嶺重ゼミ(人間科学科)

[ 編集者:人間福祉学部・人間福祉研究科 2016年11月9日 更新  ]

みねしげ きよし

【担当教員】
嶺重 淑(みねしげ きよし)

研究テーマ

「人間」を考える:「歴史」と「文学」からのアプローチ

研究内容

 人間とは何か?――古来、人間はこの問いを持ち続け、自分という存在について考えてきた。もちろん、この問いに対する明確な答えが見出されたわけではなく、今日においても、この問いへの探求は様々な角度から続けられている。事実、一言で「人間理解」といっても、それは決して一様ではなく、身体 的、心理学的、哲学的、宗教的、社会学的等、様々な視点からの人間理解(人間論)が存在するが、本演習では特に「歴史」と「文学」を通して人間理解を試みていきたい。
 「歴史」とは一般に過去における人間社会の歩みを意味するが、単なる過去の出来事の記録に留まるものではなく、今を生きる人間のあり方をも指し示すものである。事実、歴史を通して、人間は自らの現実の姿に気づかされ、人間に対する理解を深めることができる。例えば、「アウシュヴィッツの出来事」として知られるナチス・ドイツによるユダヤ人虐殺は 20 世紀最大の惨事とされるが、この世紀の犯罪が当時の最高水準の学問や文化を誇っていたドイツで起こったことは、人間がもつ知恵の脆さと頼りなさを露呈するものとなった。また、この犯罪に手を染めたナチスの指導者の多くは、通常想像されるような極悪非道な人間ではなく、むしろ凡庸で気弱な性格の持ち主であったと指摘されているが、そうだとするなら、ごく普通の人間がどうしてそのような残虐行為をなしえたのか。ここにも人間の本質を理解する上で重要な鍵となるものが示されているように思える。
  一方の「文学」は、虚構の世界の中でストーリーを展開させていくが、必ずしも虚構の世界の中に留まるのではなく、そこに描かれている人間の姿は時としてよりリアルなものとなる。『罪と罰』や『カラマ-ゾフの兄弟』等の作品で知られる 19 世紀ロシアの文豪ドストエフスキーは、終始「人間」に関心を持ち続け、人間の本性を探求し続けた作家であるが、彼は特に人間の心の中の闇の部分に注目し、人間の内面に潜む暗部を見据えながらも最終的には兄弟愛によって結ばれる人類の理想を追い求めようとした。事実彼の作品は、様々な矛盾を孕んだ人間存在の本質に関わる内容で満ちており、それらの作品を味読することによって彼の深遠な人間理解に触れることができる。
 本演習では、以上のような観点を踏まえつつ、歴史的文献や文学作品の講読を通して人間の本質について考察し、それぞれの人間理解を深めていきたい。

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