原田ゼミ3回生の京大とのオンライン合同ゼミ(2020年10/10)の報告

[ 編集者:経済学部・経済学研究科      2020年11月6日   更新  ]

はじめに   

天野大輝 

 10月10日、オンライン上で京都大学の竹澤祐丈ゼミと合同ゼミを行った。本来は6月に京都大学に訪れる予定であったが、新型コロナウイルスの影響もあり、このような形式で開催することになった。合同ゼミはそれぞれの自己紹介から始まり、互いの共同論文の発表、そしてそのテーマに関する討論という形であった。私たちはこのような対外的な活動が初めてだったので、緊張に包まれるなかで新鮮な空気を楽しむこととなった。結果として、合同ゼミは4時間半に及んだが、各々が多かれ少なかれ課題を残すものであったように思う。しかし、それはこれまでにはなかった角度から意見をいただけたからであり、まさに貴重な体験であったと実感した。

合同ゼミ①原田ゼミ2020.10.10

竹澤先生が作ってくださったプログラム

原田ゼミ・竹澤ゼミの報告と討論

1.原田ゼミの報告と質疑応答  

天野大輝 

 原田ゼミは「国民経済の総体把握のための経済学構想を求めて――G.シュモラー、W.ゾンバルト、E.ザリーン」というテーマで報告を行った。
 はじめに、私たちは現代において、企業が海外へと展開するにあたり国民・民族特有の精神的・慣習的という壁にぶつかる事態を示し、現在の数学を多用する経済理論において、慣習や宗教といった要因が軽んじられることの問題点を指摘した。そこで、19世紀中頃から20世紀前半において、そのような文化的な側面を取り入れた経済学を模索した3人のドイツの歴史学派の経済学者に着目した。
 まずはグスタフ・シュモラー(1838~1917年)による「文化と社会の経済学と発展段階論」である。シュモラーは彼の時代の経済学で取り扱われなかった風習などを考慮する「倫理的な」観点を提唱し、そうした文化的な側面の根幹である行政機関と制度を中心とした発展段階論について分析した。次にヴェルナー・ゾンバルト(1863~1941年)による「『経済システム』の把握」である。ゾンバルトは経済が精神・形態・技術という3要素で構成されているとしており、それらを多数の対立する項目によって規定することで、様々な経済体制の性質を把握した。最後にエトガー・ザリーン(1892~1974年)による「『直観的理論』構想」である。ザリーンはこれまで成し遂げられていなかった非合理的な要素を含む総体的な経済認識を「直観的anschaulich理論」として理論化するとともに、その観点から経済学史をまとめ上げた。

合同ゼミ②原田ゼミ2020.10.10

原田ゼミの報告のパワーポイントの最初

 この報告はあらかじめ竹澤ゼミに渡しており、全体的なものからそれぞれの人物に対する詳細なものなど多数の質問をいただいていた。そのなかからひとつ紹介すると、「文化的な側面を取り入れた経済思想がこの時期のドイツであらわれた歴史的な背景にはどのようなことが考えられるのか。」という質問であった。それに対して、原田ゼミ側は、当時のドイツは第1次世界大戦に敗れた直後で行き詰まり、また、効率性、合理性というものに囚われ閉塞的であった。その状況で排除されがちな文化的な側面を取り入れながら打開してみようという機運が高まったのではないかと答えた。

合同ゼミ③原田ゼミ2020.10.10

机の上の風景

2.竹澤ゼミの報告と質疑応答  

小笠原彩華 

 竹澤ゼミからは、「ロック『キリスト教の合理性』及び『人間知性論』における「理性」と「信仰」について」と題された以下の報告がなされた。
 ふたつの先行研究として、ラムゼイ氏によるロックの思想は “mysterious”であったか?また「直観intuition」と「信仰」を重ねる解釈は妥当かという問いと、加藤節氏による『知性論』と『合理性』における挫折と達成の関係は妥当かという問い、が示された。そして次のように論じられた。
 『知性論』(1689年) について。人間は神に創られた被造物であり、与えられた理性のみでは神の求める水準に達することはできない。ロックは信仰問題を「理性を超える事物」として捉え、その信仰には啓示が必要であるとした。啓示によって人知の領域はやや広がり、神の求める水準に近づくことができるというものである。
 『合理性』(1695年)について。人間が守るべき「行いの法」(律法)は実際に人が完全に従うことができない。しかし、「行いの法」に加えて「信仰の法」を守ることで、「行いの法」では不充分なものを補填し、救済を得られるという考えである。この過ちを信仰でカバーすることが信仰義認であるとした。
 最後に、冒頭にあったふたつの問いに戻り、ラムゼイ氏の考えに関しては、奇跡に神の力を見る視点、預言の成就における観念と命題の連結を見る視点はロック自身の記述に即しているとされた。加藤氏の考えについては、「理性」と「信仰」の定義が『知性論』から『合理性』へと引き継がれ、聖書解釈を通じた道徳・規範の認識問題に関する議論がなされ、挫折と達成の内容は妥当性を有するとされた。
 質疑応答では3つの質問に答えていただいた。第1に「ロックは何のために信仰しているのか」という問いに対して、ロックは人間を神の作品と考えており、完全な人間となるために信仰することで神に近づくと考えた、という回答があった。第2に、ロックの思想は当時オーソドックスな思想であったのか異端的であったか、という問いに対して、理性と信仰をうまく使い、説明していくことが当時の穏健派の主流であり、ロックはそれに該当する。ただし、どこまでが理性でどこからが信仰なのかという線引きはロックのオリジナルである、という回答があった。第3に、「行いの法や信仰の法を守ることはそもそも何を目標としているのか、何を目的としているのか」という問いに対して、人は神からの創造物であるため、神から与えられた律法は守ろうとはするべきである。しかし、完全には従えないため、憐れみとして信仰の法がある、という回答があった。

合同ゼミ④原田ゼミ2020.10.10

竹澤ゼミで大活躍の原大輔さん

まとめ   

小笠原彩華 

 竹澤先生から原田ゼミに対して、制度経済学や行動経済学と比較してみる可能性についてコメントがあった。また原田先生は、竹澤ゼミに分析はよくできているがそれを政治論と結びつけて分かりやすく説明することが必要であるとコメントした。
 今回は、オンライン上ではあったが、このように「経済学史・思想史 合同セミナー」という合同ゼミという貴重な機会を得られたことに感謝したい。とくに、この合同ゼミのためにご尽力くださった京都大学の竹澤祐丈先生、竹澤ゼミの皆さま、そしてご指導くださった原田先生に、お礼申し上げる。他大学の方と発表、質疑応答ということは非常に意義深い経験であった。また、今回の合同ゼミを通して至らない点、不足している内容などを明らかにすることができ、今後の活動に生かしていきたいと思う。

合同ゼミ⑤原田ゼミ2020.10.10

集合写真