過去のオープンセミナー(公開講座)

2024年度 前期オープンセミナー ※募集終了しております

 

 西宮上ケ原キャンパス講座 [西宮市・宝塚市教育委員会 後援]

Ⅰ. シリーズ名:乳幼児の発達心理と保育・子育て支援
 □定員400名 ※定員になり次第締め切ります(先着順)

開催日時

テーマ・講師

場所
5月25日(土)
10:00~12:00

乳幼児の心の発達の不思議を読み解く
〇講師:橋本 祐子(教育学部教授)

関西学院大学
西宮上ケ原キャンパス
[B号館(予定)]
6月8日(土)
10:00~12:00

ヒトの育ちの特殊性と笑いの発達ーチンパンジーとの比較からー
〇講師:松阪 崇久(教育学部准教授)

6月22日(土)
10:00~12:00
スウェーデンの保育と子育て支援
〇講師:吉次 豊見(教育学部助教)
※講義概要・講師プロフィールの詳細はクリックしてください。
〇 橋本 祐子  講師(乳幼児の心の発達の不思議を読み解く)                                    ■講義概要・プロフィール■

○講義概要
 私たちは身近にいる子どもの「心」をどれぐらい理解できているでしょうか。発達心理学では、言葉でのコミュニケーションがまだ十分でない赤ちゃんや幼児の心の不思議を読み解くために、それぞれの時期の発達的特徴と変化を科学的に探究しています。乳幼児期の子どもは未熟でできないことばかりだと思われがちですが、人との関わりの中で驚くべき能力を発揮しています。本講義では、乳幼児の心を解明する発達研究における独創的な研究方法を紹介しながら、善悪やフェアネス(公平性)を判断する道徳性の発達を中心にお話しします。自分の行動の善し悪しや、公平な資源・報酬の分け方について、子どもの理解がどのように発達するのか、他者の行為の善悪を評価する原初的な道徳的感受性が乳児期から見られるという最近の知見も含めて説明します。また、乳幼児の心を理解することが専門性の一つである幼児教育・保育の実践に発達心理学の研究がどうつながるのかについても解説します。

○参考文献
・長谷川真里(2018)『子どもは善悪をどのように理解するのか?:道徳性発達の探究』ちとせプレス
 

○橋本 祐子(はしもと ゆうこ)
関西学院大学教育学部教授。
専門は発達心理学、幼児教育。ヒューストン大学大学院に留学後、ノーザンアイオワ大学博士課程を修了し、博士(教育学)を取得。聖和大学教育学部准教授を経て、2009年より関西学院大学教育学部准教授、2013年より現職。

〇 松阪 崇久  講師(ヒトの育ちの特殊性と笑いの発達 ーチンパンジーとの比較からー)     ■講義概要・プロフィール■   

○講義概要
 子育て家庭を取り巻く環境が大きく変化してきていることに伴って、育児におけるさまざまな困難や悩みも大きくなっています。このセミナーでは、ヒトの子どもの育ちにはどのような特徴があるのか、ヒトにもっとも近い動物であるチンパンジーとの比較から考えます。また、ヒトの育ちの中で「笑い」がもつ意味にも注目します。生物としてのヒトの特殊性を確認することを通して、現代の日本社会における育児の課題や保育・子育て支援について考えたいと思います。

○参考文献
・松阪崇久「笑いの起源と進化」心理学評論51巻3号431-446ページ(2008年)
・松阪崇久「新生児・乳児の笑いの発達と進化」笑い学研究20号17-31ページ(2013年)
・松阪崇久「ショーやテレビに出演するチンパンジー・パンくんの笑いと負の感情表出」笑い学研究25号90-106ページ(2018年)
・松阪崇久「第9章 ヒトの子どもはなぜ遊ぶ?:遊びの進化と大人の役割」『ワークで学ぶ発達と教育の心理学』129-144ページ(竹尾和子・井藤元 編)ナカニシヤ出版(2020年)
・松阪崇久「笑う」『進化でわかる人間行動の事典』247-253ページ(小田亮・橋彌和秀・大坪庸介・平石界 編)朝倉書店(2021年)

〇松阪 崇久(まつさか たかひさ)
関西学院大学教育学部准教授。
京都大学大学院理学研究科修了。博士(理学)。専門は霊長類学、発達心理学、保育学。タンザニアの野生チンパンジーの観察を基に、ヒトとチンパンジーの乳幼児の行動の比較研究をおこなっている。(財)日本モンキーセンター・特別研究員、京都大学霊長類研究所・非常勤研究員、関西大学人間健康学部・助教などを経て、2021年4月より現職。日本笑い学会副会長。IPA(子どもの遊ぶ権利のための国際協会)日本支部副代表。

