2022.09.08.
Vol.4 教育と福祉の協働とスクールソーシャルワーク(社会福祉学科 高橋 味央 助教)

高橋 味央助教

人間福祉学部 社会福祉学科 高橋 味央 助教

■学校で働く社会福祉の専門職を知っていますか?

 みなさんは、スクールソーシャルワーカーという仕事を知っていますか?スクールカウンセラーに比べて、あまり聞き馴染みがない仕事かもしれませんし、通っていた学校にはいなかったという方も多いかもしれません。スクールソーシャルワーカーとは、その名のとおり、学校で働く社会福祉の専門職です。子どもやその家庭が抱えている困りごとについて、直接的な相談援助をおこなうことはもちろんのこと、制度やサービスなどの社会資源を紹介したり、専門機関と連携したりしながら、子どもを取り巻く環境の調整をおこなっていきます。また、学校の先生たちとチームを作りながら、一緒に解決策を考えていく仕事でもあります。 文部科学省による「スクールソーシャルワーカー活用事業」が開始されたのは、2008年のことです。それまでにも先駆的な活動は点在していたものの、正式な制度化からはまだ十年余りしか経っていない、比較的新しい仕事です。しかしながら、その草分けとなったアメリカでの始動は、1900年代初頭にさかのぼるとされており、実は長い歴史をもつ専門職なのです。諸外国に比べると、遅まきのスタートとなった日本のスクールソーシャルワークですが、昨今では、子どもの福祉や教育の関連施策でその活用が明文化されるとともに、配置の拡充が謳われるようになりました。

文部科学省(2008)「スクールソーシャルワーカー(SSW)活用事業」より引用し抜粋

出典:文部科学省(2008)「スクールソーシャルワーカー(SSW)活用事業」より引用し抜粋 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/046/shiryo/attach/__icsFiles/afieldfile/2016/08/24/1376332_001.pdf

■求められる教育と福祉の協働

 ではなぜ、現在の日本において、スクールソーシャルワーカーが必要とされるようになったのでしょうか。そこには、子どもを取り巻く問題の複雑化が背景にあります。テレビや新聞では、連日のように児童虐待やいじめの問題が報道されています。子どもの貧困という言葉を耳にしたこともあるかもしれません。そうした、学校現場だけでは解決が難しい問題が増加したことで、教育と福祉の関係者が一体となって支援にあたること、ならびにその体制づくりが急務となりました。そこで、両者の架け橋となり、実際に学校で支援もおこなう、そうしたスクールソーシャルワーカーへの期待が高まっていったのです。 しかしながら、教育と福祉の関係というのは、専門性や行政管轄の違いなどから、軋轢や分断が生じやすい傾向にあることが、かねてより指摘されてきました。そのために昨今では、教育と福祉がいかに協働していくのかということを論点とする、学際的研究が盛んになってきました。私の研究関心もここにあります。私は、「『学校プラットフォーム』(学校を基盤とした子ども支援)の実践モデル構築」という科学研究費助成事業の研究の一環で、先進的な自治体の学校・行政・地域組織・民間団体などを対象としたフィールドワークやインタビュー調査をおこなっています。成功事例をもとに、支援システムの構造と展開過程を質的に明らかにし、多彩なアクターの相互交流による包括的な子ども支援の方途を探索しています。

■子どもの権利を守る社会へ

 2022年6月の国会では、こども基本法およびこども家庭庁設置法が成立しました。また2024年には、厚生労働省の管轄のもと、子ども家庭福祉を専門とした新たな資格制度が創設される運びとなりました。現代の日本はまさに、子ども支援の在り方や、その基盤となる子どもの権利保障の再考を迫られているといえます。 スクールソーシャルワーカーには、「子どもの最善の利益」を追求し、全ての子どもに健やかな生活と十分な教育を保障する、そうした社会を作っていくという使命があります。また、問題の悪化を憂慮するだけでなく、色々な理論を活用して要因や背景を捉え、問題解決のための手立てを考えていきます。そうした価値、知識、技術を併せ持つところに独自の専門性があり、子どもの権利を守る社会づくりの一端を担う仕事でもあると思います。微力ではありますが、私もスクールソーシャルワーク実践と研究活動をとおして、すべての子どもが安心安全な生活環境と十分な教育機会を享受し得る公正な社会づくりに、少しでも貢献できればと考えています。 

※所属や内容は掲載日時点のものです。また内容は執筆者個人の考えによるものであり、本学の公式見解を示すものではありません。