2016.09.08.
公益財団法人 日本デザイン振興会 理事長 大井 篤 氏が講演

大井 篤 氏

大井 篤 氏

2016年7月7日(木)に開催された第70回国際学部連続講演会では、公益財団法人 日本デザイン振興会 理事長の大井篤氏に「リーダーシップ・デザイン・経営」と題してご講演いただき、会場の関西学院会館には約230名もの学生・一般の方々が集まりました。なお、この講演会は関西学院大学産業研究所の協力を得て実施しました。(司会:国際学部 渥美裕之教授)

演題を横断する軸を感じ取ってもらえれば、との前置きで始まったご講演を一貫する言葉は「感性」。前半は「リーダーシップと感性(感じる力)」という切り口で、感じる力がどのような場面でどう活きるのか、著名人の言葉を引きつつ、様々な角度からお考えを述べられました。社会へ出た時に重要なことは危機管理であり、危機に直面した時に打開策をひらめくかどうかは、日頃からの感性を磨く努力に左右されることや、物事を判断する際には「鳥・虫・魚・蝙蝠・心の眼」といった複数の視点から感じてみること、さらに、伸びる部下を判断する要素として、素直、好奇心、忍耐力、準備、几帳面、気配り、夢と目標設定の7項目を挙げられました。また、明治維新以降の教育は知識習得を優先し、従来学ばれてきた経学(四書五経などの哲学)・史学・詩文といった自ら考える力や直感・感性を養う学問を排除した結果、リーダー育成に失敗しているのではないかという説や、人間としての総合力を鍛えるには古典から学ぶものが多いとして、中国の儒教や兵法、江戸の思想家の石田梅岩、佐藤信淵を紹介されました。

後半は「Design Thinking と経営」という視点から、理想とする経営者像を提案されました。そのお考えに至る背景として、まず近代デザインと工業や産業との関わりについて触れられ、イノベーションを生み出す思想として「デザインの本質はユーザーの動機や行動(幸せ)をベースに物事を組み立てること」というTim BrownのDesign Thinkingという考え方を紹介されました。次に、経営者を類型化し、求められているのは目的意識型(真面目な異端。集中力が高くエネルギッシュだが冷静沈着。真に大切な目的遂行に時間を割く)の経営者であると述べられました。そこから発展して、このタイプの経営者がDesign Thinking Mindを持って行動することで、Empathy Management、Integrative Analysis、Tolerance、Navigator、Policy Makerをキーワードとした、これからの経営者であるイノベーティブな“Thought Leader”が生まれるのではないかと問題提起されました。最後に、人を動かすのは知識ではなく感性であり、付いて行きたいと思われるリーダーになるためは、やはり感性を磨く必要があると締め括られました。

ご講演後には多くの学生が挙手し、時間ぎりぎりまで活発な質疑応答がありました。「学生の内に身に付けるべきことは?」との質問に対し、語学力、ただし単に言葉ができるという意味ではなく、自分が心から伝えたいことを相手に届けるために、論理構成力とコミュニケーション能力を合わせて身に付けて欲しいとお答えになりました。その他の質問に対して返された「忍耐力は、目標を強く持って到達しようとする努力によって鍛えられる」「仕事は部下に任せ、責任は自分でとるのがいい上司」「世間ではなく自分を生きよう」「解のない問いを解く力は知力・人柄・コミュニティ力の総合力」といった心の琴線に触れる言葉を、聴衆席の学生達はしっかりと受け止めていました。

【ポスター】国際学部連続講演会20160707_公益財団法人日本デザイン振興会理事長 PDFファイル   [ 84.91KB ]PDFリンク

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