〇 吉次 豊見  講師(スウェーデンの保育と子育て支援)                                                 ■講義概要・プロフィール■

○講義概要
 SDGs達成度ランキングで上位に位置するスウェーデンは、男女平等の子育て支援先進国としても注目される国の一つです。そしてスウェーデンの保育施設はförskolaという名称で幼稚園・保育所の機能が一体化され、その管轄も教育省に統一されています。それは保育を必要とする子どもと子育て中の保護者への福祉的支援だけではなく、全ての子どもに等しく就学前教育を担保する教育的役割も担っているためです。 子どもの人権尊重・民主主義という理念が浸透しているスウェーデンの保育システム、そして子育て支援の実践から、「子どもが主体として育つ場」とはどのようなものか、ぜひ考えていきましょう。

○参考文献
•吉次豊見(2020) スウェーデンの就学前学校förskolaにおけるinskolningとは : 「慣らし保育」という概念からの転換,保育学研究58巻2号.pp339-350
•久山葉子 (2019) 『スウェーデンの保育園に待機児童はいない 移住して分かった子育てに優しい社会の暮らし』 東京創元社
•白石淑江・水野恵子(2013)『スウェーデン 保育の今―テーマ活動とドキュメンテーション』 かもがわ出版

〇吉次 豊見(よしつぐ とよみ)
関西学院大学 教育学部助教。
修士(学校教育学)。専門は保育学、発達心理学。
大学卒業後、公立幼稚園教諭として勤務。湊川短期大学、大阪成蹊大学准教授を経て2022年4月より現職。子どもの主体としての心の形成に関する研究と、スウェーデンの保育・子育て支援の研究を行っている。

 神戸三田キャンパス講座 [三田市 共催] 

Ⅱ. シリーズ名:シン・宇宙を観る 
 □定員180名 ※定員になり次第締め切ります(先着順)

開催日時

テーマ・講師

場所
6月1日(土)
10:30~12:30

電波で観る星々の誕生 
〇講師:瀬田 益道(理学部教授)                      

三田キッピ―モール6F
三田市まちづくり協働センター
多目的ホール

6月29日(土)
10:30~12:30

赤外線で探る星々の起源                                     
〇講師:松浦 周二(理学部教授)

7月13日(土)
10:30~12:30
X線で観る星々の終焉 
〇講師:平賀 純子(理学部教授)
※講義概要・講師プロフィールの詳細はクリックしてください。
〇 瀬田 益道  講師(電波で観る星々の誕生)                                           ■講義概要・プロフィール■

○講義概要
 夜空を眺めると星と星の間は真っ暗ですが、星と星の間には星間物質があります。星間物質はガスとダストから成り、可視光では見えませんが、電波では明るく輝いています。星間物質の中でも、比較的密度が高く低温な領域は分子雲と呼ばれています。星は永遠に輝き続けているわけではなく、星はいまでも生まれており重さに応じた死を迎えます。重い星は最期に超新星爆発を起こし、とても明るく輝きます。分子雲は星が生まれる場所です。分子雲から星が生まれる過程と、誕生した星が周りの星間物質に及ぼす影響を解説します。

○参考文献
 ・宇宙科学入門、尾崎洋二、東京大学出版会

○瀬田 益道(せた ますみち)
関西学院大学 理学部 物理・宇宙学科 教授
東京大学大学院理学系研究科博士課程修了 博士(理学)。ケルン大学、郵政省通信総合研究所、筑波大学を経て、2015年より現職。星間物質の構造と進化の観測的研究と、南極に電波天文台を開設する研究を推進している。

〇 松浦 周二  講師(赤外線で探る星々の起源)                                           ■講義概要・プロフィール■

○講義概要
 宇宙はビッグバンという大爆発ではじまり、その勢いのまま現在も膨張を続けていると考えられています。宇宙で最初に誕生した星やブラックホールが発した紫外線や可視光は宇宙が膨張するにつれて波長が長くなり、現在の地球に届くときには目では見えない赤外線になります。そのような宇宙初期の天体は個別には暗すぎて捉えることが難しいため、私たちはそれらをまとめて天空に広がる「宇宙背景放射」として観測することを試みています。微弱な赤外線を捉えるにはロケットで大気圏外へ出たりマイナス200℃近くまで冷却した特別な望遠鏡を作る必要があります。このような技術課題に対し学生さんたちと格闘しながら行なってきた宇宙背景放射の研究成果や将来計画を含め、赤外線による宇宙観測の世界を紹介します。

