原田ゼミ3回生の図書館特別閲覧室での授業(2019年5/6)の報告

[ 編集者:経済学部・経済学研究科      2019年5月20日   更新  ]

 6月の京都大学との合同ゼミを前に、授業の一環として、関学図書館の特別閲覧室にて、関連する初版本などを閲覧した。それらの多くが図書館の貴重図書であるが、単に本学秘蔵というのではなく、まさに人類の知的遺産と言えるものである。

猪熊日和

1.関西学院大学図書館の貴重図書

 本学図書館には多くの貴重図書・資料が収蔵されており、とくに学術的価値が高く、研究において重要な蔵書群はコレクション化とされ、学術研究に貢献している。
https://library.kwansei.ac.jp/collection
 2013年10月に社会思想史学会第38回大会が本学で開かれた際には貴重図書展示・閲覧会が行われて、T.ホッブズやJ.ロックやA.スミスなど著名な思想家の初版本が学会員に閲覧に供されて、他大学の先生方からも高い評価をいただいている、とのことである。

2.ゼミ生での記念写真の撮影

 アダム・スミス(1723~90年)の『国富論』の初版は1776年に2巻本で出ているが、驚くべきことに、本学図書館には2セットも所蔵されている。そのうちのひとつは河上肇(1879~1946年。京都大学教授だったが戦時中はマルクス主義者として投獄された)の署名が入った河上自身の旧蔵書であり、その筆跡や本の厚み、綻びた部分から、時の流れが感じられた。

1

私たちが閲覧して記念撮影した『国富論』初版は、もう1セットの方である。

2

 さらに、私たちがいま研究しているドイツの経済学者フリードリヒ・リスト(1789~1846年)の『政治経済学の国民的体系』の初版(1841年)――『国富論』よりも小ぶり――も手に取ることができた。表紙の裏には前の持ち主が書いたと思われる落書き(?)が見られたことも印象的だった。

3

 これら、めったに手にできない資料を直接体験することができ、ゼミ生と原田教授で一緒に写真を撮れたことは、貴重な体験であった。
 また、この報告を書いている猪熊が文学部で哲学を専攻していること(経済ではMS生)に関連して、イマヌエル・カント(1724~1804年)の著書である『純粋理性批判』(1781年)、『実践理性批判』(1788年)、『判断力批判』(1790年)の初版本も閲覧し、記念写真を撮ることができた。とりわけ、『判断力批判』は文学部の授業で原文(ただし現代版)で講読しているので、その講読箇所を実際に見てみるとともに、写真を撮ることができた。
 以下、私の記念撮影は(恥ずかしいので)カットして、それらのタイトルページの写真のみを挙げておく。

カンと

カント『純粋理性批判』   カント『実践理性批判』     カント『判断力批判』

3.ひげ文字でリストの原文を読むとともに、日本語訳の歴史を追った

 ひげ文字のドイツ語の表を参照しながら、リストの『政治経済学の国民的体系』初版(1841年)を部分的ではあるが読んだ。すると、ドイツ語で原文を読むことで分かったことがいくつもあった。例えば、タイトルには„Erster Band“(第1巻)とあるので、リストはさらに2巻、第3巻と連続して出版するつもりだったことを推測することができた(実際には出なかった)。また『政治経済学の国民的体系』に加えて、「農地制度論」のタイトルの訳について改めて考察した。厳密には「農地制度、小人(こびと)経営、外国移住」なのである。
 それから、『政治経済学の国民的体系』が日本語訳されてきた歴史についても考えた。富田鐵之助校閲・大島貞益訳『李氏経済論』(1889年(明治22年))、谷口吉彦・正木一夫訳『国民経済学体系』(1938年)、正木一夫訳『政治経済学体系』(1949年)など、いずれも関学図書館に所蔵されている一連の翻訳を閲覧した。とくに『李氏経済論』は日本語訳とはいえ、漢文の書き下し文のようであり、私たちが読むには難しいように思われた。
 以下の写真は、所蔵の『政治経済学の国民的体系』初版のタイトルページと、同じく所蔵の日本語初訳『李氏経済論』のタイトルページ、および1928年にベルリンで出版された『リスト全集』第5巻(「農地制度論」完全版が所収)をOHCで写して解説する原田教授である。
 

リスト

リスト『政治経済学の国民的体系』初版  リスト『政治経済学の国民的体系』の日本初訳

先生

 以上で報告を終わる。