2015.10.06.
自由民主党 政務調査会 会長代理 小野寺 五典 氏が講演

小野寺 五典 氏

小野寺 五典 氏

7月3日(金)、自由民主党 政務調査会 会長代理 小野寺 五典氏を講師として、本学東京丸の内キャンパスにお招きし、第67回国際学部連続講演会を7月3日(金)午後6時~午後8時まで「我が国の防衛と安全保障」をテーマに開催しました。(司会:国際学部教授 鷲尾 友春)。

この討論・講演会には、東京在住の関西学院大学OB・OGの方々や、ポスターによる案内に応募された一般参加者、合計約80名と、上ケ原キャンパスからはSkypeを活用して約20名の国際学部生が参加し、活発な質疑が繰り広げられました。

小野寺氏は、日本の安全保障環境が厳しさを増している中、自らが防衛大臣や外務大臣政務官、あるいは外務副大臣等を務められた経験から得た、日本の安保体制に関連する法制上の不備や、運用主体である自衛隊の運用体制不整備等の問題点を、具体的に指摘され、しかしそれらは、逐次、改善されつつある、との現状認識を披歴されました。

例えば、これまで陸上自衛隊と海上自衛隊との間で、装備が必ずしも統合運用されておらず、3.11の災害救援に際して、当初、最も早く救援に駆け付けたのが、大部隊を擁する北海道勢ではなく、九州勢であった、との意外な事実を紹介されました。何故、北海道からの部隊の到着が遅れたのか、その原因は、陸上自衛隊が保有する大型トラックを海上自衛隊の艦船に積んで津軽海峡を渡ろうと試みたが、海上自衛隊の船は陸上自衛隊の大型車両を輸送するような設計になっておらず、北海道と東北の間の海を陸上自衛隊の大型トラックが越えられなかったため、それ故、陸続きで駆け付けた九州の部隊が、逸早く被災地で救援活動に従事することになったのだ、とのこと。

また、フィリピンでの災害救助に日本の自衛隊が出動した時も、同じような問題が発覚したとして、次のような事例を紹介されました。それは、自衛隊のヘリコプターの大保有主体は、陸上自衛隊だが、そのヘリコプターを海外に持って行くには海上自衛隊の船に積まなければならない。これまで、あまりその種のことが想定されておらず、フィリピンの災害救援の際に初めて、この種の海上自衛隊・陸上自衛隊の共同作戦が必要となったのだが、実施してみると、陸上自衛隊のヘリコプターの羽が大きすぎて、海上自衛隊の船の格納庫に入らず、そのために、羽の部分を解体せざるをえなかった。その解体に2日、輸送に3日、そして現地での組み立てに2日かかり、結局、フィリピンで自衛隊が積極的な救援作業を開始するまでに一週間近くもかかってしまった。こうしたことを考えると、米軍のオスプレーは、自動で羽がたためる様になっており、実際、オスプレーなら羽をたたむのに2分で済んだ。緊急時に、時間節約は極めて重要な要素で、こうした点からもオスプレーの導入に踏み切った。オスプレーの安全性の担保が問題なら、むしろ自衛隊自らの手で、そうした安全性担保の措置を講じることこそが、為さるべきだと考えるべきではないのか、とのこと。

小野寺氏は、こうした具体的事例を次々と提示され、問題点は次第に明らかになり、それと共に、運用上の課題も解消されてきている、と最近の改善ぶりを説明されました。
講演はその後、尖閣諸島を巡る米国の基本姿勢(尖閣列島は日米安保の対象)や、そうした基本姿勢に立脚しての日米の姿勢の強固化が中国に対応ぶりを変化させ始めたとの認識等に及び、さらに、こうした外交と安保の表裏一体運用こそが、日本の平和を盤石のものにするのだとの持論を展開されました。

お話はその後、集団的自衛権の問題に移り、南スーダンでの国連のPKO活動従事の自衛隊が、想定上直面しなければならない課題等を紹介する形で、集団的自衛権の必要性に言及されました。日本の自衛隊は、現地でキャンプ地造営を担当しているが、その隣に国連職員の宿営地があり、仮にここがゲリラなどに攻撃され、近接の自衛隊に救援要請が来た場合、現行法上では、すんなりと要請には応じられない。現行法では、自衛隊が攻撃されて初めて、反撃出来る仕組みだが、自衛隊自体が攻撃されていない状況では、たとえ近接の国連職員救援のためには出動することが出来ない。結局は、現地司令官の個人的判断で、しかも志願者を募るやり方で従事隊員を集め、おもむろに近接の国連施設を偵察に出かけ、そこで敵の攻撃をわが身で受けて初めて、反撃が出来る。このような、自分がまず撃たれて、初めて正当防衛的対応をするしかない、それはやはり問題ではないか。こうした認識に立ち、小野寺氏は、現地の司令官の個人的責任と判断で、ことに処するようなやり方ではなく、やはり政治家が大基の問題をきちんと整理して、現地がそれに基づいて動ける体制を整えることこそが必要、と述べられ、講演を締めくくられました。

後半は、小野寺氏と東京会場の方々と上ケ原キャンパスの学生とのディスカッションおよび質疑応答が行われました。集団的自衛権、砂川事件、普天間基地移設問題、米軍との関係について、少子化による自衛隊員の人数・質の確保について、平和安全法制による自衛隊の声、戦争経験者世代の声について等々、多数の質問が寄せられました。小野寺氏は、各質問に対して丁寧に回答してくださいました。

国際学部 連続講演会関連ページへのリンク