国際学部ASEANプロジェクト報告 2013年度
[ 編集者:国際学部・国際学研究科 2019年8月2日 更新 ]
国際学部では東南アジア諸国連合(以下、ASEAN)に焦点をあて、様々な角度からその実情を学び、“アジアの分かる”グローバル人材の育成を目指す「ASEANプロジェクト」を2013年度より立ち上げました。
今回は本学との包括交流協定校のうち、 マラヤ大学(クアラルンプール/マレーシア)、パジャジャラン大学(バンドン/インドネシア)、アサンプション大学(バンコク/タイ)、ベトナム商業大学(ハノイ/ベトナム)の4大学から講師をお招きした「夏季集中セミナー(英語)(8月実施)」と、マレーシア、インドネシア、タイへの「3か国・3大学への実地訪問調査(9月実施)」を計画し、各国の研究者、学生、様々な分野で活躍する現地の人々と交流し、ASEANへの理解を深める絶好の機会となりました。
以下は、その実施概要と参加者の報告の一部です。
夏季集中セミナー(英語) 関西学院大学上ケ原キャンパス 参加者16名
1日目 2013年8月26日(月)
K S Balakrishnan 教授(University of Malaya)

ASEAN Regionalism: Political, Security, Economic and Socio-Cultural Challenges Towards Regional Integration
▶ASEANは2015年までに「安全保障」、「経済」、「社会・文化」の共同体構築を目指している。
▶宗教が異なるなど多種多様な国々が、完全な統一ではなく各国の強みを生かしつつ互いに協力するための連合。
▶こうした動きによって、アジア全体のプレゼンスも高まり、日本に追い風になる。
Alias 教授(University of Malaya)

Japanese Yen to Malaysia, 1969-2010
▶日本のODAは、初期の砂糖製造から交通網整備などの様々な分野でマレーシアの発展に大きく貢献。
▶マレーシアから全世界(イスラエルを除く)に留学生が派遣され、学ぶようになっているが、「ルック・イースト政策」により、日本への留学が積極的に進められてきている。
▶ASEAN各国には宗教対立があるが、マレーシアは政治が安定し、親日の安全な国として、日本からの企業進出を促進してきた。
▶今日では「ハラル認証制度」などが寄与し、日本企業の中東への貿易窓口として大きな役割を果たしている。
2日目 2013年8月27日(火)
Yanyan Mochamad Yani 教授(Padjadjaran University)

Indonesian Perspective on ASEAN Now
▶ASEANは、中国、インド、韓国、日本とそれぞれに自由貿易協定を結び、域外のアジア各国との繋がりを強化している。
▶今後は、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)、そしてより広範囲な経済圏を構築していく。
▶BRICsではなくインドネシアを含むBRIICSに注目していくべき。
▶インドネシアは世界4位の人口。国策として、「より広く世界との繋がりを持つこと」、「インドネシアの国際的なアイデンティティーを表明していくこと」を重視している。
Budiono 教授(Padjadjaran University)

+3 Free Trade Area, Opportunities and Challenges from Economic Perspectives
▶ASEAN、そして+3カ国(日・中・韓)、もしくは+6カ国(日・中・韓+インド、オーストラリア、ニュージーランド)が”One Single Market”になろうとしている。
▶”One Single Market”とは、経済面において自由化された市場≒“貿易関税ゼロ”、“労働者が規制に左右されることなく移動できる環境”のことである。
▶ASEANは自由貿易協定を基盤に“Customs Union(関税同盟)”として繋がることが次のステップで、これは2015年に達成し、その後は“Common Market(共同市場)”、EUのような“Economic Union(経済同盟)”、ひいては“Political Union(政治統合)”になることが目標となるかもしれない。
3日目 2013年8月28日(水)
Ms. Thitiya PANMANEE(在大阪タイ王国総領事館領事)

"Sawatdee Thailand"
▶タイは砂糖輸出国として世界第2位、米輸出国として世界第3位などの貿易立国である。
▶自動車生産では世界第15位でASEAN内では最も生産量が多い。
▶日本はタイへの最大の投資国である。企業進出も著しく、最近ではMUFG、Lawson、Meijiなども進出している。
▶観光業も栄えており、日本からの観光客数は年々増加傾向にある。
Mr. Glen Chatelier(Assumption University国際部長)

