2015.06.03.
元世界銀行副総裁 西水 美恵子 氏が講演

西水 美恵子 氏

西水 美恵子 氏

第61回国際学部連続講演会は、元世界銀行副総裁 西水 美恵子氏を講師としてお迎えし、5月18日(月)に開催されました。この講演会は、グローバル人材育成推進事業の一環として、関西学院大学産業研究所の協力を得て実施され、約160名の学生・一般の方々が参加しました。(司会:国際学部教授 鷲尾友春)

演題は、「あなたの知らない世界銀行-元世界銀行副総裁が、世銀の実態と現場を語る‐」でした。冒頭、西水氏は、「貧困とは何か」という問いを学生に投げかけ、その後、貧困の生活を体験するために、パキスタン北部のカシミール地方でホームステイされたご自身の経験を話されました。そこでの生活は、毎日、日の出前に往復2時間かけて泉まで水を汲みに行き、家に帰って子供たちと朝食を食べ、ヤギに餌をやり、畑仕事をする。昼前にもう一度水を汲みに行き、お昼はお茶だけ。そして薪集め、洗濯、ヤギに餌をやり、また夜に水を汲みに出かける。夜の水汲みは、暑さと疲れで朝より時間がかかる。ホームステイ先のお母さん(アマ)が言った言葉は”This is not life. It’s just keeping a body alive”。人間的な生活ではなく、何の希望も持てない動物のような生活。気が狂ってしまいそうな生活。このような生活では人間として生きる最低限の希望すら持てない。アマが願うことは、「子供たちが教育を受けて、この生活を繰り返さないようにすること」でした。こうした実態が長い間、世界から見落とされてきた事だと語られました。

講演中、西水氏は、「経済学では貧困を経済発展の過程で起きる自然現象と捉えがちだが、現実は、悪統治、悪い政治がつくった人造現象である」とも述べられました。貧困層の唯一の希望は、子供たちが教育を受けて、より良い将来を生きること。しかし、学校建設事業にさえいろいろな汚職があり、大人の都合で建設されるだけで、アマの希望も否定され、人間として生きる最低限の希望が持てない生活が続く。

世界銀行の使命は、「貧困のない世界をつくること」。世界銀行が教育に力を入れるのは、こうした貧困をなくすことだ。世界銀行の手続きは、うるさい、面倒くさい、時間がかかるなどと言われることが多い。例えば、公平で質の高い教育への融資を行うために様々な条件を設定するが、その条件のねらいは、一国の良い統治の下で、いい教育制度が築かれること。そのためには、いくら時間がかかっても、国家を私有化する様々な汚職や、それに関わるマフィア的な権力とさえ闘わなければならないのが現実だ。

ご講演後には、学生代表・会場参加者とのディスカッションが行われました。西水氏のご希望により、学生達やフロアーからの質疑応答にいつもより長い時間が充てられました。世界銀行の融資を返済し終えるまでに国民がより豊かになるために最も大事なことはなにか、少数民族への教育環境の確保にどのように取り組んでいるか、国際機関で働きたい人へのアドバイス、文化・宗教が大きく異なる国々で仕事をしていく上で大事にしている基準はなにか、女性の社会進出について等、たくさんの質問が寄せられました。

【ポスター】国際学部連続講演会20150518_元世界銀行副総裁_西水美恵子氏 PDFファイル   [ 332.64KB ]PDFリンク

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