは「早急な対応を」といった論調で、自治体の対応が問題視されています。ただ阪神大震災でも長い時間を要したように、危機的状況から平時状態へ戻すことは決して容易ではありません。住民のさまざまな要求に対して自治体の職員の対応が追い付かず、全国から寄せられている義援金の使われ方も不明瞭なのが現状です。

以前の状態に近づけるために個々の生活を整えることは大切ですが、まずは生活の場である自治体の立て直しが第一です。そして、町の再生に対して自治体が国から積極的に予算をとり、優先順位の高いものから順序立てて生活基盤を整えていくことが求められています。

李准教授

李准教授

大きな被害を受けた自治体は、人やお金といった社会資源が限られます。特に医療・社会福祉の領域は、もともと人員が足りていないこともあり、充分なバックアップが困難な状態です。
人間は自分以外に多くの人がいる場合、とりあえず周りに合わせようとする「多数派同調バイアス」という心理が働きます。

緊急時に「何も起こらないだろう」といった考えが広まると、いざという時サポートが必要な高齢者や障害者を置き去りにするケースを引き起こします。震災においては、自身の地域のみならず、近隣の地域も同時に被災することがあります。近隣地域間の連携だけでなく、物理的な距離を超えたパートナーシップの強化を自治体間で模索する必要があります。

角野教授

角野教授

今回の東日本大震災では、津波や原発によって家並みや生業、景観といった風景そのものがすべて失われてしまいました。風景とは、歴史的に有名な街並みや文化財があるとかいうことではなく、そこに住まう人々の生活がトータルで表れたものです。
これまでの見慣れた風景を再生するというのは、津波の被害を受けにくい高台に移り住めばいいといった単純な話ではありません。漁業などを生業としている人にとってはそれも困難となります。町の産業をどう再生するのか、それが日々の暮らしにどのように繋がるのかを、住民が主体となって段階的に総合的に考えていかなくてはなりません。

津波に何もかもが流されてしまったように見えても、山のシルエットや入江の形など、以前の姿を思い起こさせる風景が残っています。復興のまちづくりを進めるにはこうした記憶のキャンバスの上に、新しい生活の姿、すなわち新しい生活景を描く作業が必要なのです。その主体はもちろん住民ですが、日本中のまちづくりの専門家が支え続けることが大切です。