Thailand's perspective on ASEAN covering ASEAN development till 2012
▶ASEANはバンコクで設立され、共同体2015年の目標ができるまでに果たしたタイの役割は大きく、共同体達成を2020年から2015年へ目標を早めた。
▶“AEC”は“ASEAN Economic Community(ASEAN経済共同体)”だけではなく、“ASEAN Energetic Community”~ 強い政治、強い経済、強い社会・文化の形成にむかうことが必要。
▶最大のKeyは経済。経済が動かなければ前に歩んでいくことができない。
Dr. Pham Thuy Hong(Vietnam University of Commerce)

Japanese ODA and Vietnamese economic development
▶ベトナムのGDPに占める農林水産業の割合は22%以上で、特に農業が盛んである。
▶最近は経済成長が著しく、国際社会の中で競争力を高めようとしている。
▶ベトナムの成長に障害となっているのは“資本の不足”、“技術の遅れ”、“経営ノウハウの不足”。
▶人的資源の育成、金融制度やインフラ整備が課題。
▶日本はベトナムの経済発展に繋がる多くの政府開発援助(ODA)を実施し、橋や高速道路整備、貧困農民支援や病院医療機材整備などに大きく貢献している。
4日目 2013年8月29日(木)
Students' Presentation & Reception
最終日には、参加学生が2グループに分かれて下記テーマについて英語によるプレゼンテーションを行いました。
A班:「現在の日本の若者(日本の若者は内向き志向ではない)」
B班:「現在の日本の社会(就職活動、仕事について)」

「アジアにぐっと近づいた4日間」 ~参加者コメント集
▶マレーシア・インドネシア・タイ・ベトナム各国の先生から、それぞれ違った視点でASEANやアジア経済について学べた。
▶双方向の講義が最高でした。質問タイム(45分)に自由に質問でき、感想を出し合ったり、丁寧かつグローバルな視点を加えて先生方が答えてくれ、授業を受けているというよりも、知識や意見交換をしているという能動的な感覚を強く受けました。
▶学生からの「日本の食品に対して放射性物質への懸念はないか?」という質問に、Budiono先生から「日本のことを信じているので、政府が(検査後の食品が)安全だと言うならそれを信じる。」という回答をいただき、日本はアジア諸国から信頼されていることを認識しました。
▶Thitiya領事の講義で、これからの日本とタイの友好的な関係性に興味と期待の念を抱きました。
▶先生方へのプレゼンテーションを短時間で作成するのが大変でしたが、1年生から4年生までが協力して無事に発表することができました。先生方からも質問が活発に飛び交い、新たな視点から自分たちの社会を見る機会にもなり、興味・関心が高まりました。
▶講義は英語なので楽ではなかったが、達成感があり、予想以上にアジアについての理解を深めることができ、授業毎にアジアについて興味が高まっていくように感じました。
▶アジアの中の、日本の中の自分という自覚が高まりました。
▶急速に成長を遂げているASEAN諸国について学ぶことは非常に大切なことです。ASEANについて知識がない人でも事前にASEANについての講義をしてもらえるので安心して参加できます。本当に得られるものは大きいのでぜひ参加してみて下さい!
▶それぞれの国に政治・経済・社会などの問題があるが、ASEANは2020年までに先進国入りをめざす経済社会開発構想「ビジョン2020」を掲げている。2020年には日本では東京オリンピックが開催されることもあり、7年後のアジアがどれほど力強く成長を遂げているのか個人的に楽しみです。
▶講義全体を通してASEANの内情を分かりやすく丁寧に教わり、ASEANが2020年までに成し遂げようとしていることを学ぶことが出来ました。多文化、多宗教、多言語のASEANの国々が経済、安全保障、社会・文化の面で共同体として一つになることの難しさや課題もディスカッションをしていく中で見えてきました。そのようなダイバーシティな東南アジアにおいて、ASEANのロゴである米俵が象徴するような結束力を強めていくことは経済的・政治的に発展していく為には重要なことだと感じます。ASEANが今後、日本・中国・韓国を加えたASEAN+3やさらにインド・オーストラリア・ニュージーランドを加えたASEAN+6のようなより多くの国々を巻き込んだ平和的な枠組みになっていくことへの期待感も一層膨らみました。今後私もあらゆる形で、アジアの発展に貢献していきたいと心から思える講義でした。
「マレーシア・インドネシア・タイ 3か国・3大学への実地訪問調査」
1か国目 マレーシア 2013年9月8日(日)~2013年9月11日(水)
University of Malaya(UM)訪問・交流
▶関西学院大学(以下、KGU)から9名、UMからは10名以上の学生が参加。UMの参加学生の多くはマレー系の学生でした。
▶金沢大学に留学していた女子学生が代表でマレーシアの紹介。その後、KGUから2班による日本事情に関するプレゼンテーションを行い、「KGUでの発表よりもVery Good」とBalakrishnan先生(夏季集中セミナー招聘講師)から合格点をいただきました。
▶先生のご招待で教員用カフェテリアにて昼食をいただた後、UM学生2名の案内で王宮や国立モスクを見学しました。
▶9人のスルタンが互選で5年毎に国家元首となり、国教をイスラム教と定めながら、多民族国家の優等生とされるマレーシアの発展とその悩みも垣間見る機会となりました。

