2023.06.16.
草薙柚季さん(国際学部4年)が国連本部でユース代表としてスピーチ

国際学部4年の草薙柚季さんが、2023年3月6日-17日に米・ニューヨークの国連本部で開催された国連女性の地位委員会(Commission on the Status of Women、以下CSW)に日本政府代表団のユース代表として参加し、国連本部の公式会合で3分間のスピーチを発表されました。国際学部での学びに加え、学部副専攻「国連・外交プログラム」の履修やカナダへの交換留学、そして学外での活動など、様々な分野で精力的に取り組まれている草薙さんに、今回の国連女性の地位委員会への参加に至った経緯や国際学部での学びについて伺いました。

Q.CSWに日本政府代表団のユース代表として参加することになった経緯・理由をお聞かせください。
―国連・外交プログラムの先生から、授業内で紹介いただいたのがきっかけです。純粋な好奇心から日本国内のCSW参加団体である「日本女性監視機構(JAWW)」が実施する書類選考・面接に参加しました。国連は組織全体として若者の参画を推奨しており、日本も、数年前からCSWに派遣する日本政府代表団に「ユース代表」を 1 人含めています。 JAWWに推薦いただいた結果、外務省から日本政府代表団のユース代表に選出いただきました。
以前から、日本におけるジェンダー不平等の現実への強い失望感がありました。同時に、ジェンダー平等運動へのバックラッシュ(反発)を国内外で目にしたことから、「誰一人取り残さない」社会の実現を掲げている国連では、どのようにジェンダー問題が扱われ、女性以外(男性やノンバイナリーの人)がどのように参画しているのか、またどうすれば日本におけるジェンダー平等運動を排他的ではないムーブメントにできるかに関心があり、CSWへの参加を決意しました。
ニューヨークの国連本部で開催されたCSWでも、参加者の8 割ほどが女性という光景を目の当たりにし、ジェンダー問題に関して女性以外の関心を惹きつけることが難しいことは、日本でも世界でも共通していることなのだと実感させられました。
 

Q. MSの国連・外交プログラムを履修しようと思ったきっかけを教えてください。
―幼少期から貧困問題に興味がありました。幼稚園児のころに住んでいた上海で目の当たりにした貧富の格差に子供ながらに違和感を覚え、小学校2年生の時に国連の存在を知りました。高校時代にエチオピア大使として参加した模擬国連では、インターナショナルスクール出身者の交渉力や即興スピーチ力に圧倒されました。また、World Scholar's Cup(ディベートやエッセイライティングを競う世界大会)で様々な国の生徒とディベートをする中で、自分はしたたかな説得力や交渉の細かなニュアンスを伝える英語力が欠如していることを改めて認識させられました。
高校時代に総合政策学部の村田俊一先生の合宿型の授業(総合政策トピックスA)を履修したこともきっかけのひとつです。「途上国を助ける」という上から目線は自分本位で、むしろ先進国の生活様式や植民地支配の名残が貧困の構造を永続化している現状を知り、国連機関における汚職などの現実に衝撃を受け、村田先生のもとでさらに学びたいと思いました。
また、他学部の学生との交流を通じ、自身の思想・価値観のバイアスに気づきたかったという理由もあります。政治に関する議論は日本では「意識高い系」と揶揄されがちですが、何気ない日常会話の中でそうした議論を友人とするように心がけています。政治は一部の「意識高い系」が取り組めばよい遠い世界のことではなく、全ての人の日常と直結するものだという認識が重要だと考えています。

Q. 国際学部での学びが、草薙さんの活動にどのように活きていると思われますか。
―現在、難民・外国人労働者の権利を保障するためのNGOに所属していますが、国際学部の授業(国際移民論など)で日本の入国管理法など移民関連の法律や歴史を体系的に学んだことで、実践的な活動にも知識を活かすことができています。クリティカルシンキングの授業では、論理的・批判的思考力を「人を貶めるために使ってはいけない」ということを学びました。建設的な対話のための論理的思考力を養うことは、どのような仕事に就いたとしても重要な点だと思います。
国際学部では、良い意味でも悪い意味でも専門性に縛られないので、多様な領域について学ぶことができます。入学当初は開発関連分野に関心があったのですが、徐々に日本国内のジェンダー問題や社会学に関心を抱くようになりました。初めから専攻が決まっていないことによって、関心の幅を広げることができ、またどの段階においても自分の興味のある学びに触れることができたのは、国際学部ならではの特徴だと思います。
また、英語開講の授業で少人数でのディスカッション・ディベートの機会をたくさん経験していたので、国連での他国の官僚・ユース代表との交流の際や、交換留学先(※)の授業でのディスカッションの場においても、臆することなく発言することができました。国際学部の先生はオフィスアワーなど授業以外でも非常に丁寧に一対一でも対応してくださいます。そうした環境に慣れていたおかげで、留学先でも積極的にオフィスアワーに参加し、教授にリサーチアシスタントとして雇ってもらったり、ジェンダー・移民政策関連の企業でのインターンシップを紹介してもらったり、有意義な時間を過ごすことができました。
※2年次の秋学期から約1年間、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学への交換留学に参加

Q. 下級生や国際学部を志す高校生へのメッセージと将来の展望を教えてください。
―私は運がものすごく良いのか不思議なつながりが多く、カナダ発東京行きの飛行機で隣に座り仲良くなった方が、たまたま最寄り駅から二駅のところに住んでいることがわかり、その方のもとで夏休みの間働くことになったり、留学中に SNS上でホームステイ先を探していた時に、たまたま声をかけてくださった方がインターン先の社長の知り合いだったと後で発覚したりということがありました。このように、日々の何気ない出会いや会話を大切にすることが、人生の豊かさにつながると思います。
入学直後はコロナ禍に伴うオンライン授業により長時間のパソコン作業や大量の課題で精神的に落ち込み、ストレスを感じていることに気づけなかったこともありました。下級生のみなさんにも、頑張りすぎないことを伝えたいです。精神をすり減らしてまで何かをする必要はないし、心身の健康が第一です。自分らしくいられる範囲で頑張ることは素晴らしいことだけれど、心が苦しくなったら一休みしても良いと余裕を持つことを心がけてほしいです。
卒業後はイギリスの大学院への進学を目指しています。現在卒業論文で取り組んでいる研究(移民家事労働者のコミュニティー形成・抗議運動に関するジェンダー視点からの考察)を大学院でも続けたいです。また発達障害がある子供たちの居場所づくりにも持続的に貢献したいので、研究者兼ソーシャルワーカーとしての活動ができたらいいなと考えています。