2024.04.24.
【久保ゼミ】8期生 ゼミ合宿 in 三重

久保ゼミ8期生は、2泊3日のゼミ合宿を3月24日から26日まで三重県で実施しました。目的は、三重県の多気郡で地方創生の一環として行われている、デジタル田園都市国家構想の取組である美村プロジェクトについて地方自治体と企業に聞き取りを行うことです。コロナ禍以降初めての開催ということもあり、手探りではありましたがゼミ生主体で計画、段取りを行いました。

 

1日目
 朝9時に集合した我々は2台の車に分かれて三重県の多気郡にある奥伊勢フォレストピアへと向かいました。途中で休憩を挟んでSAで食事をとりつつ移動し、道を間違えるなどの若干のトラブルはあったものの、無事目的地に到着しました。
 到着後は自由時間となり、温泉に入ったり、夕食の準備をしたりなど各々過ごし、18時30分に全員で集合して 分担して作った夕食を取りました。ハヤシライス、回鍋肉、シチューなどそれぞれが趣向を凝らした料理で、どれも美味しくいただきました。また、温泉は露天風呂などもあり、一日の移動の疲れを存分に癒すことができました。

2日目
 2日目は多気町の職員の方とDNP大日本印刷株式会社の方に美村プロジェクトを中心としたお話を聞くというこの合宿のメインイベントがありました。まず朝旅館を出て、多気町町役場に向かいました。役場では、多気町のデジタル戦略室担当のお二方にお話を伺いました。内容は大きく分けて以下の4項目をご説明いただきました。

多気町について
三重県のほぼ中央に位置し、県南部の交通の要衝である。食、工業、観光が盛んであり、ドラマ化されたレストランや工業団地、薬草を活用した観光施設などが存在する。

大型複合リゾート施設『VISON』について
2021年7月にオープンした三重県多気郡多気町に位置する「食と癒しのリゾート施設」。地方創生をテーマとし、宿泊施設や薬草湯、名産品を扱った店舗が存在する。また、地元フェアやコラボイベントも開催しており、VISONとともに周辺の観光地も一緒に盛り上げるようと働きかけている。伊勢~名古屋の上り線スマートインターチェンジに直結しており、現在は年間350万人が来場する施設である。

デジタル田園都市国家構想について
デジタル田園都市国家構想とは「デジタル実装を通じて地方が抱える課題を解決し、誰一人取り残されずすべての人がデジタル化のメリットを享受できる心豊かな暮らしを実現する」という構想である。1元々多気町ではスマートシティ構想を申請していたが採択されず、新たにデジタル田園都市国家構想が全国で始まったことから多気町でも実施された。令和3年度補正事業ではそのなかでもデータ連携基盤を活用した、複数のサービス実装を伴う取り組みのTYPE2データ連携基盤活用型が採択され、三重広域連携モデル事業が行われた。これは、DXの基盤となる共通地域ポータル、デジタル地域通貨、広域観光ポータルを使った継続的な発展を推進するものである。そして令和4年度補正事業ではカードの新規用途開拓かつ総合評価が優れている取組であるTYPE3マイナンバー高度利用型が採択され、美村-VISON―プロジェクトが実施された。多気町、大台町、明和町、度会町、紀北町を美村エリアとし、集客力のあるVISONを中心とした広域観光連携を行う取り組みである。全体最適された統合型デジタルプラットフォームを活用することでコストが抑えられ経済的メリットが大きくなると考えられている。

美村プロジェクトについて
三重県の一番大きな課題は人口減少であり、とくに南部地域の減少率が高くなっている。この状況を鑑みて、人の流れを作り、仕事を作ることが必要であるとされ、美村プロジェクトが発足した。5つの町が行政区域の枠を超えた広域連携とデジタル技術の社会実装によって生活者を中心とする新たな地方創生の取り組みであう。プロジェクトでは5つのデジタルサービスを実装し、その普及を図っている。運営の費用を5つの町で分割することによって負担を減らしている。現在プロジェクトの進捗は想定より到達が遅れており、今年度は新規事業を行うのではなくその普及に注力するということだ。また、すべての施策を5町すべてで行っているわけではないため、参加率を高めることも課題であるとされている。