現地日系企業訪問 OHTA PRECISION (M) SDN. BHD.(大田精工株式会社 本社・東京)
▶駐在18年。進出日系企業の中心的な存在の须永毅社長から、工場見学とレクチャーを受ける機会をいただきました。日本企業のアジア進出を支えてきた中小企業の置かれた様々な課題、とりわけ地元への貢献(雇用確保)要請と、主要取引企業からのタイ・ラオスでの部品供給要請=あらたな投資(進出)要請への対応など、変化への即応が求められる厳しい経営環境などを実地に学ぶ貴重な訪問となりました。

JETROクアラルンプール事務所 田中恒雄 Senior Advisor

次にJETROクアラルンプール事務所を訪問し、田中恒雄Senior Advisorからお話を伺いました。
▶近年、退職した人が第2の人生をマレーシアで過ごす「マレーシア・マイ・セカンドホーム・プログラム」が人気です。東日本大震災後、利用者数が増えています。マレーシアには地震がない、台風が来ないなど日本に比べ天災のリスクが低く、政治も安定している魅力があります。
▶第二次大戦中に日本軍が占領していた時もありましたが、「日本に親近感を覚える」という人は80~85%。「海外へ行くなら日本」という人が40%以上との調査結果があります。
▶1981年から2003年までマハティール首相が、経済発展のモデルとして「東アジア(特に日本)から学ぼう」という『東方政策(Look East Policy)』を掲げ、日本の技術・経済システム・労働倫理などを学ぶため、日本へ留学生を派遣するようになりました。また、英国からの独立後、マイナス成長を経験したことから、『輸出指導型製造業』を育成し、1985年から外資規制緩和を行いました。
▶このような背景から1980年代半ばから10年間に約1500社の日本企業が進出し、現在はピーク時からは減っているが、横ばいで推移しています。その6割弱が製造業で占めており、残りは商社、金融、貿易、その他のサービス業です。
▶2010年以降はサービス業の自由化が進展し、製造業よりサービス業が盛んになっています。ユニクロ、無印良品、オートバックス、ダイソーなどの小売関連企業が続けて進出し、最近では日本食ブームもあり、特にラーメン屋が多く進出しています。山頭火、一風堂、麺屋武蔵などのラーメン屋がマレーシアでも人気になっています。
▶日系企業の悩みは「労働力確保」と「労働者の定着」。マレーシアは人口約2800万人で、そのうち労働人口が約1200万人。外資系企業が労働力を取り合う状況になっています。
▶工事現場など「3K」職場では監督者はマレーシア人でも、力仕事をしている労働者はほぼ外国人労働者です。外国人労働者は合法・非合法を合わせ300万人いると言われおり、労働人口の2割程を占めています。
▶外国人労働者は、教育を受けて仕事に慣れてきても数年経つと職場を離れてしまいます。また、賃金値上げも課題の1つです。これらの雇用面の問題に頭を悩ませている日系企業が多い。
▶しかし、総合的にはマレーシアへの投資環境は、自然災害のリスクが低い、インフラが整っている、駐在員が生活もビジネスも全て英語で行える、政治・経済が安定しているなど、ASEAN諸国の中でも整っていると言えます。
在マレーシア日本国大使館 川瀬和広 経済部長

