生命環境学部ビジョン 設置準備委員長より

藤原 伸介 (ふじわら しんすけ) 教授

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広島大学大学院生物圏科学研究科を修了。学術博士。
民間企業勤務後、イリノイ大学医学部研究員(免疫微生物学)などを経て、2002年に関西学院大学に奉職。
専門は微生物生化学、特殊環境微生物学、生物工学。

生命・環境分野で社会に貢献する人を育てる

生命環境と社会のかかわりを見つめなおす

生命科学系の研究はここ20年で急速に発展してきました。ノーベル賞の生理学・医学賞はもちろん、化学賞、物理学賞も何らかの形で生命科学に関係する研究が増えています。医療技術が進歩し、人々は長く生きられるようになりました。高齢化が進む社会の中で、人々が健康に生活するためにはどうしたらよいかが大きな問題になっています。また、私たちが快適で便利な生活を求め続けてきた結果、地球温暖化をはじめとする環境破壊などが起こり、生態系に大きな影響を与えています。現代社会は、人間の快適性や利便性の追求だけではなく、地球環境・生命環境と社会のかかわりを見つめなおす時期に来ているのだと思います。最先端医療の臨床技術は医学部で学べます。また、微生物や植物、その他の生物に関する応用技術を扱う農学部や工学部は数多く存在します。しかし、基礎研究に注力する教育機関は減りつつあるように感じます。前述した高齢化社会における健康的な生活、地球環境保全などを実現するためには、基礎研究の充実が欠かせません。本学の生命環境学部は、まさに先進医療や生命科学の基礎研究を担うことも目的にしています。

初年度は広く学ぶ。PBL教育にも注力

生命環境学部では、理学部・工学部・農学部・医学部で扱う内容を凝縮した学びを展開します。初年度は広く生命科学、基礎化学を中心に学びます。基本となる数学、化学、生物学は共通科目として学修。実験は入学直後から白衣を着て経験します。臨海実習では、磯生物の学習に加え、人工授精や発生過程の観察も経験します。将来研究でも必要になるデータ解析、機械学習などの基礎となる数学教育にも力を注ぎます。講義によってはアメリカ東海岸にある大学のテキストと同じものを使用します。入学時から専門性を特化させる学科もあれば、入学時には専攻を決めずに3年時に選べるようになっている学科もあります。PBL(Project-Based Learning)を数多く取り入れているのも大きな特徴です。海外PBL科目では、台湾での地層学習、イタリアで学ぶ西洋と東洋の発酵技術の違い、バリ島で経験するマングローブやサンゴ礁の保全活動、ジャワ島で学ぶ熱帯海洋生物学などがあります。国内PBL科目では「人と自然の博物館」(兵庫県三田市)と連携したプロジェクトで多彩なテーマ(恐竜の一種の但馬竜やコウノトリの生態、里山の生物多様性など)を設定しています。このほか3年生では「科学技術英語」の開講など英語教育を充実させる計画です。

変化の中、今進んでいる方向で物事を考える

「環境破壊を止めなければ!」という意見に異論を唱える人はいませんが、現実問題として温暖化を止めることはできません。また、一度破壊されると元に戻すのは困難です。環境問題では、保全技術とともに現在の状況に適合する技術を開発する必要があります。砂漠のような乾燥地でも栽培できる植物は必要になるでしょう。低エネルギー負荷の有機合成技術も重要になります。人間の生活を見ると、寿命が伸びる一方で認知症が大きな問題になっています。現在の医学では認知症の進行を止めることしかできません。認知症の人たちは年々増加していますが、介護する施設・人材の数は不足しています。今より早く診断する技術を構築し、施設に入らずに生活する手段を考えていかなければなりません。また、長寿であっても健康でなければ、本人が辛いだけでなく、医療費が増加してしまいます。「脂肪を燃焼しやすい」など、食品機能の研究も求められています。病気にならない食生活を実現し、それを普及していく食育の重要性も高まっています。このように地球環境や人々の生活、社会の在り方は大きく変化し続けており、今進んでいる方向で物事を考える必要があります。グリーン・イノベーション、ライフイノベーションは益々重要になってきます。この学部で学ぶ皆さんも、そのことを意識して、研究に臨んで欲しいと考えています。