[ 建築学部 ]教員紹介

石榑 督和
准教授

1986年岐阜市生まれ。2021年に東京から関西へと拠点を移し関西学院大学建築学部で歴史と理論を担当しています。
歴史研究としては主に20世紀の日本および東アジアを対象に都市史・建築史の研究をしています。特に災害時の都市空間の破壊と再生をテーマとし、単著『戦後東京と闇市 新宿・池袋・渋谷の形成過程と都市組織』では2020年日本建築学会著作賞を、三陸沿岸集落の形成と津波の関係を明らかにした共著『津波のあいだ、生きられた村』では2021年日本建築学会著作賞を受賞しています。
こうした歴史研究だけでなく、新しい建築・都市のデザインの動きにも注目し、共著『シェア空間の設計手法』や共著『PUBLIC PRODUCE 「公共的空間」をつくる7つの事例』などの書籍を上梓しています。他方で社会に実践的に関わるデザインの仕事もしてきました。
今後は歴史研究と都市デザインをつなげ、まちを変えていく試行錯誤をしていきたいと考えています。手始めに露店商としてまちに出ることから始めたいと思っています。

専門領域:建築歴史・意匠

建築歴史・意匠とは、建築・都市に関わる幅広い歴史と総合的な意匠(デザイン)およびそれらの理論を専門とする領域です。
建築史は「歴史」ですから過去を扱う学問です。過去というと、今を生きるみなさんには遠いものと感じるかもしれません。ただ考えてみてください。みなさんの目の前の風景はすべて過去につくられた事物で構成されています。つまり現在は過去の堆積と変化によって成り立っているのです。ではその過去の事物はどのようにして生まれ、それぞれに関わり、持続し、時に消失し、変容してきたのでしょうか。私はそのプロセスを読み解き、メカニズムを明らかにし、時間の「デザイン」として描き出すのが建築史だと考えています。
今、私たちがいる場所を明らかにし、未来を構想する建築学の基盤となるのが建築歴史・意匠という領域です。

研究テーマ:生成と空想の空間史

私は「生成と空想の空間史」をテーマに建築史・都市史、そしてそれに関わる理論を研究しています。
「生成」的な世界とは、人々が集合的に蓄積してきた知を無意識に表現することで立ち現れ、持続している世界です。この視点はアノニマスな世界を中心的な対象にしています。
「空想」とは、個人が描き出すイメージ、思想、理論、構想などです。世界の物的環境の多くは「生成」的につくられていきますが、個人が考えた「空想」がそうした世界を変えていくことも少なくありません。建築の文脈で言えば、こちらに建築家が位置づきます。
我々が目の前にしている環境は、この視点をベースに読み解いていくことができます。近代以降、「生成」的世界に響きうる「空想」を描いた建築家が時間を生き抜いてきました。
特に私が研究上注目しているのは「生成」的な環境形成です。そこでは「建物類型と都市組織」と「市場」に注目しています。研究室では、学生・院生のみなさんとともに具体的なフィールドで研究プロジェクトを立ち上げ、論文だけではないアウトプットを制作していきます。

keywords

建築史、都市史、意匠論、都市デザイン

教育目標

建築史は建築に関わる歴史上の事物を暗記する学問ではありません。「時空間」を描くために史資料を読み解き、実際の建物や都市空間を実測・図面化し、聞き取り調査をして地道に素材を集め、それをどうやって編むかを考え、記述していく学問です。集めた素材も一元的な意味しかないものではなく、多様な解釈が可能なものたちです。学生・院生のみなさんとともに記録し、史資料を読み解き、いかに描くことができるか一緒に考えていきたいと思っています。

担当科目

日本建築史・西洋建築史・近代建築史など

研究風景/授業風景