続いて、在マレーシア日本国大使館に伺い、川瀬和広経済部長から経済を中心に日本とマレーシアの両国の政治・経済のつながりについて幅広い視点から貴重なお話をいただきました。
▶韓国の日本8県の全水産物に対して輸入禁止特別措置が報じられるなど世界各国の福島原発問題への対応やTPP交渉などの動向把握など、外交官の重要な活動も知ることができました。
▶ガイドのトンさんの誠実で配慮の行き届いた仕事ぶりにも大いに学ぶところがありました。
参加者コメント
▶マレーシアの大学を訪問した際、イスラム教を国教としながらも、異なる宗教が平和に共存している状況がどのように作られているのか?との質問に、マレーシアの学生は“We respect each other.”と答えてくれました。また、インドネシアの大学では、“Bhinneka Tunggal Ika”というスローガンが掲げられていて、これは英語で“No matter how we different, we can be reunited.”と訳され、どんなに宗教観や価値観が異なっていても、私たちはまたひとつに団結することができるという価値意識を示していました。現地へ足を運んだことにより、多くの学びがあり、気付きがありました。
▶大田精工株式会社では作業の流れを重視されていました。従業員を簡単に解雇できないことや従業員の育成に苦労されていました。また、女性従業員が思ったより多く、特性に合う作業を割り振られていました。
▶訪問先のJETROや大使館でマレーシアの現況、日本との関係などを丁寧に教えていただき、理解を深めることができました。
▶言語の壁、マレーシア人の世界観、マレーシア進出日系企業の苦労などを知ることができました。
2か国目 インドネシア 2013年9月11日(水)~2013年9月14日(土)
パジャジャラン大学(UNPAD)訪問・交流

▶KGU鷲尾先生よりKGU訪問団の趣旨説明があり、Yani先生(夏季集中セミナー招聘講師)の司会で両校から4つのプレゼンテーションが行われました。UNPAD学生の英語力やプレゼン力の高さに触発されて、KGU学生も負けじと活発な質疑応答や意見交換を行いました。
▶Yani先生とBudiono先生(夏季集中セミナー招聘講師)にも同行いただき、UNPAD学生との昼食交流会、アジア・アフリカ会議博物館(「バンドン会議」の会場)見学、民族芸能劇場を訪問しました。
現地企業等訪問
▶翌日はコーヒー製造工場の見学、郊外の伝統衣料工場の見学とデザイン製作、昼食、買い物など、現地学生の皆さんのサポートにより体験できました。
▶バンドンの街~伝統文化を守り伝える古都、繊維とデザインの街、世界平和に貢献した誇り、ジャカルタなどの富裕層の避暑地・リゾート~の多様な姿をUNPAD学生との交流の中で学ぶことができました。

参加者コメント
▶バンドンにはオランダの植民地だった面影があり、西洋風の家が多く見られました。
▶ホテル近くの新しいショッピングモールで、香港の有名なデザート店(チェーン店)があって驚いた。華人が住んでいることもあるだろうが、マンゴーやココナッツなどの調達のため進出しているためかと思われた。
▶アルバイト代が時給US $1と安く、アルバイトをする学生は少ないが、自分でビジネスをする学生が多く、バンドンのアパレル系の店の多くは学生が経営している。
▶日本のコンビニが工夫しながら海外進出中との報道があったが、その実例がホテル前のローソンにあった。2階に飲食スペースが設けられ、お菓子や飲み物はインドネシア商品が多かったものの、中国商品(主に砂糖やはちみつが入った甘いお茶)も見られた。おにぎり、おでん、からあげなど日本と同じような商品が並べられ、菓子パンの包装にローソンのロゴがあり、現地でプライベート商品として生産されているようだった。
▶高速道路のパーキングエリアにお祈りのための建物があり、生活の一部になっていました。
▶歴史で習ったバンドン会議(1955年 アジア・アフリカ会議)の現場を見ることができて感動しました。館長からわかりやすい解説をいただき、楽しみながら学ぶことができました。
3か国目 タイ 2013年9月14日(土)~2013年9月17日(火)
アサンプション大学(AU)訪問・交流
▶バンコクからバスで1時間程の広大な敷地にある新キャンパスを訪問しました。超高層校舎、緑豊かな庭園、寄宿舎、ホテルなど広大なキャンパスにはレトロな巡回バスが走り、校舎はさながら美術館のようでした。交流会は、テーブルを四方から囲む重厚な会議室で行われました。
▶AUからの参加者には、母親が日本人の学生もいました。
▶KGU鷲尾先生・AU日本語教師のミカ先生の司会で、両校から各2グループのプレゼンテーションを行いました。AUの学生たちの英語力は高く、活発な意見交換が続きました。
▶AU学生たちから手作りのかわいいお菓子をいただきました。
▶巡回バスでカフェテリアに移動し、Glen氏(夏季集中セミナー招聘講師)のご厚意で各自50バーツのミール・クーポンをいただき、さらに交流を深めることができました。