○参考文献
・宇宙物理学ハンドブック 2章 2.8.10「可視赤外背景放射(松浦周二)」高原文郎ほか 編,朝倉書店 2019年
・パリティ 2010年5月号 Vol.25, No.5, 特集「あかり」衛星による最新成果 松浦周二,中川貴雄 編
・天文月報 2019年5月号 Vol.112, No.5, EUREKA「究極の天文観測の実現を目指す惑星間宇宙望遠鏡」津村耕司,松浦周二
・月と窓 「惑星探査機に積んだ望遠鏡で宇宙の歴史に迫る(松浦周二)」関西学院 編著 2023年


〇松浦 周二(まつうら しゅうじ)
関西学院大学理学部教授
名古屋大学大学院にて博士(理学)学位取得後、文部省宇宙科学研究所、郵政省通信総合研究所、カリフォルニア工科大学を経たのち、JAXA宇宙科学研究所にて15年間勤務し、赤外線天文衛星「あかり」、小惑星探査機「はやぶさ2」、ソーラー電力セイル探査機などの宇宙観測・探査計画に従事しました。現職に着任した後は、NASAの観測ロケット実験、JAXAの小型衛星や探査機により可視光や赤外線の宇宙背景放射を観測し宇宙初期を探るプロジェクトのほか、神戸三田キャンパスⅧ号館屋上望遠鏡による天体観測や機器開発など、学生さんたちが主役になれる小さな計画を精力的に進めています。
 

〇 平賀 純子  講師(X線で観る星々の終焉)                                                  ■講義概要・プロフィール■

○講義概要
 宇宙のどこかで生まれた星は、やがてその一生を終えるときを迎えます。このとき質量が大きい星は大爆発を起こします。超新星爆発と言われ、急に明るい天体が出現するため特異な天体現象として古くから知られていました。爆発によって、星の内部で創られてきた様々な元素がようやく宇宙空間にばら撒かれ、次の世代の星の材料を提供します。超新星の閃光は間もなく暗く観えなくなりますが、宇宙空間に広がっていく様子は数千年にわたってX線で明るく輝きます。これを超新星残骸といいます。星の死が残した痕跡から、私たち人間や地球を作り上げた様々な元素の起源を探っていきましょう。また、宇宙から降り注ぐ目には見えないX線をどうやったら観測できるのかについても考えてみましょう。

○参考文献
・シリーズ現代の天文学17 宇宙の観測3(日本評論社)
・シリーズ現代の天文学3 恒星(日本評論社)

〇平賀 純子(ひらが じゅんこ)
関西学院大学 理学部 物理・宇宙学科教授
専門はX線天文学。超新星残骸のX線観測や宇宙機搭載用X線センサーの開発研究に従事。

2023年度 秋季オープンセミナー ※募集終了しております

 西宮上ケ原キャンパス講座 [西宮市・宝塚市教育委員会 後援]

Ⅰ. シリーズ名:都市・地域の環境と社会生活への影響

開催日時

テーマ・講師

場所
10月28日(土)
10:00~12:00

私たちの暮らしと音環境
〇講師:宮川 雅充(総合政策学部教授)

関西学院大学
西宮上ケ原キャンパス
11月25日(土)
10:00~12:00

環境経済学の視点で学ぶ「大都市江戸」の都市環境  
〇講師:朴 勝俊(総合政策学部教授)

12月09日(土)
10:00~12:00
水素社会の実現にむけて -燃料電池自動車は普及するのか?-
〇講師:西立野 修平(総合政策学部教授)
※講義概要・講師プロフィールの詳細はクリックしてください。
〇 宮川 雅充  講師(私たちの暮らしと音環境)                                                 ■講義概要・プロフィール■

○講義概要
 音は、日常生活において、私たちにたくさんの情報を与えてくれます。しかし、その一方で、あらゆる音は騒音源にもなりえます。本講義では、私たちの暮らしと音環境の関わりを考えます。具体的には、音の性質、音や騒音の評価方法について説明します。さらに、音(騒音)が人々に与える影響について国内外の研究知見を紹介しながら、騒音政策のあり方について皆さんと考えたいと思います。
 