 また、ゼミ生や久保教授が事前に用意してきた質問にも答えていただきました。お話を聞くことで、地方創生の取り組みやその難しさに触れることができました。


 多気町町役場を去った後、昼食を取り、三重明和インキュベーションセンターに向かいました。ここでは、DNP大日本印刷株式会社のモビリティ事業部に所属する方に、美村プロジェクトについて企業側からのお話を伺いました。残念ながらスケジュールの都合でオンラインでのお話となってしまいましたが、地方自治体とはまた違った視点で美村プロジェクトについてお話を聞くことができたので、より理解を深めることができたように思います。以下、一部ゼミ生の質問を抜粋して紹介します。

質問
・DNPはどうしてこのプロジェクトに参加したのか?
→地方創生に取り組む必要性を感じており、今後の知見を得るため。いきなり利益を上げることは難しいが、未来の当たり前を作ることを目標として取り組んでいる。現在は利益的な面で見ると厳しいが、知見の蓄積はできている状態である。

・他の地域で同じような取り組みを行っている所はあるのか?
→モビリティ事業部では菰野町、広島県廿日市市(スマートシティ構想)、沖縄県各所などで取り組みを行っている。

・積み重ねてきた知見が役に立ったことはあるのか?
→モビリティ事業部が他地方団体で得た知識が美村プロジェクトに利用された例もある。

・移住、定住に向けて行っている取組はあるか?
→現在日本の中で人口を取り合っている状態である。定住を増やすことは難しいため、関係人口を増やすことを目標としている。

・美村プロジェクトの今後の展望は?
→一旦活用に焦点を当てていく。3DXを自走させ、ふるさと納税、モビリティ事業などの収益化を推進する。データ連携基盤を構築し、都市のデータとも連携させていく。地域課題をマッチングしているかをしっかり検証し、シビアに向き合いながら何に対して向き合っていくかを考えていかなければならない。地域の企業、住民が自身でできるようにしていかねばならない。地方創生は他者に助けてもらって行うものではなく、自立して行っていくものである。DNPはそのための活動を行っていく。

 お話を聞いた後は、実際に大型複合リゾート施設『VISON』に訪れました。施設はかなり広く、宿泊施設や温泉、土産屋や屋台がありました。地方創生を謳っていることもあり、その内容も名産品を使ったスイーツや地酒、また野菜、果物、魚や肉などの生鮮食品も売られていました。ゼミ生もそれぞれ屋台のものを食べ、お土産を購入するなどして三重県の名産品を楽しんでいました。
 VISONを後にしたのち旅館に戻り、昨日と同じように分担して夕食を作りました。この日のメインはVISONで購入したマグロを使ったどんぶりでしたが、身が柔らかく非常に美味しかったため、あっという間になくなりました。2日目は三重県を存分に堪能した一日になりました。

 

3日目
 3日目はお世話になった旅館を後にし、伊勢へ向かいました。まずは全国神社の中心である伊勢神宮で参拝しました。弱雨が降っていて若干霧がかっていたこともあり、本殿付近はより神秘的に感じられました。参拝後は各々別れ、おかげ横丁など伊勢神宮周辺を観光しました。食べ歩きをしたり、お土産を購入したり、食事処に入ったりなど自由に過ごしていました。伊勢を去ったのち、帰路につきました。

 

 今回の合宿を通して、普段は知ることのできないゼミ生の様子を知ることができるとともに、地方創生という難しいテーマに取り組んでいる地方自治体や企業のお話を伺うことでその知見を広げることができたように思います。春学期からは卒業論文執筆に向けた活動が始まりますが、今回聞いたお話がその執筆の一助となっているゼミ生もいるかもしれません。親睦と学び、両方の部分で有意義であった合宿でした。

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1 内閣官房, デジタル田園都市国家構想  デジタル田園都市国家構想 (cas.go.jp)