JETROバンコク事務所 田中一史 次長

JETROバンコク事務所を訪問し、田中一史次長よりお話を伺いました。
▶タイに進出している日系企業は約8000社。去年はトヨタがタイ進出50周年、来年はホンダが50周年を迎えます。この50年間で大手企業を支える中小零細企業も多く進出しており、JETROではそのような小規模の企業をサポートしています。
▶最低賃金300バーツ/日が施行されるなど、労働集約型の企業進出は難しくなり、ミャンマー・ラオスなどへの進出がタイを拠点にはじまっています。
▶7月から短期ならVISAなしでも日本へ旅行ができるようになり、日本各地の首長が観光や農産物、伝統工芸のPRに注力しています。
▶タイ(14万円)は中国(17万円)に次いで一回当たりの日本滞在での支出金額が多く、特に花や温泉が好きなタイの人たちには、北海道が人気の観光スポットになっています。
▶タイは製造業の拠点として知られてきましたが、最近ではタイ人をターゲットとしたサービス業も多く日本から進出しており、ラーメン屋・メイドカフェ・結婚相談などが目立ちます。
▶インラック政権がタクシン元首相の傀儡といわれている現在の政治情勢は不安材料。
タイ政府国家経済社会開発委員会 政策分析官 Mr. Nattwoot/タイ政府政策顧問 松島大輔 氏

続いて、タイ政府国家経済社会開発委員会 政策分析官 Nattwoot氏と、日本政府からの派遣により同委員会で活躍されておられる松島大輔氏から、タイの現状と課題、同局の活動と日本との共同事業についてお伺いする機会をいただきました。
▶タイでは経済の動きがとても速いこと、そして政治の不安定さが課題となっています。
▶最低賃金の引き上げ(全国一律300バーツ/日)が行われてから、タイに進出している日本企業は従業員を他の国へ派遣するようになってしまいました。
▶タイ政府国家経済社会開発庁では、2011年末に起こった大洪水を契機に「お互い(Otagai)プロジェクト」を立ち上げました。このプロジェクトは、日本がすでに持っている技術を、そのままタイへ伝えるのではなく、技術のノウハウだけを伝え、あとはタイで受け入れやすいように修正しつつ発展させることを目的としています。また、タイからは日本企業が新しいビジネスを広げる場を提供するという点で、互いにメリットがあります。
(例/日本米の生産技術をタイではインディカ米に置き換えて応用など)
▶タイの経済において日本は重要な国であり、日本の47都道府県それぞれの企業の特徴を活かした「SME47」という新しい事業が進められています。2カ月に一度、地方で会議が開かれ、その地方の企業がタイへ技術や新しいビジネスなどを提供しています。
(例/兵庫県の観光業、山梨県の機械の自動操作技術など)
SCG(Siam Cement Group) Mr. Nut Nakasuwan

17日は、タイを代表する大企業であるサイアム・セメント・グループ(以下、SCG)の本社をAUのアレンジにより訪問しました。
▶SCGは1913年に設立され、今年で100周年を迎えるASEANの国々にとっても重要な会社です。
▶主な事業はPaper, Chemical, Building Materialsで、従業員は4万人。アジアを中心に世界34のブランチを持っています。
▶SCGの課題はヨーロッパ・アメリカなど遠い国々への輸出です。重量のあるセメントの輸出はどうしても近隣のASEANが中心となっているのが現状です。
▶SCGでは紙類やセメントを作る事業だけでなく、リサイクルビジネスや、食品ビジネスなど、様々な新しい分野でのビジネスを展開しています。食品ビジネスでは、「世界のキッチン」と呼ばれるタイ農業の特徴を活かし、缶詰食品・ワイン・米など幅広く取り扱っています。
▶日本では大阪にブランチがあったが、経営面の都合でなくなってしまいました。
▶SCGの紙はバングラデシュで特に人気がある。
参加者コメント
▶アサンプション大学はとても大きく、綺麗なキャンパスで驚きました。
▶AUで「タイの若者について」のプレゼンテーションがあり、声も大きく身振り手振りで伝えようとする気持ちが伝わり、私も見習わなければと感じました。
▶AUの学生には、日本では仕事がハードで自殺する人がいるという話は信じられないようでした。
▶タイでは今K-Popが人気のようで、韓国のファッションや音楽の影響を受けていると感じました。
▶日本のテレビ番組(昔のもの)がタイでも放送されていることに驚きました。
▶JETRO訪問でタイにおける日本のプレゼンスの高さ、現在はタイからの観光客誘致促進に日本側の関心が集まっていることを改めて理解できました。
▶タイ政府でアドバイザーをされている松島氏の英語でのお話しの内容の豊かさ、タイの発展と日本とのマッチングに情熱を注いでおられる姿に感銘しました。