○宮川 雅充(みやかわ まさみつ)
関西学院大学総合政策学部教授。
京都大学大学院工学研究科環境工学専攻博士後期課程修了。博士(工学)。
専門は環境衛生学。健康やQuality of Life(QOL)に注目した研究に従事。

〇 朴 勝俊  講師(環境経済学の視点で学ぶ「大都市江戸」の都市環境)                   ■講義概要・プロフィール■   

○講義概要
 18~19世紀に100万人もの人口を抱えた東洋の大都市・江戸は、同時代のロンドンやパリなどの西洋の大都市と比べても、清潔な都市環境が維持されていました。それは、日本を訪れた西洋人たちが驚きをもって記録しています。なかでも注目すべきは河川の水の清浄さで、隅田川の河口では白魚漁が行われていたほどでした。その最大の理由は、都市に住む人々の排泄物が近郊の農家たちに「下肥」という肥料として利用されていたことでした。お百姓さんたちは、下肥を。見方を変えれば、トイレをきれいにしてもらう側が、おカネをもらっていたのです。下肥の値段はある時期にあまりにも高くなりすぎ、18世紀半に江戸の近隣の農家たちが団結して「値下げ」の嘆願書を出したり、大規模な「ストライキ」の圧力をもって交渉したりしたほどでした。汚物に過ぎない排泄物に値段がつくようになったのはいつごろからでしょうか? そしてなぜなのでしょうか? こうした点について、資料研究の成果を紹介し、環境経済学の観点から検討を加えます。また、下肥以外にも、さまざまなゴミが適正に埋め立て所に運ばれたり、リサイクルされたりするようになったことが、江戸の清潔さをたもった重要な要素ですが、こうした様々な興味深い事実についても説明をいたします。

○参考文献
石川英輔(2000)『大江戸えころじー事情』講談社
石川英輔(1997)『大江戸リサイクル事情』講談社文庫
鬼頭宏(2002)『環境先進国・江戸』PHP新書
近世資料研究会編(1994~2006)『江戸町触集成(第1巻~第20巻)』塙書房
渡辺善次郎(1983)『都市と農村の間―都市近郊農業史論―』論創社

〇朴 勝俊(ぱく すんじゅん)
関西学院大学総合政策学部教授。
1974年大阪生まれ。博士・経済学。専門は環境経済学、環境政策。神戸大学大学院経済学研究科修了後、2002年度から京都産業大学経済学部勤務。2010年度より関西学院大学総合政策学部准教授、2014年度より同教授。

〇 西立野 修平  講師(水素社会の実現に向けて)                                                 ■講義概要・プロフィール■

○講義概要
 2015年12月、パリ協定が採択され、日本を含む180カ国が批准した。パリ協定は世界共通の長期目標として以下の二つを掲げた:
- 世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて1.5~2℃に抑える努力をする
- そのため、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と、森林などによる吸収量のバランスをとる
この目標を実現する為に、全ての協定参加国は、2020年以降の温室効果ガス削減・抑制目標を定め、長期的な計画・戦略を作成し提出するよう努力することが求められた。日本では、2020年10月に菅前総理大臣が、「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すこと」を宣言した。こうした中、脱炭素社会の実現に向けた切り札として、“水素”が注目されている。このセミナーでは、モビリティ分野に焦点を当て、水素で走る燃料電池自動車について概観する。具体的には、燃料電池自動車の普及の現状とさらなる普及に向けた課題及び政府の取組を紹介し、その後、主要な課題の一つである水素ステーションの整備の費用対効果を検証する。

○参考文献
今村雅人著「図解入門ビジネス 水素エネルギーの仕組みと動向がよ~くわかる本」(秀和システム、2022年)
再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議「水素基本戦略」(2023年6月6日)
水素・燃料電池戦略協議会「水素・燃料電池戦略ロードマップ~水素社会の実現に向けた取組の加速~」(2016年3月22日)

〇西立野 修平(にしたての しゅうへい)
関西学院大学総合政策学部教授。
独立行政法人経済産業研究所リサーチアソシエイト。
1981年宮崎県生まれ。2011年Crawford School of Public Policy, Australian National UniversityにてPh.D.(学術)を取得。その後、経済産業省を経て、2014年4月に関西学院大学総合政策学部に着任。2023年4月より現職。データ分析を通して公共政策を定量的に評価する研究を行っている。

