ゼミ担当教員・栗田匡相からのメッセージ

[ 編集者:経済学部・経済学研究科      2014年3月30日   更新 ]

ゼミ担当教員・栗田匡相からのメッセージ

何かを理解することは思い出すことに似ている、とどこかで聞いた覚えがあるが、世の中の何かに気づいたり、他者や自分を理解したりするためには、それ以前に、それに連なる経験や出会いがなければならない。しかも、当の本人が経験したり出会ったりしたときには、その未熟さ故に、その意味や重要性に気づけない経験や出会いが実はとても重要である。そして、しばらくして(1ヶ月先なのか、数年先かそれはわからないが)、あるタイプの学生には、その出会いや経験の意味を深く深く理解できる瞬間が訪れる。そのときに人は生きている喜びや美しさの意味を自分の人生を通して理解することが出来るのだろう。となると、この先の人生を豊かに送るために、大学生活の中で学生達が心がけるべき姿勢の一つは、未知なるものへの不安や恐怖に負けず、出会いや経験を求める冒険へと旅立つことではないだろうか。

しかし、一方で冒険を生き抜くための知恵や技術も必要だ。これらがないとすぐに冒険はゲームオーバーになってしまうだろう。また、折角得た出会いを意味ある出会いに変えていくために思考する能力を鍛えることも必要だ。つまり「学ぶ」ということがどうしても必要になる。それらをしっかり「勉める」ことで、学び→出会い→気づき→もっと深い学びへの欲求→新たな出会い→深い気づき、といった好循環が生まれるようになるはずだ。

 ベトナム(2011年夏)、カンボジア(2012年夏)、と行ってきた栗田ゼミ恒例の途上国フィールド調査(冒険!?)だが、2013年はケニアで行う事になった。この場を借りて、本調査の実施にご尽力を頂いた皆様に感謝の言葉をお伝えしたい。この調査を行うきっかけを与えて頂き、そして私の学生に対しても分け隔て無く非常に大きな愛情をもって本調査の実施を温かく見守って頂いた神戸大学大学院国際協力研究科の高橋基樹先生にはとりわけ感謝したい。高橋先生のエネルギーあふれる言葉の端々に、アフリカに対峙することの喜びと厳しさが同時に語られていたことに学生達は皆気づいていた。

JICAナイロビ事務所の江口秀夫所長、花井淳一次長、丹原一広次長、近藤克郎氏、木村聖氏、宮田有佳氏、またナイロビ事務所のスタッフの方々、青年海外協力隊の皆さんには、ジョモケニヤッタ国際空港の大火事のためにナイロビで寂しく孤立していた数名の学生達をホテルまで見舞って頂き、励ましの言葉をかけていただいた。懇親会の席で、目を輝かせながら皆様の話を聞いていた学生達の姿を私は一生忘れないと思う。海外に出ると日本という国のすごさを感じることが多いがあらためてJICAという組織の懐の深さを垣間見られた、そんな気がした。JICAナイロビ事務所で研究報告をさせて頂くという貴重な機会も与えて頂き、学生には得がたい経験となったことは言うまでもない。

NPO法人道普請人の喜田清ケニア事務所長、本庄由紀氏には、リフトバレー州での調査時に、雨によるぬかるみで村までミニバスが迎えにこられなくなった際に、4WDの車で我々をピストン輸送してくれた。雨に打たれて寒く、そして心細くいた我々には喜田さんの笑い顔が救世主のように見えたものだ。また、現地での通訳の確保などに奔走して頂き、夕食会の際には学生に海外でのお仕事のご経験を語って頂いた。女性として、母としてケニアのナイロビで働いている本庄さんの言葉に、女子学生達は色々な相談をしていたようだ。その相談に真剣に愛情を持って接してくれた本庄さんには感謝の念が絶えない。

キアンバー村のグラディス氏には、村人の招集や調査時のスケジュール管理などで大変お世話になった。とても聡明でパワフルな女性である。

日本学術振興会ナイロビ駐在事務所白石壮一郎所長、秋田大学教育文化学部宮本律子教授、京都大学ASAFAS博士課程在籍山根裕美氏には急なお願いであったにもかかわらず、ナイロビで学生達に言語学や動物行動学・野生動物保全、開発人類学といったご研究の一端をご自身のライフヒストリーとあわせてご紹介頂いた。学生達は皆自分たちの将来やケニア社会について貴重で豊かな知見を得ることが出来た。

特定非営利活動法人チャイルドドクター・ジャパン宮田久也氏には、いまだ多く感染者が存在するHIV/エイズの問題やスラムの子ども達の健康についてお話を伺った。ユニークで優しいお人柄の宮田氏から語られる現実の悲惨さに学生達は真剣に聞き入っていた。

マゴソ・スクールのリリアン・ワガラ氏、早川千晶氏には、東アフリカ最大のスラムにあるマゴソ・スクールでのワークショップやスラムの案内などをお願いした。マゴソ・スクールで子ども達と一緒に歌って踊ったあの時間と空間を参加した学生が忘れることは決してないだろう。

株式会社鴻池組山下高司ケニア事務所長、三菱商事株式会社和田昌敏ナイロビ駐在事務所長、住友商事株式会社川浦秀之ナイロビ事務所長、本田技研工業株式会社生田稔氏の4氏には、お忙しい中、学生のために進路相談会ともいうべき夕食会を開いて頂いた。海外駐在経験が豊富な4氏の魅力的な語り口に、学生達はあらためて海外で活躍する人間になりたい、と決意を新たにしていた。

最後になるがキアンバー村で調査に協力頂いた村民の方々が我々を受け入れてくれたからこそ、調査を行う事が出来たわけだ。全ての方のお名前を一人一人あげることは出来ないが、「感謝」の言葉につきる。
 
無論、この中でお名前をあげることが出来なかった方もたくさんいらっしゃるが、こうやって頭に浮かぶ方々のお名前と出会いをほんのちょっと書き連ねるだけで、あっという間にA4の紙面が埋まってしまった。本当にびっくりするぐらい、お会いした皆さんそれぞれが、人として、人生の先達として本当に魅力的な方ばかりであった。二十歳ぐらいの学生に、ここまでたくさんの多様で魅力的な大人達に一気に出会える機会は、日本ではまずありえない。だからこそこのかけがえのない出会いを大事に心にとめておいて欲しいし、それが後からこの世界を生きる君たちの責任でもある。贈り物を既に受け取ってしまった学生達が、この先の未来に生きる喜びや楽しさを自分の人生を通して理解していくために、上記の皆さんとの出会いを大きな物語へと昇華していく努力を継続して欲しい。そして、いつの日か、学生達が何らかの形で、お会いした方々とまた再会し、新たな物語を共に紡いでいってくれることを期待している。