2024.03.19.
2023年度 懸賞論文/龍象奨学金の選考結果と講評について
懸賞論文
選考 結果 |
部門 | 学生氏名 | 演習担当者 氏名 |
論文題目 | 論文題目(副題) |
入賞 | 個人執筆部門 | 砂原 優花 | 田村ゼミ | DAアルゴリズムを用いた保護猫・保護犬の里親との新たなマッチング方法の提案 | 殺処分数減少に向けて |
入賞 | 共同執筆部門 | 張 君豪 | 國枝ゼミ | A Fertility-Embedding Approach for Reforming the Pay-As-You-Go Pension System | |
浦 歆芸 | |||||
佳作 | 個人執筆部門 | 若原 綾音 | 國枝ゼミ | 公害と景気循環 | |
佳作 | 共同執筆部門 | 田中 洸平 | 栗田ゼミ | マダガスカル農村における貧困の実態 | 多次元貧困指数を用いた動学的分析 |
野田 皓子 | |||||
小川 奈々 | |||||
來女 木優 | |||||
楊井 健太郎 |
経済学部では、1985年から優れた研究を表彰するため、懸賞論文制度を設けている。本年度は、個人執筆部門に12本、共同執筆部門に15本、計27本の応募があった。昨年度の応募数16本から大幅に増加した。いずれの論文も学部での研究成果を盛り込んだ意欲的なものであった。選考委員会での審査の結果、個人執筆部門において入賞論文1本、佳作論文1本、共同執筆部門において入賞論文1本、佳作論文1本を選出した。以下では、各部門の入賞論文、佳作論文について簡単に講評する。
【個人執筆部門】
入賞論文である「DAアルゴリズムを用いた保護猫・保護犬の里親との新たなマッチング方法の提案」は、飼い主に放棄され里親が見つからずに殺処分されてしまう保護猫・保護犬を減らすために、猫・犬の保護団体と里親希望者を結びつける新たなマッチング方法を考察した論文である。現在の里親制度の問題点を統計や独自のアンケート調査によって明確にし、マッチング理論を用いて解決策を提示した本論文は、研究の独創性、論文の説得性の点で高く評価された。
佳作論文である「公害と景気循環」は、二期間の世代重複モデルに公害を導入した理論モデルを考え、公害がマクロ経済の景気循環にどのような影響を与えるかを分析した論文である。公害の負の影響を軽減する技術が発達すると、内生的景気循環が発生して経済が不安定化する可能性を示した本論文の結果は興味深いものであり、研究の独創性の点で高く評価された。
【共同執筆部門】
入賞論文である「A Fertility-Embedding Approach for Reforming the Pay-As-You-Go Pension System」は、出生率の実現値によって年金の受取額が変わるような賦課方式年金制度を導入した場合に、経済の資本蓄積、出生率にどのような影響が生じるかを分析した論文である。年金制度の新しいアイデアを組み込んだ本論文からは、興味深い政策的インプリケーションが提示されており、研究の独創性、問題意識の明確性の点で高く評価された。
佳作論文である「マダガスカル農村における貧困の実態」は、マダガスカルの農村に住む人々の生活状況を、人々の教育・健康・生活水準に着目した多次元貧困指数を用いて評価した論文である。人々の所得などに着目した伝統的な指標ではとらえきれない貧困の実態を新たな指標で明らかにした本論文は、論文の説得性の点で高く評価された。
(懸賞論文選考委員会委員長 秋吉史夫)
龍象奨学金
経済学研究科では、研究科在学者及び研究員の研究助成を目的として、龍象奨学金を設けている。本年度は1名の応募があり、選考委員会による論文審査の結果、奨学金支給を決定した。以下、当該論文について簡単に講評する。
藤田和輝「キャッシュフロー法人税の課税ベースの実証分析」は、日本で現行の法人所得課税制度に代わってキャッシュフロー法人税制度を導入した場合の効果を分析した論文である。具体的には、①キャッシュフロー法人税制度を導入した場合に、課税ベースはどのように変化するのか、②現在徴収している法人税収と同額の税収を確保しようとする場合、キャッシュフロー法人税負担率はどの程度になるのかを明らかにしようとしている。本論文は、先行研究では行われていないリーマンショックやコロナ禍の影響を考察し、課税ベース計測上の新たな工夫をするなど、当該研究分野での重要な貢献が高く評価された。
(龍象奨学金選考委員会委員長 秋吉史夫)