 神戸三田キャンパス講座 [三田市 共催] 

Ⅱ. シリーズ名:これからつくる地域共生社会を考える 

開催日時

テーマ・講師

場所
10月21日(土)
10:30~12:30

男はつらいよ -ジェンダ-の視点からみる生きづらさの背景-
〇講師:今井 小の実(人間福祉学部教授)                      

三田キッピ―モール6F
三田市まちづくり協働センター

11月04日(土)
10:30~12:30

地域共生社会をつくる地域福祉とは -セーフティネットと参加のしくみづくり-                                    
〇講師:藤井 博志(人間福祉学部教授)

11月11日(土)
10:30~12:30
地域共生社会をつくる市民と福祉専門職の活動 -三田市の地域福祉活動の実際-
〇講師:藤井 博志(人間福祉学部教授)
※講義概要・講師プロフィールの詳細はクリックしてください。
〇 今井 小の実  講師(男はつらいよ)                                           ■講義概要・プロフィール■

○講義概要
 これまでジェンダー問題で社会的に注目を集めてきたのは、女性問題が主であった。しかしジェンダーが社会的文化的につくられた性差なら、生物学的に男性として生まれた「男」たちにもそれによって生じる生きづらさがあるはずである。たとえば働く世代の男性は、「過労死等に係る労災認定事案」において脳・心臓疾患、精神障害が女性に比べて圧倒的に多いことは、「男は仕事、女は家事・育児」というジェンダー規範が働く男性を追い詰めている証左の一つといえる。また介護問題に直面した男性が、生命を奪うような深刻な高齢者虐待を行ってしまう事例も、「甘えられない」「頼れない」といった「男らしさ」の規範が誰にも相談できないような状況をつくり、一層彼らを追い詰めることが一因にあるのではないだろうか。
本セミナ―では、現在の男性が抱える問題がジェンダーによってもたらされたものであることを明らかにし、そのような規範がどのようにして強化されたのか、家庭や学校、会社、社会という場面から探り、その背景を考える。これらの学びにより、ジェンダー規範が女性だけでなく男性にとっても生きづらい社会を招来することを深く理解し、男女共同参画社会の実現を進める一助になることを期待したい。

○参考文献
 伊藤公雄(2009)「男性学・男性性研究の過去・現在・未来」(天野正子編ほか『新編 日本のフェミニズム12 男性学』岩波書店,)
 多賀太(2006)「男らしさの社会学-揺らぐ男のライフコース-」世界思想社
 中村正(2019)「暴力の遍在と偏在―その男の暴力なのか、それとも男たちの暴力性なのか」,
         特集「「男性学」の現在-〈男〉というジェンダーのゆくえ-」『現代思想』,青土社,2019年2月号,vol.47-2,ほか同特集論文
 今井小の実「社会福祉とジェンダー」山田知子編著『社会福祉-新しい地平を拓く(’22)』放送大学印刷教材

○今井 小の実(いまい このみ)
関西学院大学人間福祉学部教授。
大学卒業後、一般企業就職、出産後退職、専業主婦を経て、1995年同志社大学大学院[文学研究科社会福祉学専攻]へ進学、2000年同研究科満期退学。同年大阪体育大学短期大学部専任講師として着任。2003年博士号取得。2006年日本社会福祉学会学術賞受賞(『社会福祉思想としての母性保護論争-“差異”をめぐる運動史-』2005.7 ドメス出版)。2008年より関西学院大学人間福祉学部准教授就任。2010年より現職。

〇 藤井 博志  講師(地域共生社会をつくる地域福祉とは)                      ■講義概要・プロフィール■

○講義概要
 本講義では、近年の行政の福祉改革といわれる地域共生政策と包括的支援体制について、市民向けにわかりやすく解説します。この自治体による社会福祉体制が市民生活のセーフティネットとして、市民の安心・安全な暮らしを支える仕組みであること、またそれと同時に、この仕組みづくりに生活当事者としての市民の参加が不可欠であることを解説します。具体的には、本講義では4点について講義します。
 第1には、地域福祉という社会福祉の考え方の説明です。2000年以降の社会福祉の主流になっています。
 第2には、地域共生社会施策としての包括的支援体制整備が福祉改革の重点施策となっています。その背景要因としての社会構造変化とそこから起こる地域生活課題についてです。現在の人口減少、少子高齢化、家族の縮小化、貧困化をキーワードにした社会変化が市民生活に影響を及ぼしています。
 第3に、これらの構造変化に対して、制度疲労し対応できていない福祉行政の体制の問題と、これらに対応する「包括的支援体制」の内容です。
 最後に、これらへの取り組みが、未来を創る希望ある社会への変革とするための取り組みとしての「多様な主体の協働と市民参加」のあり方です。また、その具体的な実践は、次回に講義します。

