懸賞論文

[ 編集者:経済学部・経済学研究科       2019年4月13日   更新  ]

 栗田ゼミ生が執筆した論文が、経済学部が募集している懸賞論文を受賞しました。
 懸賞論文は、毎年研究演習Ⅰ・Ⅱの履修者を対象として募集している論文の賞のことで30年以上続く、歴史ある賞です。今回(2018年度)は総計15本と例年よりもたくさんの論文が集まりました。入賞は個人執筆部門と共同執筆部門から1本ずつ。そして、佳作が2本の計4本の論文が選出されました。
 そして、今回、栗田ゼミ生が執筆した論文3本(入賞1本、佳作2本)が選考の結果選ばれましたので、ご報告させていただきます。

 経済学部が発行する「エコノフォーラム21」も記事があるので、そちらも合わせてご覧ください。
*「エコノフォーラム21」関西学院大学経済学部に所属する”学生”と”教員”それぞれの編集ページで構成されるがコミュニケーション誌。
https://www.kwansei.ac.jp/s_economics/s_economics_004090.html

 入賞した論文は、6期生の「セネガルでフィールド調査」の結果をもとに執筆した論文のうちの1本で「セネガル漁村における漁業保険の需要 -保険理解度が与える加入意思への影響-」<1>です。
 佳作に選ばれた2本は、5期生 酒井菜緒の卒業論文である「ケニアのHSNP現金給付プログラムにおける子どもの教育のインパクト評価 -女性の現金使用方法決定権に着目して-」<2>。そして、入賞論文と同じく、6期生の「セネガルでフィールド調査」の結果をもとに執筆した「セネガル農村における夫婦間の共同行動が女性の自立性、家庭内交渉能力に与える影響」<3>です。
 以下に各論文の簡単な説明を記載しています。
<1>
 竹島班論文では、漁業従事者の問題にアプローチしました。零細漁民は収入が不安定なうえに、非常に危険な労働環境にあります。しかしセネガルでは、それらのリスクをカバーするような漁民を対象とした保険が販売されていません。また零細漁民の保険へのアクセスが悪いという現状もあり、保険が販売されたとしても利用できる人が少ないことが想定されます。そこで漁業保険の需要を調査すると同時に、保険へのアクセスを改善する政策を検討しました。政策としては、保険に関する理解の低さが保険へのアクセスの障壁になっていると推測し、保険に関するレクチャーを個別に実施することを考えました。
 現地で実際に、擬似的に作成した保険(損害保険、天候インデックス保険)を用いて需要の調査と政策の介入実験を行い、データをとりました。DID分析の結果より、個別レクチャーは保険の加入意思や支払意思額を促進する効果があることが分かりました。また漁業保険の需要も非常に高く、漁民が保険を求めていることが明らかになりました。
<2>
 酒井論文では、ケニアの貧困層向け現金給付プログラムについて、配分されたお金を誰が使うのかという点に分析のフォーカスをあてました。ただ単に世帯にお金を上げるだけではなく、誰にお金をあげるのか、誰が使えるのかによって、その援助効果が異なることがありうるからです。酒井論文は、開発経済学の中でもホットイシューである家庭内の意志決定の違いに着目しており、また極めて高度な推計手法(Propensity score matching+Difference in Differences)を用いて分析、結果の検証を行った素晴らしい論文になっています。分析結果では、⼥性が決定権を持っている⽅が世帯の⼦供の教育⽀出額が⾼いことが明らかになり、お金を配ることのみが重要なのではなく、誰に与えるのかが重要なのだということをしっかりと指摘しています。
<3>
 魚谷班論文では、グローバルイシューである、ジェンダー問題に対してアプローチしました。女性の存在は、子供の健康状態や就学状態に影響を与えることが明らかとなっており、中でも、家庭内での女性の発言力向上などが注目されています。そのような意味での女性の自立性、家庭内での交渉力の向上のアプローチは、家計や女性に金銭や物資を与える形では行われている一方、夫婦で”一緒に”物事の取り組んでもらうことで、女性の地位の改善を狙うアプローチはほとんど為されていませんでした。そういった点に新規性を見出し、そのような仕掛けを施した実験も行いその前後をDifference in Differenceを用いてインパクトを測定しました。分析結果からは、短期間の介入にも関わらず女性の交渉能力の改善が見られ、夫婦で共に取り組むことの重要性を指摘しています。

