フィールド調査から学ぶ開発経済学とベトナムの現状(栗田ゼミ)

[ 編集者:経済学部・経済学研究科      2011年10月3日   更新 ]

フィールド調査から学ぶ開発経済学とベトナムの現状



開発経済学の主要テーマである貧困問題や今回訪れたベトナムの経済を多方面から包括的に学習する上で、定量的・経済学的な分析手法を学ぶことはもちろんのこと、歴史的な視点から物事を考えることもとても重要です。ベトナムの歴史をひもとけば、朱印船貿易など意外にも日本とのつながりが古くからあったことも見えてきますし、戦時中の植民地時代には悲しい出来事も多々ありました。ただ、ベトナムの近現代史を振り返ったときに、誰しも思い浮かべるのがベトナム戦争ではないでしょうか。そしてその傷跡は、今でもベトナム社会の様々なところで見聞きすることができます。歴史を知る・学ぶことは単なる事実確認ではなく、過去の歴史も含めて想像でしか触れることの出来ない様々なモノ・コト・ヒトに出会うための能力を鍛えることにつながります。それはひいては、現在に生きる自分たちの足下や進むべき未来を思考し、想像することにもつながると思います。

今回南部班は農村調査後に、ベトナム最大規模の産科専門病院、ツーズー病院内にある平和村を訪問しました。
この平和村には、ベトナム戦争において南ベトナム解放民族戦線のゲリラ戦略に対抗し米軍が行った枯葉剤散布により障害を受けた子供達が暮らしています。
下半身がつながった結合双生児としてベトナムで産まれた双子の兄弟ベトちゃんドクちゃんを覚えていますか?残念ながら兄のグエン・ベトさんは2007年に亡くなりましたが、弟のグエン・ドクさんは現在平和村のスタッフとして働きながら、そして双子のお父さんとして日々を暮らしています。
訪問後の学生を取材しました。
 

ツーズー病院にて

福田 彩乃さん
もちろん今、現在も枯葉剤の被害者は生まれ続けています。しかし頭でわかっていてもどこかで現実味がなく、2005年という最近に生まれた子供がホルマリン漬けにされている姿を見たときは衝撃でした。その後、障害を持った子供達と実際に会いましたが、そこには頭が良く元気な子、障害により表現できないけれど一生懸命抱きついてくる子など様々な子供達がいました。無差別にそんな子供たちの可能性を摘んでしまう枯葉剤に怒りを覚え、自分の無力さにやるせなさを感じました。


長 麻奈美さん
枯れ葉剤被害により奇形児として生まれ、直後に亡くなってしまった赤ちゃん。或は生まれることなく亡くなってしまった赤ちゃんがホルマリン漬けになり保管されている姿をみました。今までも病気で亡くなった赤ん坊のホルマリン漬けを見たことはありましたが、こんなに悲しい気持ちになったのは初めてでした。
もし枯れ葉剤が使用されなければ、この子たちは元気に走り回っていたのかもしれない。
私達と同じ様に大学生になり、夢を抱き、恋をし、青春を謳歌していたのかもしれない。
天命として病気を患いなくなったのではなく、人の愚かな行為によって命を奪われ、死してなお土に帰ることなくひたすら人目に晒される。
そんな赤ちゃん達に、本当に申し訳ない気持ちになりました。
原爆にしても、枯れ葉剤にしても、地雷にしても、人を傷付けよとして作った兵器は必ず未来の子供の命を脅かしているのだということをしっかりと心に刻み付けまさした。


若尾 理沙 さん
彼らも何かしら障害を持っており、亡くなってしまう子や一生をそこで暮らす人もいます。平和村の子どもたちと触れ合うことで素直に笑えない自分がいました。そしてそんな自分が怖いと思い、何も言えなくなりました。かわいそうと同情するのはその人たちを見下してしまうことだと思いましたが、とても失礼ですがそう思わずにいられませんでした。


柳 美妃さん
今まで障害者に対して先入観を持ったり、過剰に意識して接していたけど、TuDu病院を訪れてその意識が変わりました。正直、初めは少し目を背けもしました。でも、奇形を持って生まれたけれどみんなすごく元気で、普通の子供となにひとつ変わらない様子でじゃれてくる子供たちを見て、見た目に囚われていた自分をすごく恥ずかしく思いました。

 

農村地区の子供達

そしてベトナムでのフィールド調査、ツーズー病院内にある平和村への訪問を終えて・・

松永 万里さん
 今回のこのプログラムは、とにかくベトナムに圧倒されかけたものでした。農村で貧困と向き合いながらも懸命に生きる人や、ベトナム人大学生の未来に向けての勤勉さ、TuDu病院の産婦や子供たち。今までもいくらか海外旅行には行ったことがありますが、こんなにも刺激的で熱のある国は私にとって初めてでした。この勢いを忘れず自分のものにしないとと感じます。「頑張ろう、日本」って自分達で言っちゃうくらい日本はもしかしたら元気がないのかもしれません。ベトナムの情熱にやられた自分が少しでも、そういった日本の力・勢いになれたらと思います。なれなくても、とにかく自分は勢い良く生きていたいです。


田中 里奈さん
現地の学生の勤勉ぶりを見て、お金が十分にない人たちは教育を受けたくても受けれなくて、受けられている人はとても一所懸命に勉強をしているのに私は自分の選んだ勉強をできているにも関わらずがんばることを怠ってしまいがちなのがすごく恥ずかしくなりました。そして今までそのことに気付かなかった自分も、日本のそのような環境も。


福田 彩乃さん
渡航前は、私にできることが何かあるはずだろう。と漠然と感じていました。実際にベトナムの都市の様子、農村での人々の暮らし、枯葉剤被害者の実態、そのようなものを自分の目で見て感じたことによって、何かあるはずではなく、何かを必ず探し出さなければならないという責任感のようなものを背負ったような気がします。

栗田先生とゼミ生

栗田ゼミナールのねらいは「気づき」です。我々が暮らす日本以来の国々について様々な側面から学習することを通じて、相手国への「「気づき」、自国への「気づき」、そして自分自身への新たな「気づき」を手に入れること。。。