2020.04.03.
2020年度 人間福祉学部学科別新入生オリエンテーションを実施いたしました

2020年4月2日(木)に社会福祉学科および社会起業学科、4月3日(金)に人間科学科の新入生オリエンテーションを実施いたしました。

武田丈学部長から新入生のみなさんへのメッセージを掲載いたします。

2020年度の人間福祉学部学科別オリエンテーションにおける新入生への祝辞

新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。

新型コロナウイルスの影響で、大学全体の入学式、そして学部の教員が全員出席しての3学科合同の宣誓式を開催できないのは残念ですが、人間福祉学部の全教職員が皆さんの人間福祉学部への入学を祝い、これから4年間の学びにエールを送る気持ちは、例年通り、いやこうした状況なので例年以上に強く持っています。本当に、おめでとうございます。

皆さんが入学した、この人間福祉学部。皆さんはどのような学部だと思って入学してきたのでしょうか。しっかりと自分の入学した学部や学科のことを理解した上で入学してきた人もいれば、あまりわからずに入学してきた人もいるかもしれません。

人間福祉学部は、人間の福祉、つまり幸せ、ウェルビーイングを高めることに貢献できる人を育成することを目指している学部です。ウェルビーイングとは、直訳すれば良好な状態ですが、単に身体的な健康だけでなく、心理的にも、スピリチュアルにも、社会的にも満足感や達成感が感じられる状態です。

では、人間の福祉といった場合、誰の幸せあるいはウェルビーイングを高めるのでしょうか?自分のウェルビーイング?それも大切ですが、他のひとのことは置いておいて、自分だけが幸せになれば、自分だけが成功すればいいのでしょうか?

ここで少し話を変えましょう。今この教室にいる人たち、これから4年間一緒に学ぶ仲間を見渡してください。

背の高い人や高くない人、髪の毛が長い人、短い人、黒い人、茶色の人、色々います。一見しただけではわからないかもしれませんが、ここには地元兵庫県出身のひと、大阪、京都出身のひともいれば、中国地方出身のひと、関東出身のひと、北海道や沖縄出身のひと、さらには中国や韓国など海外出身のひともいるでしょう。この中にいなくても関学の入学者の中にはきっといるでしょう。なかには聴覚や視覚など身体的な障害のある人もいるかもしれません。男性、女性、あるいはどちらの性にも当てはまらないと考える人もいるかもしれません。異性愛の人もいれは同性愛の人もいるでしょう。

このように日本社会の中はもちろん、関学のキャンパスの中には多様性(ダイバーシティ)が存在します。関西学院は、このキャンパスに集うすべての者が、キャンパス内の性別、年齢はもとより、国籍、人種、民族、出身地、主たる言語、宗教・信仰、身体的・精神的特徴、セクシュアリティといった違い(ダイバーシティ)を尊び、それぞれの能力を発揮できる環境づくりに向けて努力していくという通称「インクルーシブ・コミュニティ宣言」を2014年に発表しています。

どうして、こうした宣言が必要なのでしょうか。それは残念ながら、特定の特徴を持つ人たち、たとえば障害のある人たち、外国籍の人たち、LGBTQの人たち、が差別を受けたり、偏見を持たれたり、生きづらい社会だからです。

なので、人間福祉学部が、人間の幸せやウェルビーイングを高めるという場合には、「他の人のことは置いておいて、自分だけが幸せになれば、自分だけが成功すればいい」ということではなく、すべての人、多様性のある社会のすべての人の幸せやウェルビーイングを高めることに貢献できる人を養成することを目指しているのです。

そういう学部で皆さんはこれから4年間、学んでいくのです。

では、どうすれば多様性のある社会のすべての人の幸せやウェルビーイングを高めることに貢献できる人になれるのでしょうか。

人間福祉学部の教育理念は3つのCです。4年間の学びでこの3つのCを身につけてもらうことで、社会のすべての人の幸せやウェルビーイングを高めることに貢献できる人を育成していくというのが人間福祉学部です。

3つのCが何か言える人はいますか?

1つ目はComprehensiveness、「包括的な」という意味の単語ですが、幅広い視野です。高校の時と違って、大学では学生も教員も多様ですし、外部の講師やインターンシップやフィールドワーク先で多様な背景を持った方たちと交流する機会もありますし、授業の中身や形態も非常に多様なので、是非多様で包括的な視野や価値観を身につけてください。

2つ目はCompetence、「能力」という意味の単語ですが、社会のすべての人の幸せやウェルビーイングを高めることに貢献できる人になるためには、単に知識を詰め込むだけでは不十分です。この人間福祉学部では他の学部と比べると演習や実習、フィールドワークやインターンシップといった実践教育の科目がすごくたくさんあります。こうした実践教育科目を履修して、単に知識をつけるだけでなく、社会的な課題を解決するための卓越した問題解決能力(Competence)を身に着けてください。

最後のCはCompassion、「思いやり」や「共感」という意味の単語です。これは、単に社会の中で生きづらさを抱えている人たちを、上から目線で「かわいそうだ」「なんとかしてあげたい」と思うような同情や共感以上のものです。生きづらさを生み出している社会を、自分には関係ない、自分のせいではないといって無視するのではなく、そうした社会を変える必要がある、そのために自ら行動しようという意識をもつこと、これが本当のCompassionだと、僕は思います。

是非、こらからの4年間の人間福祉学部の学びの中で、このComprehensiveness, Competence, Compassionという3つのCを身につけてもらえればと思います。

人間福祉学部では、今年度の入学生より、この3つのCをより身につけてもらえるように、新しいカリキュラムが導入されました。ぜひ魅力的な授業を積極的に履修して、4年間で3つのCを身につけ、多様性のある社会のすべての人の幸せやウェルビーイングを高めることに貢献できる人になってくれることを期待しています。これからの4年間をどうか、自分の成長のために、卒業後に社会に貢献できるような人になれるように、有意義に過ごしてください。

最後に改めて、ご入学おめでとうございます。

2020年4月2日

人間福祉学部長 武田丈