2019.04.01.
【栗田ゼミ】2018夏 フィールド調査 in セネガル(論文作成)

Endeavor to write a paper

帰国後、休む暇もなく始まった論文執筆活動。迫りくる提出期限と格闘しながら、これまでの研究成果を目に見えるかたちにするための取り組みが始まりました。終わりの見えない文字起こし、なかなか上手くいかない分析作業、調査結果に合わせた仮説の見直し…各班それぞれの課題があったと思います。それでも、調査で出会った人々の「顔」を思い出し、全ての班が論文を作り上げることができました。完成した論文は、全国規模の論文大会やJICAで発表を行いました。そこには、単純な「結果」の評価では表しきれない、「過程」での努力の跡がありました。

岩谷 桃佳

 私達はセネガル漁師の保険需要について研究を行いました。日本で数ヶ月間論文の読み込みと保険に関する勉強を行いましたが、セネガル漁師に関する情報が少なく漁師村に保険があるさえも分からなかったため、調査に不安を抱えながら現地に向かいました。結果として調査から、セネガルの漁師は保険に加入しておらず、その多くは保険に入りたいが加入する方法を知らないという現状がありました。多くの漁師が「保険が欲しい」「いつ保険を売ってくれるのか」と話し、彼らが保険を切実に求めているということをひしひしと感じました。そこから、「彼らに保険を届けるために良い論文を書き上げなければいけない」と論文執筆に熱が入りました。
帰国後3週間という短い期間で論文作成に取り掛かりました。データの少なさ、上手くいかない分析や論文の文章を書き直しなど、毎日終電帰りと徹夜の連続で心折れそうになりましたが、チームメンバーの支えのお陰で完成させることができました。地道な努力を重ねた結果、ISFJで賞を受賞し、JICAでも報告をさせていただくことができました。JICAの報告会ではセネガルで働いている方の前で発表をし、彼らに保険を届ける必要があるという切実な思いを伝えました。
論文執筆のための調査では、現地に行かなければ分からなかったことが多く、実際に自分の目で見ることの大切さを感じました。また、論文を書き上げるためには多くの漁師の方々や通訳の学生の協力、共に頑張ったチームメンバーの存在が大きいです。一人ではできないことだったので支えてくださった周りの方々への感謝の気持ちは計り知れないです。
最後に、論文の完成でセネガルとの関わりは終わりではないと思っています。この夏がきっかけに彼らとの関わりがスタートした所だと考えます。学生時代と違った形になったとしても、社会人になってさらに大きな力で関われるようにこれから先一生懸命努めたいと思います。
(下の写真はセネガルの魚市場の様子です。)

4. セネガル(論文①)岩谷桃佳

魚谷 航平

帰国してから、論文大会の提出期限までに私たちに残された時間はわずか4週間でした。どのような論文を書くのかを念頭に置き、膨大な時間をかけて調査の準備をしてきましたが、現地で思うように集めることのできなかったデータもあったので、ほとんどゼロからのスタートでした。また先人達の論文とにらめっこする日々が帰ってきました。分析の方向性を決めるために夜10時までコモンズで話し合い、そこから班員の家に向かって朝まで作業をする、そんな日もありました。何とか方向性が定まった後も初めての論文執筆は楽ではありませんでした。どのように章分けをしたらいいのか?そもそも「はじめに」には何を書いたらいいのか?偉大な先輩方の論文を参考にしながら少しずつ論文を形にしていきました。大会で私たちの論文を評価するのは開発経済学を専門としない方々だったので、彼らにもわかってもらえるように基本的なことから丁寧に書くことも心掛けました。そして何よりセネガルで感じた農村部における圧倒的な教育普及率の低さや、保健に関する制度が整備されていないといった問題点を皆に知ってもらいたいという気持ちを忘れないようにしました。こうしてようやくの思いで完成した論文でしたが、残念ながら大会では一つも賞を獲得することができませんでした。
後日、先生となぜうまくいかなかったについて話をしました。原因は分業体制でした。私達の班では、論文の方向性が固まった段階で分析をする人は分析だけ、政策提言を考える人は政策提言だけ、という風に分かれて作業をしていました。これが時間のない自分達にとって最も効率的な手段だと思っていました。しかし違いました。賞を獲っているのは皆、一つ一つ目の前の課題に全員で取り組み、あーでもない、こーでもないと言いながらあがいている
班でした。論文執筆はチームの作業です。「全員」で取り組むことを大切にした班が最後に笑い、私達はその難しさに悔しい思いをさせられました。社会に出れば、チームで取り組む仕事ばかりです。この経験とそこから学んだことを胸に刻み込み、これからを生きていこうと思います。

