[ 国際学部 ]連続講演会 講演録(2018年度)

第79回 ビザ・ワールドワイド・ジャパン代表取締役社長 安渕 聖司 氏講演

2018年7月11日

安渕 聖司 氏

安渕 聖司 氏

第79回国際学部連続講演会は、ビザ・ワールドワイド・ジャパン代表取締役社長、安渕聖司氏を講師としてお迎えして、2018年7月11日(水)に、関西学院会館にて開催されました。「グローバル人材とは?~グローバル企業で働いて分かったこと~」 と題して行われた講演会には、約280人の学生が参加しました。講演後の質疑応答では終演時間間際まで多くの質問があがり、学生のグローバル企業への関心の高さがうかがえました。(司会:渥美 裕之教授)
まず、安渕氏はVisaとは、世界200以上の国と地域において、Visaカードによる支払いを可能にする決済ネットワークを中心とした会社であると説明されました。2016年6月末時点で、Visaカードは世界で32億枚発行されており、4,600万件の加盟店において利用可能であり、毎秒最高65,000件の取引が可能であり、年間で決済される金額は10.2兆米ドルにも至るという、Visaの需要の高さも述べられました。ご自身の会社では、「世界を、最も革新的で、信頼性が高く、安全なデジタル・ペイメントネットワークでつなぎ、それにより、個人・ビジネス・経済の反映を可能にすること」 をミッションとして掲げており、Visaが 「誰からも選ばれるどこでも使える決済方法であること」 を目標とされているそうです。

次に、安渕氏は、ご自身の数多くのグローバル企業で活躍されてきたご経験に基づいて、グローバル企業では 「人」 を中心とした経営が行われていると言及されました。例えば、人種や国籍や年齢や性別など関係なく優秀な人材を採用して、職務内容を個人に合わせて柔軟に変更したり、その多様性や異なるアイデアを受容したりしながら、より難しい仕事に積極的にチャレンジすることで、新たなイノベーションが生み出されるそうです。また、リーダーシップは社員全員が持つべき資質であると指摘されました。リーダーシップとは、個人の地位や職位の高さではなく、影響力の強さのことを示し、社員は 「高い倫理観を自ら示し、実践すること」、「自分の強みや弱みを知ること」、「知的好奇心を持ち学び続けること」、「自分の頭で考えて、意思決定を行うこと」、「変化を恐れず、変化をドライブすること」、「言行一致であること」、「しっかり計ってリスクを取ること」、「異なったタイプの人間を集めて強いチームを作り、お互いの成長を助けること」、「勝つことにこだわり、正しい方法で結果を出すこと」、「感謝の心を忘れずに、Giveする人であり続けること」 といったリーダーとしての基本を行う必要があると述べられました。そして、このような次世代のリーダーを育成することがCEOの役目だとも語られました。

最後に、グローバルな舞台で成功するために、自身に問いかけるべき3つの問い 「Who are you?」、「What do you think?」、「How do you come up with ideas?」 を紹介して下さりました。1つ目では、自分の生き方や信念や日本人としてのアイデンティティは何なのか、自分はどのような人間であるのかを見つめ直す必要があると指摘されました。2つ目では、社会のほとんどの問題には唯一の正解はないので、メディアを始めや人の意見を鵜呑みにしないように、自分で考えてから、日本語と英語で意見を発信することが大切であると述べられました。3つ目では、新しいアイデアや考え方を育むために、多様な意見を積極的に取り入れる重要性を説明されました。これらを踏まえて、安渕氏は未来の 「リーダー」 である学生に、自分の好きなことや得意なことを見つけ、自分に合った仕事について考えるよう、社会に出てからも勉学に励み続けながら自分を磨くことようにと助言され、エールを送られました。

第78回 女優 国連開発計画(UNDP)親善大使 紺野 美佐子 氏講演

2018年7月10日

紺野 美佐子 氏

紺野 美佐子 氏

第78回国際学部連続講演会は、国連開発計画(UNDP)の大使を1998年から務めておられる女優の紺野美佐子さんをお招きし、「UNDPの役割と親善大使として見たこと感じたこと」と題して総合政策学部の村田俊一教授との対談形式でお話し頂きました。(司会:国際学部 平林孝裕教授)

