[ 建築学部 ]教員紹介

照本 清峰
教授

近年、災害リスクを分析する技術は、未成熟ながらも進展してきている。一方で、社会的にそれらのリスク情報を活用していくための研究と実践活動は充分には進んでいない状況にある。また、自然災害に対する減災効果を高めるための空間システム・社会システムの設計思想、それらに基づく危機管理体制と支援方策についても十分には成り立っていない。自然現象による脅威と現状の都市環境・社会環境を鑑みると、個々の問題に対して効果的な対応方策を検討するとともに、それぞれの関連性を考慮した総合的な減災システムの構築、及びそれらに即した実践方法を開発することが望まれる。
上記のような問題意識に立脚して、中長期的な研究の射程として、都市・地域の空間システム・社会システムにおいて機能的な役割を果たす減災性能の指標と概念モデルの確立、及び実装可能な制度設計の構築を目指して研究活動を推進している。「都市・地域の減災性能に関する実践的アプローチを通じた方法論の構築」、「災害の復旧・復興過程と支援方策のあり方に関する研究」、「広域巨大災害に関する効果的な災害対応システムに関する研究」といった内容に特に関心がある。

専門領域:減災システム, 防災計画, 災害復興

気候変動に伴う気象災害、巨大地震による災害の危険性は、近年、社会的に着目されている。人間の住む社会では、地震、大雨等の自然現象による影響が大きい場合、被害を受ける可能性がある。これらの自然現象による災害を減らすことは現代社会の最重要課題の1つである。自然災害への対応方策として、建築物や都市の構造を強化することによって災害が発生したときの被害を軽減することとともに、災害が発生した場合に適切に対応できるようにする仕組みを持つことが求められる。そのためには、第1に、都市・地域の空間や社会の中に潜在している危険事象を抽出し、それらを除去したり改善したりするとともに、危険事象への対応を可能にする装置を設定することが重要である。第2には、災害発生後に効率的に対応できるようにするために、被災地域への緊急的な対応や被災環境の中にいる被災者の生活環境の改善、災害復興過程での被災地域の状況に即した支援施策等の仕組みを構築する必要がある。災害事象を事前から検討し、それらの事象に対して有効な対応のあり方を総合的に検討していくことを射程とした分野である。

研究テーマ:都市・地域の減災方策と災害対応・災害復興に関連する内容全般

都市・地域の防災・減災と災害対応・再建プロセスの枠組みを対象として研究を推進している。近年は、「コミュニティを基盤とした防災・減災活動に関する研究」、「南海トラフ地震の発生を見据えた津波避難対策の研究」、「災害復興過程と支援方策の関係に関する研究」、「広域巨大災害の災害対応に関する研究」等について、実践的な側面と理論的な側面の両面から進めている。都市・地域の災害発生後の対応過程を総合的に捉え、有効な支援方策と事前からの対応のあり方を検討することを念頭に置いている。住民参加型のワークショップ、災害対応の関係者等へのヒアリング調査、質問紙調査票を用いた社会調査、被災地域の調査、災害対応の訓練、統計資料をもとにした分析、GISを用いた空間分析等の方法によって、研究を実施している。

keywords

防災まちづくり、土地利用規制、観光地、復興プロセス、災害対応、都市・地域計画、津波避難、レジリエンス、ソーシャル・キャピタル、コミュニティ、災害情報

教育目標

教育目標の基本的な枠組みは、「自らの問題意識を持って問いをたて、課題に取り組めるようになること」、「問題の構造をより深く検討できるようにするための議論の素養を育むこと」、「調査・研究の推進をもとに論理的な思考能力を高めること」、である。それらによって現実にある問題の構造を深く考えられる素養を身につけるとともに、問題の解決方法を吟味するための応用力を獲得できるようにすることを目標としている。

担当科目

都市・農村計画、都市防災論、建築・都市演習、都市防災演習、建築学演習、卒業研究

研究風景/授業風景