4. セネガル(論文②)魚谷航平

金光 崇志

【Cool Head,but Warm Heart.】
私は、零細企業の実態・雇用形態に関する研究に携わりました。調査対象者は企業の経営者や労働者であり、時には「なんで機密情報を門外漢に渡さないといけないんだ?」と言われることも…帰国後の作業では、「俺は日本に行けないけど、俺の情報は日本に行って役立てるんだ!」と言ってくれた少年をはじめ、大事な情報を提供してくださった方々の思いを無下にしないためにも、分析作業を正確かつ慎重に行うことを常に意識していました。
セネガルに行かなければ、決してすることのなかった体験が1つあります。それは、調査対象者のIDを見ると、現地での思い出が甦ってくるというものです。「3番の企業か、昼ごはんを振舞ってくれたところやな!」「5番の労働者は、ケガの質問をしたときに4本しか指のない手を見せてくれたよな…」調査を自らの手で行ったからこそ、その研究を完遂させる責任の重さを真に感じ、どんなに辛い作業でも耐えられたのではないかと思いました。
それは、私以外のチームメンバーにも共通した思いだったはずです。トライ&エラーの日々にイライラしつつも(エラーの量は、間違いなく私が最多でした…)、着実に論文を作り上げていきました。だからこそ、論文大会やJICAでの発表では、単なる成果だけではなく自分たちの思いも届けることができたのではないかと考えています。数えきれないほどの発表練習を繰り返した私達に本番で必要だったのは、原稿ではなく聴衆を見つめて「伝えきる」ことだけでした。
結局のところ、私がこの研究活動で学んだのは、「リアルな経験をすることをためらってはいけない」という当たり前の事実でした。どれほど世界がバーチャル化しても、その背景には必ず生身の「人」がいて、ありのままの「世界」がある。一連の活動でお世話になったすべての人に感謝することを忘れず、今後の人生を歩んでいきたいと思います。セネガルの真の発展を祈りつつ。

4. セネガル(論文③)金光崇志

佐藤 亜美

 私たちはセネガルで「途上国支援のあり方」について研究しました。私たちがこのテーマを選んだ理由は、先進国が行っている途上国支援のうち、途上国の人々の成長や自立を意識せずに、ただ物資や金銭を提供するだけの一方的な支援に疑問を持ったからです。このような支援では一時的な効果しか得られず、途上国の人々の本当の幸せには繋がらないと考えました。さらに支援を行っている先進国側も、途上国の人々の自立を意識していないがために、支援を行い続けなければなりません。よってこのような一方的な支援は、長期的な目で見た際に途上国の人々にとっても、先進国にとっても、一概に良いとは言えないのです。
 そこで私たちは、途上国の人々の成長や自立を意識した相互的な支援の有効性を提唱するために、論文を執筆しました。具体的には、農家の人々を対象に、雨や気温などによって変化することのない“能力”を向上させるための支援の効果を、一方的な支援と比較しました。論文執筆時は考えがまとまらず、難しいこともたくさんありました。それでも、私たちが途上国の人々のためにできることをしたい、という気持ちを持って論文を完成させることができました。結果、相互的な支援の有効性を実証することもできました。
 しかし有効性を論文で実証するだけでは、相互的な支援は増えません。そのため全国の論文大会に出場しました。ここでは賞を頂くことはできず、悔しい想いをしましたが、翌日はJICA本部で直接、支援を行っている方々に研究報告をすることができました。調査・論文執筆に協力してくださった方々に感謝の気持ちを持って、今後もこの研究をより良いものにしていきたいです。

4. セネガル(論文④)佐藤亜美