〇藤井 博志(ふじい ひろし)
関西学院大学人間福祉学部教授。専門は地域福祉論。
1959年大阪市生まれ。兵庫県社会福祉協議会地域福祉部長、大阪府立大学講師、神戸学院大学教授を経て現在に至る。アクションリサーチ、フィールドワークを方法として、現場にコンタクトし現場と実践開発を行う地域福祉実践研究を方法とする。博士(社会福祉学)・社会福祉士。

〇 藤井 博志  講師(地域共生社会をつくる市民と福祉専門職の活動)            ■講義概要・プロフィール■

○講義概要
 前回の講義では福祉行政の改革について解説しました。今回の講義では、行政と協働する市民と主に社会福祉を中心とする事業者・専門職の取り組みを、三田市の民間活動の諸活動を紹介しながら説明します。
 社会福祉は制度的な社会福祉と市民や専門職による制度に縛られない民間の社会福祉との対等な協働体制が求められます。その自治体圏域で展開する社会福祉を地域福祉と呼びます。社会福祉に関する民間同士の広範な諸活動を関係者と協働ですすめる団体として社会福祉協議会(以下、社協)があり、関係者とともに策定した計画を地域福祉推進計画と呼びます。本講師は三田市社協のこの計画の策定委員長を務めた経緯から、三田市の諸活動を紹介しながら、地域福祉、包括的支援体制を市民、専門職から作り上げる取り組みを紹介します。具体的には、次のような実践、活動です。
 1つは、地域生活のや孤立化や健康格差を防ぐベースとなる見守り活動や多様な居場所づくりなどの市民による地域福祉活動
 2つには、市民と専門職が生活の場で協働しながら、当事者と共に暮らすための協議の場づくりと協働実践
 3つには、制度の狭間をつくらない福祉専門職による総合相談体制づくりなどです。
 これらの実践を三田市の具体的な取り組みを紹介しながら、その実践の考え方を解説します。

〇藤井 博志(ふじい ひろし)
関西学院大学人間福祉学部教授。専門は地域福祉論。
1959年大阪市生まれ。兵庫県社会福祉協議会地域福祉部長、大阪府立大学講師、神戸学院大学教授を経て現在に至る。アクションリサーチ、フィールドワークを方法として、現場にコンタクトし現場と実践開発を行う地域福祉実践研究を方法とする。博士(社会福祉学)・社会福祉士。

2023年度 春季オープンセミナー ※募集終了しております

西宮上ケ原キャンパス講座 

  Ⅰ.シリーズ名:経済学の最前線―環境、金融、スタートアップー   

開催日時

テーマ・講師

場所
5月20日(土)
10:00~12:00

経済活性化の起爆剤? -スタートアップの登場とその課題- 
〇講師:加藤 雅俊(経済学部教授)

関西学院大学
西宮上ケ原キャンパス
6月17日(土)
10:00~12:00

エシカルとは何か?  -貿易と環境・資源の問題を考える-
〇講師:東田 啓作(経済学部教授)

7月08日(土)
10:00~12:00
最近の物価動向をどう考えるか? -日本の物価と金融政策-
〇講師:秋吉 史夫(経済学部教授)
 

神戸三田キャンパス講座 

 Ⅱ. シリーズ名:ウイズコロナと会計・経済  

開催日時

テーマ・講師

場所
7月15日(土)
10:30~12:30

会計の基本と財務諸表分析から見えること
〇講師:譚 鵬(商学部准教授)

三田キッピ―モール6F
三田市まちづくり協働センター

7月22日(土)
10:30~12:30

経営のための会計と地域経済を支える中小企業
〇講師:吉川 晃史(商学部教授)

7月29日(土)
10:30~12:30
金融機関による地域支援とその測定
〇講師:𠮷原 清嗣(京都工芸繊維大学非常勤講師)
 

お問い合わせ

教務機構事務部 生涯学習担当
西宮上ケ原キャンパス(G号館1階)
〒662-8501 兵庫県西宮市上ケ原一番町1-155
TEL: 0798-54-6180