 経済学部が発行するエコノフォーラム 2019に記載されている、懸賞論文先行委員会委員長 桑原秀史先生から頂いたコメントを以下に記載しています。

■共同執筆部門入賞
 荒井友里・岩谷桃佳・小出将宏・竹島梨紗・中島宇将
  「セネガル漁村における漁業保険の需要―保険理解度が与える加入意思への影響―」
<コメント>
 ミレニアム開発目標に準じて、セネガルの零細漁民の収入や生活の安定を目的とし、天候インデックス保険・損害保険の2つの漁業保険を擬似作成し介入実験を行ったものである。現地調査によって得たデータをもとに、保険の個別レクチャーによって保険理解度をあげる有効性を検証し、提言している。本研究は、アンケート設計から実施、分析に至るまで意欲的な研究である。分析手法の適切さ、興味深い推定結果等が高く評価された。(エコノフォーラムより引用)

■佳作
 酒井菜緒
  「ケニアのHSNP現金給付プログラムにおける子どもの教育のインパクト評価―女性の現金使用方法決定権に着目して―」
<コメント>
 ジェンダー平等の実現を意図して、現金使用決定権を女性が要する場合等の教育支出に及ぼす影響等を検証している。(エコノフォーラムより引用)

■佳作
 阿部優志・岩崎桃子・魚谷航平・寺川楓・平山励
  「セネガル農村における夫婦間の共同行動が女性の自立性、家庭内交渉能力に与える影響」
<コメント>
 セネガル農村における夫女性の自立性、交渉力の決定要因を、独自の調表を用いて、差分法と主成分分析等の手法で検証したものである。(エコノフォーラムより引用)

 これらの頂いた賞を見ると、セネガルやケニアと途上国に関係した論文を書いている印象があるかもしれません。セネガルの2本の論文は、実際に栗田ゼミ6期生が2018年の8月にセネガルを1ヶ月間訪れて調査した結果を元に執筆しました。そして、ケニアの論文に関しても、同5期生の酒井が過去に訪れ調査したマダガスカルの経験が元になっています。つまり、執筆した論文は栗田ゼミ生一人ひとりが実際に経験した異国の地で感じたこと。出会った人達への想い。が秘められていて、それが論文として表現されているのです。過去の調査については、以下のリンク先に写真と共に掲載しています。ご参考ください。
<5期生 マダガスカルでのフィールド調査>
https://www.kwansei.ac.jp/s_economics/s_economics_m_003953.html
<6期生 セネガルでのフィールド調査>
https://www.kwansei.ac.jp/s_economics/s_economics_m_004959.html

 また、栗田ゼミの活動は実は“途上国のみ”を対象としているわけではありません。10のチームが日本の地域と密着して、「地域ならでは」の問題解決に取り組んでいます。以下のリンク先に各班の活動紹介とwebサイトが公開されています。是非ともご覧ください。
http://kurikuri-research.net/smilocal.html

 最後になりますが、以下に上記した3本の論文のpdfを添付しています。一読いただければと思います。論文としての面白さはもちろん、学術的な視点から見る「世界」を楽しんでいただければ幸いです。

(竹島班の集合写真)
 

(竹島班の集合写真)

(魚谷班の集合写真)

(魚谷班の集合写真)

*参考文献
「懸賞論文の選考について」,『エコノフォーラム21』2019, 25, p.91, 関西学院大学経済学部