女優として40年近くの間活躍されている紺野さんは、まずその仕事の醍醐味として、役柄を通じていろいろな人生を疑似体験できることを挙げられました。視聴者に喜ばれ、何らかの力になれたということが自分の励みになり、これまで続けてこられたこと、またそれはどんな仕事においても共通するものではないかと述べられました。
次にUNDPの役割について説明されました。170以上の国や地域で様々なプログラムを実施しており、「人々の生活を長期的な視点で向上させる」、「すべての国民が意思決定に参加できる国と平和な社会をつくる」、「気候変動に対応して災害への備えがある社会をつくる」を重点活動分野としています。親善大使は世界に12名おり、それぞれの分野で一般人を対象に開発課題への啓発活動を行うという役割を担っています。親善大使の依頼は、初めは年齢的に難しいと断ったが、若い人に国際協力の大切さを伝えていくとの趣旨に賛同し引き受けたそうです。
任命から20年、紺野さんが親善訪問した国はカンボジア、パレスチナやブータンなど、10カ国にのぼります。その経験について、たくさんの写真を紹介しながら語っていただきました。人身売買や地雷除去など、ニュースで見聞きしていた事柄に現地で実際に触れ、百聞は一見にしかずの思いであったこと、また若い頃の自分の無知を恥じ、大使の活動を通じて若い人たちに国際協力の裾野を広げていきたいとの思いを強くしたことを話されました。また、「途上国では貧困ゆえに初等教育すら受けられない子どもたちが5000万人以上いる。国際学部の皆さんには、素晴らしい環境で勉強できるからこそ、皆さんにしかできないことがあるはず。それを見つけて世界で活躍してほしい」とのメッセージを頂きました。ブータンを訪問した際には国民総幸福(GNH)の考え方にふれ、人にとっての幸福とは何かについて考えたことから、人と比べるのではなく、自分が自分の人生の時間を何に使いたいのか、学生で時間がたくさんあるうちに、自分で自分をよく知ることも大事なのではないかと述べられました。
それに関して、村田教授からも、今の学生はhow toものに目が行きがちだが、what(自分が本当に好きなものは何か)を見つけ、それを極めることの重要性について指摘がありました。冒頭で紺野さんが述べられたのと同様に、学問も様々な文献を通じてタイムマシンに乗るように時空を超えた体験ができるという見方を紹介され、その中から自分がいかに社会に貢献できるかというwhatを見つけてほしい、そうすればhowもおのずと決まると学生を鼓舞されていました。

第77回 外務省研修所長 齋木 尚子 氏講演

2018年6月13日

齋木 尚子 氏

齋木 尚子 氏

外務省 前国際法局長、現外務省研修所長、齋木 尚子 氏をお迎えし、第77回国際学部連続講演会を6月13日(水)GIS303教室にて開催しました。「外交と国際法」と題して行われた講演会には、約250人の学生でほぼ席が埋まり、外務省や、外交、国際法に関する学生の関心の高さがうかがわれる盛況ぶりでした。(司会:関西学院大学フェロー 鷲尾友春)

 斎木氏は、本題に入られる前にまず、外交、または外務省で働くことに関心のある学生に挙手を求められました。数名、しかしはっきりとした意思のある挙手をご確認されたうえで、自己紹介という形で雇用機会均等法前のご自身の就職や、外務省入省のきっかけなどをお話しいただきました。社会のために尽くす事の大切さを尊重していきたい。また、ドイツの天文学者、ウイリアム・ハーシェルの名言、“自分が生まれた時よりも、自分が死ぬときにはより良い社会しておきたい”を引用され、日々の社会貢献に勤しんでおられる旨をご紹介いただきました。

 まず、外交とは、という大きな演題から本題に入られた斎木氏が、「平和で安全な国際社会の維持に寄与」 「主体的かつ積極的な取組」 「良好な国際環境の整備」 「調和ある対外関係を維持・発展」 「国際社会における国及び国民の利益の増進」という5つの枠組み説明をされました。また、イギリスの政治学者、E.H.カーが提言した、外交の概念をさらに斎木氏の言葉で、“平和的手段で国益の理想を追求し、国際公益の可能性を追求する可能性の芸術”なのではないかと結ばれました。

次に演題にある国際法については、近代国際法と、現代国際法の特徴と相違、その変化や多様性から国際法は「生き物」と興味深い切り込みをされました。近年、主権国家体制(領域性)の揺らぎや「国内管轄権内にある事項」の範囲の縮小、国際社会全体の利益という概念や、集団安全保障体制の誕生や国際社会における主体の多様化などにふれられ、法の欠缺(けんけつ)を埋めるべく、秩序維持(法的安定性の要請)と現実への対応、すなわち法を守り,同時に新しく作ることの重要性を説かれました。外交実務における国際法の意義としては、国際法は、外交政策企画立案実施の基盤であり、相手国との関係における「正統性」の確保及び 国内における「説得力」としての役割をも担う外交の「力」の源泉の一つと明記されました。

 条約その他の国際約束の締結などを具体例とともにご説明いただいたのち、最後に、国際裁判所、国際司法裁判所(ICJ)、国際海洋法裁判所(ITLOS)、国際刑事裁判所(ICC)の3組織の任務・構成と日本の財政貢献、またそれぞれの機関で活躍している日本人の人的貢献について、これからの国際学部生の活躍の場としての提案もいただきました。

講演を終えられ、限られた時間の中、質問の挙手がやまない状況に、冒頭での斎木氏の“外交とは、駅伝のように先輩から後輩へタスキをつなぐがごとくに、社会貢献をすることではないか。”との言葉から、タスキを受けとろうとする国際学部生をはじめとする学生達の意気が強く感じられる90分となりました。