あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約 (人種差別撤廃条約) (その二)

[ 編集者:人権教育研究室       2009年3月20日 更新 ]

第二部

第八条(人種差別撤廃委員会の構成及び委員の選出と任期) 1 締約国により締約国の国民の中から選出される徳望が高く、かつ、公平と認められる十八人の専門家で構成する人種差別の撤廃に関する委員会(以下「委員会」という。)を設置する。委員会の委員は、個人の資格で職務を遂行する。その選出に当たっては、委員の配分が地理的に衡平に行われること並びに異なる文明形態及び主要な法体系が代表されることを考慮に入れる。
2 委員会の委員は、締約国により指名された者の名簿の中から秘密投票により選出される。各締約国は、自国民の中から一人を指名することができる。
3 委員会の委員の最初の選挙は、この条約の効力発生の日の後六箇月を経過した時に行う。国際連合事務総長は、委員会の委員の選挙の日の遅くとも三箇月前までに、締約国に対し、自国が指名する者の氏名を二箇月以内に提出するよう書簡で要請する。同事務総長は、指名された者のアルファベット順による名簿(これらの者を指名した締約国名を表示した名簿とする。)を作成し、締約国に送付する。
4 委員会の委員の選挙は、国際連合事務総長により国際連合本部に招集される締約国の会合において行う。この会合は、締約国の三分の二をもって定足数とする。この会合においては、出席しかつ投票する締約国の代表によって投じられた票の最多数で、かつ、過半数の票を得た指名された者をもって委員会に選出された委員とする。
5(a) 委員会の委員は、四年の任期で選出される。ただし、最初の選挙において選出された委員のうち九人の委員の任期は、二年で終了するものとし、これらの九人の委員は、最初の選挙の後直ちに、委員会の委員長によりくじ引きで選ばれる。
(b) 締約国は、自国の専門家が委員会の委員としての職務を遂行することができなくなった場合には、その空席を補充するため、委員会の承認を条件として自国民の中から他の専門家を任命する。
6 締約国は、委員会の委員が委員会の任務を遂行している間、当該委員に係る経費について責任を負う。
第九条(当事国の報告と委員会による審議)
1 締約国は、次の場合に、この条約の諸規定の実現のためにとった立法上、司法上、行政上その他の措置に関する報告を、委員会による検討のため、国際連合事務総長に提出することを約束する。
(a) 当該締約国についてこの条約が効力を生ずる時から一年以内
(b) その後は二年ごとに、更には委員会が要請するとき。
委員会は、追加の情報を締約国に要請することができる。
2 委員会は、その活動につき国際連合事務総長を通じて毎年国際連合総会に報告するものとし、また、締約国から得た報告及び情報の検討に基づく提案及び一般的な性格を有する勧告を行うことができる。これらの提案及び一般的な性格を有する勧告は、締約国から意見がある場合にはその意見と共に、総会に報告する。

第十条(委員会の運営) 1 委員会は、手続規則を採択する。
2 委員会は、役員を二年の任期で選出する。
3 委員会の事務局は、国際連合事務総長が提供する。
4 委員会の会合は、原則として、国際連合本部において開催する。
第十一条(当事国の義務不履行と委員会の審議権) 1 締約国は、他の締約国がこの条約の諸規定を実現していないと認める場合には、その事案につき委員会の注意を喚起することができる。委員会は、その通知を関係締約国に送付する。当該通知を受領する国は、三箇月以内に、当該事案について及び、当該国がとった救済措置がある場合には、当該救済措置についての書面による説明又は声明を委員会に提出する。
2 最初の通知の受領の後六箇月以内に当該事案が二国間交渉又は当事国にとって可能な他のいかなる手続によっても当事国の双方の満足するように調整されない場合には、いずれの一方の締約国も、委員会及び他方の締約国に通告することにより当該事案を再び委員会に付託する権利を有する。
3 委員会は、2の規定により委員会に付託された事案について利用し得るすべての国内的な救済措置がとられかつ尽くされたことを確認した後に、一般的に認められた国際法の原則に従って、当該事案を取り扱う。ただし、救済措置の実施が不当に遅延する場合は、この限りでない。
4 委員会は、付託されたいずれの事案についても、関係締約国に対し、他のあらゆる関連情報を提供するよう要請することができる。
5 この条の規定から生ずるいずれかの事案が委員会により検討されている場合には、関係締約国は、当該事案が検討されている間、投票権なしで委員会の議事に参加する代表を派遣する権利を有する。

第十二条(特別調停委員会の構成と委員の選挙) 1(a) 委員長は、委員会が必要と認めるすべての情報を入手し、かつ、取りまとめた後、五人の者(委員会の委員であるか否かを問わない。)から成る特別調停委員会(以下「調停委員会」という。)を設置する。調停委員会の委員は、すべての紛争当事国の同意を得て任命するものとし、調停委員会は、この条約の尊重を基礎として事案を友好的に解決するため、関係国に対してあっせんを行う。
(b) 調停委員会の構成について三箇月以内に紛争当事国が合意に達しない場合には、合意が得られない調停委員会の委員については、委員会の秘密投票により、三分の二以上の多数による議決で、委員会の委員の中から選出する。
2 調停委員会の委員は、個人の資格で、職務を遂行する。委員は、紛争当事国の国民又はこの条約の締約国でない国の国民であってはならない。
3 調停委員会は、委員長を選出し、及び手続規則を採択する。
4 調停委員会の会合は、原則として、国際連合本部又は調停委員会が決定する他の適当な場所において開催する。
5 第十条3の規定により提供される事務局は、締約国間の紛争のために調停委員会が設けられた場合には、調停委員会に対しても役務を提供する。
6 紛争当事国は、国際連合事務総長が作成する見積りに従って、調停委員会の委員に係るすべての経費を平等に分担する。
7 国際連合事務総長は、必要なときは、6の規定による紛争当事国の経費の分担に先立って調停委員会の委員の経費を支払う権限を有する。
8 委員会が入手し、かつ、取りまとめる情報は、調停委員会の利用に供しなければならず、また、調停委員会は、関係国に対し、他のあらゆる関連情報を提供するよう要請することができる。
第十三条(特別委員会の調停活動) 1 調停委員会は、事案を十分に検討した後、当事国間の係争問題に係るすべての事実関係についての調査結果を記載し、かつ、紛争の友好的な解決のために適当と認める勧告を付した報告を作成し、委員会の委員長に提出する。
2 委員会の委員長は、調停委員会の報告を各紛争当事国に通知する。これらの紛争当事国は、三箇月以内に、委員会の委員長に対し、調停委員会の報告に付されている勧告を受諾するか否かを通知する。
3 委員会の委員長は、2に定める期間の後、調停委員会の報告及び関係締約国の意図の表明を、他の締約国に通知する。

