担当教員からのメッセージ

[ 編集者:経済学部・経済学研究科       2015年1月15日   更新  ]

「想いを意志へ」

栗田匡相准教授より

当ゼミの3年生は、2014年の9月初めから2週間~1ヶ月程度、バンコク、ジャカルタ、バリ、メダン、ラオスなどでインターンシップ・スタディツアーに参加しました。職場は、現地日系企業だったり、地場企業だったり、NGO、大学、専門学校という具合に多種多様です。具体的な業務や体験については、学生達が書いたそれぞれの手記を是非とも読んでいただきたいのですが、このインターンシップの直前には、マダガスカルの農村で3週間にもわたる過酷な調査があり、日本に戻らずにそれぞれがインターン先へと旅立ちました。体調に不安を抱えるものも少なからずいたと思います。また、異国の地で、不慣れな英語で仕事をしなければならないというプレッシャーは相当なものだったとも思います(ちなみに2014年7月末時点で当該学生達のTOEICスコア平均点は700点弱でした。一年間で平均200点ぐらい上がったことになります)。

 でも皆、無事に帰国してくれました。嬉しかったのは、自分が成長したどうこうの前に、このインターンシップでお世話になった方々への感謝や尊敬の想いがまず口に出たということ。マダガスカルにいたときよりも過酷な調査スケジュールを課されたり(あ、課したのは僕でしたっけ・・・)、英語で電話などをかけたことがないのに一日中英語での電話応対の仕事をしたり、経験も地位も何もかも学生とは比較にならないような人たちと毎日お会いして自分の小ささを感じたり、でもそんなすごい方が気さくに学生と接してくれることに感動を覚えたり、初めて自分の生徒を持って責任という言葉の重みを初めて実感したり、異国で腰を据えて働くということのリアリティに触れたときに自分の浅はかさに気づいたり、製造現場に立つことで自分たちの暮らしと世界がどのようにつながっているのか感覚的に理解することで目眩いを覚えたり、女性が凜として働くというロールモデルを見つけることが出来たり(だからこそ自分の未熟さに愕然としたり)、等々、結構大変な思いをして乗り切ったのだと思います。だからこそ、自分がすげー経験をしたぜ、と普通はいいふらしたくなるはずだと思うのですが、どちらかというと控えめに自分たちのしてきたこと、つらかったことよりも、周りへの感謝と尊敬を口にする学生達に、何か希望を感じました。なるほど見えない未来っていうのはこうやって確かに見えるものなんだな、と。

 僕が学生を連れて、マダガスカルで調査をしたり、アジア各国でインターンをやっているのは、別に今はやりのグローバルなんちゃらとか呼ばれるものを増やしたくてやっているわけではありません。マダガスカルでおなかを壊したり、バリ島で英語の対応に焦ってた学生が、いつか日本のどこかで一見すると全然関係のない花屋さんやパン屋さんを開いたりしたら、それはとても素敵だなと思うのです。日本がもっとおもしろい国になるだろうな、と思います。もちろん、マダガスカルに行ったから貧しいアフリカをどうにかしたい、とか、世界にはまだまだ自分の知らないことがあるから飛び込んでいきたい、というのは、本当に自然な感情で、それもとても素直で尊いことだなと思います。僕はこうやって希望が意志に変わっていく様をこれまで見てきたのだと思いますし、これからも見ていきたいなと思います。
 
 あまりにも多くの方に直接的にも間接的にもお世話になってしまったので、それぞれの方のお名前を挙げることは控えさせていただきますが(多分書き出したら100名を超えてしまうのではないでしょうか・・・)、このインターンシップの話を思いついた初期からずっとおつきあいいただいたAsian Biz Consultants Indonesiaの大谷社長、Panasonic A.P. Sales (Thailand) Co., Ltd.の森さん、アピ・マガジンの村上社長、のお三方には特に感謝を申し上げたいと思います。皆さんと僕がたまたま知り合ったことで、学生たちは計り知れない恩恵を被ったのだと思います。本当に心の底から三人の懐の深さに感謝しています。

 責任もなく、肩書きもなく、親の庇護の元にただ宙ぶらりんになっているのが学生だというのであれば、そんな学生が、自分が自分であることを感じられるためには、素敵な大人との出会いが欠かせないと思います。想いを意志につないでいくために。本当にこれまで出会ったたくさんの皆様に、ゼミ生一同、最大限の感謝と愛を送りたいと思います。

栗田先生写真

栗田 匡相 KURITA,Kyosuke別ウィンドウで表示