2023.10.30.
松林志保ゼミが滋賀県東近江市にてフィールドワークを実施しました。

10月27日、松林志保ゼミが滋賀県東近江市にてフィールドワークを実施しました。松林ゼミでは、自然と人間が共生する社会の実現について学んでいます。

今回のフィールドワークでは、滋賀県東近江市が取り組む住民主導型のエコツアーを体験しました。東近江市は鈴鹿山脈から琵琶湖までのすべての地域が愛知川でつながるという特色を持っています。市は、森里川湖の豊かな自然の中で人々が織りなす暮らしと文化を原風景とみなし、この原風景を未来につなぐ活動を推進しています。

まずは琵琶湖東岸に位置する伊庭にて、1000年以上続く伊庭の水郷集落を見学しました。

大濱神社で奇祭「伊庭の坂下し」の説明を受ける

水郷集落を走る水路と田船

湖辺の郷伊庭景観保存会ガイドの沖様から集落の歴史や空き家課題について、東近江市水と森政策課の青西様と山﨑様から市認定エコツアーの認証制度や次世代の担い手育成についてご講義をいただきました。

お昼には、鯉の甘露煮、鮒の子まぶし、ワカサギの天ぷら、蜆汁などの現地の食材を活かした郷土料理をいただきました。

続いて、愛知川漁業共同組合村山様にビワマスの産卵観察現場をご案内いただきました。ビワマスは琵琶湖に生息するサケ科の淡水魚で、サケと同様に産卵のため生まれた川を遡上します。国内の他の河川と同様に、琵琶湖にそそぐ多くの河川も治水工事により分断され、今ではビワマスの上流部への遡上は限定的になっているそうです。現地では渓流沿いを歩きながら、はるばる琵琶湖から遡上してきたビワマスを探しました。


 

ビワマスと産卵床を探す

魚影を追い上流へ

愛知川漁業協同組合では、持続的な水産資源活用への試みとして、堰堤上流部での産卵場所の確保のために魚道を設置していらっしゃいます。堰堤では、勢い余って魚道から飛び出すビワマスの落下防止用ネットを張る作業を手伝いました。

堰堤に設置された魚道を背に

フィールドワークを通して、住民主体で地域の魅力を発信する行政の取り組みを学びました。

以下は参加者の声です。

「あるものをどう魅せるかがエコツーリズム」という言葉が印象に残っています。東近江では地域資源を保全し後世に残すための手段として、地域の方が地域の魅力を伝えています。何かを新たにつくって観光地化するのではなく、魅せ方を工夫することで環境を守りながら原風景を活かすことができること、そして魅せる・伝えるという活動が、地域の誇りや自信に還元されることが東近江型エコツーリズムの醍醐味だと感じました。これまで私は、環境と人(経済活動)は相反するもので、バランスを取ることが難しいものとして天秤にかけていましたが、環境ありきの人という考え方に触れて、環境を保全する意味深さに気が付きました。【大足心愛さん】

「地域の魅力を伝える人がいて初めて観光になる」という言葉に強く共感しました。東近江市には環境基本計画があり、環境をベースとしてそこから人が住み、文化が生まれます。市民の方々が、「森里川湖の原風景を未来につなぐ」というエコツーリズムの理念を理解しているからこそ、東近江型エコツーリズムが成立することを学びました。【宮澤隆太郎さん】

特に面白いなと感じたことは里山保育です。五感が発達する時期や人間関係を学ぶ時期に合わせて自然と触れ合う時間を設けることで、自然についてだけではなく、関わる人との繋がりも一緒に学べるというお話しが興味深かったです。また東近江市のエコツーリズム事業では「原風景の活用、保全・再生、次世代への継承」のサイクルが持続的に行われているところがすごいなと感じました。行政機関や専門家だけではなく市民の皆様にも当事者意識があるからこそ市全体で取り組めるのだと思いました。【尾崎姫菜乃さん】

住民が地域の魅力を再発見、再確認することが、私たちが直面する過疎化や高齢化といった社会課題の解決につながる可能性に気がつきました。伊庭の水郷集落では昔から景観を維持する活動があったからこそ現在の地域資源化につながっていることを目の当たりにし、住民主体でアクションをおこす重要性を知りました。【杉光怜さん】

崖のような高低差の堰堤に設置された魚道を見て魚の通り道としての大きな役割を実感しました。ほんのささいな作業でしたがビワマス落下防止のネットの固定に協力することができとてもうれしく思っています。水と共に生きる伊庭の方々と同様に、漁業組合の皆様も川の自然と共に生きているのだなと感じました。自身も何らかの形で自然と関わる仕事に就きたいと改めて思いました。【中尾元紀さん】

堰堤に魚道を設置することで20か所程の新規産卵場所を確保したというお話に漁業組合の方々のビワマスへの愛を感じました。今後ぜひ魚道の設置や撤去に参加させていただきたいです。数千個の卵を産んでも育つのは数匹ということをお聞きして、改めて命を繋ぐことの難しさを知ることができました。ビワマスが産卵のためにボロボロになりながらも上流へ向かう姿は鮮明に記憶に残りました。命の大切さを肌で感じるとともに、私たち人間が生態系に与える影響を考慮する必要性を痛感しました。【市川誠博さん】

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