第十四条(個人及び集団の申立と委員会の権限) 1 締約国は、この条約に定めるいずれかの権利の当該締約国による侵害の被害者であると主張する当該締約国の管轄の下にある個人又は集団からの通報を、委員会が受理しかつ検討する権限を有することを認める旨を、いつでも宣言することができる。委員会は、宣言を行っていない締約国についての通報を受理してはならない。
2 1に規定する宣言を行う締約国は、その管轄の下にある個人又は集団であって、この条約に定めるいずれかの権利の侵害の被害者であると主張し、かつ、他の利用し得る国内的な救済措置を尽くしたものからの請願を受理しかつ検討する権限を有する機関を、国内の法制度の枠内に設置し又は指定することができる。
3 1の規定に基づいて行われた宣言及び2の規定に基づいて設置され又は指定される機関の名称は、関係締約国が国際連合事務総長に寄託するものとし、同事務総長は、その写しを他の締約国に送付する。宣言は、同事務総長に対する通告によりいつでも撤回することができる。ただし、その撤回は、委員会で検討中の通報に影響を及ぼすものではない。
4 2の規定に基づいて設置され又は指定される機関は、請願の登録簿を保管するものとし、登録簿の証明された謄本は、その内容が公開されないとの了解の下に、適当な経路を通じて毎年国際連合事務総長に提出する。
5 請願者は、2の規定に基づいて設置され又は指定される機関から満足な結果が得られない場合には、その事案を六箇月以内に委員会に通報する権利を有する。
6(a) 委員会は、付託されたいずれの通報についても、この条約のいずれかの規定に違反していると申し立てられている締約国の注意を内密に喚起する。ただし、関係のある個人又は集団の身元関係事項は、当該個人又は集団の明示の同意なしに明らかにしてはならない。委員会は、匿名の通報を受領してはならない。
(b) 注意を喚起された国は、三箇月以内に、当該事案について及び、当該国がとった救済措置がある場合には、当該救済措置についての書面による説明又は声明を委員会に提出する。
7(a)  委員会は、関係締約国及び請願者により委員会の利用に供されたすべての情報に照らして通報を検討する。委員会は、請願者が利用し得るすべての国内的な救済措置を尽くしたことを確認しない限り、請願者からのいかなる通報も検討してはならない。ただし、救済措置の実施が不当に遅延する場合は、この限りでない。
(b) 委員会は、提案及び勧告をする場合には、これらを関係締約国及び請願者に送付する。
8 委員会は、通報の概要並びに、適当なときは、関係締約国の書面による説明及び声明の概要並びに当該委員会の提案及び勧告の概要を、その年次報告に記載する。
9 委員会は、少なくとも十の締約国が1の規定に基づいて行った宣言に拘束される場合にのみ、この条に規定する任務を遂行する権限を有する。

第十五条(他の国際文書が認める個人の請願権) 1 この条約の規定は、千九百六十年十二月十四日の植民地及びその人民に対する独立の付与に関する宣言(国際連合総会決議第千五百十四号(第十五回会期))の目的が達成されるまでの間、他の国際文書又は国際連合及びその専門機関により当該人民に付与された請願の権利を何ら制限するものではない。
2(a) 国際連合の諸機関が、信託統治地域及び非自治地域並びに国際連合総会決議第千五百十四号(第十五回会期)が適用される他のすべての地域の住民からの請願であって、この条約の対象とする事項に関連するものを検討するに当たって、この条約の原則及び目的に直接関連する事項を取り扱っている場合には、第八条1の規定に基づいて設置される委員会は、当該請願の写しを受領し、これらの機関に対し、当該請願に関する意見の表明及び勧告を提出する。
(b) 委員会は、(a)に規定する地域内において施政国により適用されるこの条約の原則及び目的に直接関連する立法上、司法上、行政上その他の措置についての報告の写しを国際連合の権限のある機関から受領し、これらの機関に対し、意見を表明し及び勧告を行う。
3 委員会は、国際連合の諸機関から受領した請願及び報告の概要並びに当該請願及び報告に関連する委員会の意見の表明及び勧告を、国際連合総会に対する報告に記載する。
4 委員会は、国際連合事務総長に対し、2(a)に規定する地域について、この条約の目的に関連しかつ同事務総長が入手し得るすべての情報を要求する。
第十六条(他の国際文書による紛争又は苦情の解決) 紛争又は苦情の解決に関するこの条約の規定は、国際連合及びその専門機関の基本文書又は国際連合及びその専門機関により採択された条約に定める差別の分野における紛争又は苦情の解決のための他の手続を妨げることなく適用するものとし、締約国の間で効力を有する一般的な又は特別の国際取極による紛争の解決のため、締約国が他の手続を利用することを妨げるものではない。

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