2015.06.30.
森田昭二さん(本研究科修了生)が『盲人福祉の歴史』を出版

森田昭二氏写真

 高校教師を退職したあと関西学院大学院で学び78歳で博士号を取得した全盲の研究者、森田昭二さん(2014年3月本研究科修了、現在80歳)が6月、研究活動の集大成となる本を出版した。
 タイトルは「盲人福祉の歴史」で、副題を「近代日本の先覚者たちの思想と源流」とし、近代日本において盲人福祉活動に力を尽くし多大な貢献をした好本督、中村京太郎、熊谷鉄太郎の思想や業績を中心に論じている。
 あまり知られていない日本の盲人福祉の歴史を明治期までさかのぼり、イギリスの盲人福祉の紹介や点字の普及活動、日本盲人会の結成、さらにジャーナリズムを通じての啓蒙運動まで、我が国における盲人福祉事業の進展を幅広い視点で網羅した。

 生まれつき視力が弱かった森田さんは努力して京都大学を卒業し、大阪府下の高校で国語の教員として勤務したが視力が悪化したため55歳で退職。64歳のときに失明したが、「もっと新たな
ことに挑戦したい」と点字を習得し、まわりの人たちの協力も得てさまざまな困難を前向きに乗り越えてきた。短歌は30代から続けこれまでに歌集を3冊出版した。
 そんな森田さんは視覚障害者への支援サービスを受けるなかで、日本の社会福祉の歴史を研究したいと思うようになり、69歳で関西学院大学大学院に入学。古希から喜寿の人生を研究に捧げ、78歳で博士(人間福祉)を授与された。

 森田さんは「失明して思わぬ人生の至福の時にめぐりあうという幸運に恵まれた。自分の研究が本になり世に出たことは嬉しい半面、責任も感じる。今後もやり残した研究をもう少し続けたい」と意欲十分だ。
 本は明石書店から出版され、全国の書店で購入できる。5,500円+税。7月18日(土)、13時半から西宮上ケ原キャンパスの関西学院会館で出版記念会を予定している。