社会起業学科とは?

[ 編集者:人間福祉学部・人間福祉研究科       2008年3月18日   更新  ]

 「社会起業」を学部・学科の名称に用いたのは、日本では関西学院大学が初めてのケースになります。そのため「社会起業学科」で何か学べるのか、将来はどんな進路があるのかなど、疑問に思われている方もおられることでしょう。
 以下は、社会起業学科の理念をまとめたものです。まずはご一読ください。
 「社会全体の幸せと人間の福祉に貢献する次代のリーダーを育てる」――私たちの信念と使命をご理解いただけるものと考えます。

 

「社会起業」はベンチャー企業とは違います。

 「社会起業」とは、貧困や環境破壊といった社会問題の解決を目指した起業であり、利潤を最優先するベンチャー企業とはまったく異なります。「Newsweek日本版」(2007・7・18号)は、社会起業家は今やあらゆる場面で脚光を浴び、社会起業家こそが社会問題の解決と事業の運営を両立する新世代のリーダーであるとして、「世界を変える社会起業家100人」という特集を組んでいます。
 
 2006年にノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏は、世界で最も有名な「社会起業家」でしょう。低金利・無担保融資のグラミン銀行をバングラディッシュに設立し、途上国の多くの貧困者(特に女性)の経済的・社会的発展に大きく貢献しています。日本国内でも、雑誌販売という仕事を提供することによってホームレスの自立をサポートする「ビッグイシュー日本」や、途上国の生産者に仕事に見合った賃金を支払って作られるフェアトレード(公正取引)ファッションの人気ブランド「ピープルツリー」といった社会起業に注目が集まっています。

 このように既存の枠に捉われず、広い視野を持ち、自由な発想で社会全体の幸せや人間の福祉に貢献する新世代のリーダーを育てる、それが社会起業学科の目指すところです。

これからの日本社会のリーダーを育てる「志」を持った学科です。

 また、私たちが考える社会起業とは、そうした組織を立ち上げる(=起業)ことだけでなく、社会福祉協議会、福祉機関、NPO、国際機関、さらには企業などで、人間の福祉のための新しい事業を発想し、実行することも含まれます。たとえば、世界的なブランドであるスターバックスコーヒー(スタバ)。同社では、CSR(企業の社会的責任)として、途上国の小規模生産者のコーヒー収穫に対してフェアトレードを行うだけでなく、生産者のコミュニティの生活水準の向上を目的に、その地域のインフラ整備への投資も行っています。このように、企業の中でのCSRを自由な発想と熱いハートで担える人たち、ビジネス手法で社会問題の解決を迫る企業や市民リーダーの育成も、この学科の使命です。

 さらに、誰もが幸せに生活できる社会を創っていくには、企業やNPOなどの民間の力だけでは不十分です。地方自治体はもともと社会システムを構築する中核ですので、そのなかで生活者の目線で市民と協働して公共政策を実施していける公務員を育成していくことも、私たち社会起業学科で育てたい人材像の一つです。(市民協働型の公務員養成)

リーダーとして新しい社会の形を描くため、世界で学びます。

 世界規模での国際化や国内の多文化が進む現代社会においては、将来どんな分野に進もうとも、グローバルな基準で有効な知識や実践力を身につけることが不可欠となってきます。学生たちが創造的な発想力や柔軟で不屈の実践力を身につけられるように、本学科では国内外におけるフィールドワークやインターンシップを中心とする非常に実践的なカリキュラムを準備しています。たとえば、2年生の春学期の3カ月間、希望学生全員がカナダの大学で学べるというシステムは、本学で唯一の「学科専用」の留学プログラムです。

 日本初の社会起業学科で、学生一人ひとりが多文化化・国際化する社会に対応した知識、コミュニケーション能力、思考力、実践力を身につけ、卒業後のさまざまな進路(起業、一般企業の社会貢献、福祉系企業、自治体、福祉機関、NPO、国際機関、国内外の大学院への進学)を選び取り、「人間福祉」の礎を築いてくれることを、私たちは期待しています。

将来の進路、就職は?

 社会起業を志して欲しいですが、卒業後すぐに起業して成功する人は少ないでしょう。一般企業に就職することももちろん想定しています。一般企業のなかで、新しいビジネスモデルを提案し、企業内ベンチャーを興したり、既存のビジネスモデルの再構築を提言できる、また、企業の社会的ミッションを活かしたビジネス展開を提案できる、起業型発想と構想力を持った学生になっていってほしいと思います。
 
 また、この学科の専任教員には財政学の専門家が複数いますので、その関係で関西はもちろんですが、北海道、沖縄、九州、四国などの地方自治体で多数のインターンシップの機会を作ります。公務員試験の直接指導を講義のなかでするわけではありませんが、政府や自治体のことを深く学び、国や自治体の公務員をめざすモチベーションを十分に高めます。ただの公務員ではなく、お役所仕事の公務員的な発想にとらわれない「非公務員型公務員」の資質を持った学生をたくさん世に送り出したいと思います。さらには国内にとどまらず、国際機関や多国籍企業において、世界的な規模で人間の福祉に貢献してくれる卒業生が出てきてくれるとことを期待しています。