2018.11.08.
ミニ講座を開催いたしました

講座会場

【10/24(水)・10/31(水) 2018年度秋学期ミニ講座を開催しました】

去る10月24日(水)に本学神戸三田キャンパス、続く10月31日(水)に西宮聖和キャンパスにて、本学学生・教職員を主な対象とした「ミニ講座『手話とろう学校』」を開催しました(春学期に上ヶ原キャンパスで実施済)。
講師は、かつて全国のろう学校で手話の使用が厳しく禁じられていた時代に、「幼稚部初の聴こえない先生」として、奈良県立ろう学校に赴任された、吉本努先生(現同校中学部教諭)です。

講座の様子

最初に「手話やろう教育の移り変わり」として、昔日本で使われていた指文字が、ヘレンケラーとの出会いを通じて、より経済性(現在「手話空間」と呼ばれる、ニュートラルスペース)を重視した指文字に変わっていったこと、第2回世界ろう教育国際会議(別名「ミラノ会議」)以降、全国のろう学校で手話の使用が禁止されていったこと、その中で様々な難題にぶつかりながらも、奈良・三重・広島などを中心に徐々に手話が教育現場に導入されていったことなどを紹介いただきました。

「幼い段階から手話を導入すると、日本語の獲得ができなくなる」と周囲から懸念の声があがる中、全国初となるろうの先生として、吉本先生が赴任されたところが、奈良県立ろう学校幼稚部でした。絵本の読み聞かせなどを通して手話で語り掛ける様子に、本を読むのが大嫌いだったろうの子供達が、いつの間にか真剣に吉本先生の手で紡ぐ語りを見るようになったなど、子供達の様子に変化が現れたそうです。

音声言語を第一言語とする聴こえる幼児の場合、はじめは音声器官をなかなか上手に使うことができず、「喃語」(なんご)と呼ばれる発話の段階を踏んで、だんだん大人と同じような発音、発話ができるようになっていきます。それと同様に、手話を第一言語とする聴こえない幼児も、はじめは手を思い通りに使いこなすことができません。「手話の喃語」を使いながら、一生懸命、目にしたものや気持ちを伝えようとします。その細かい手の動きや形にも意味が存在し、その繊細な部分までも理解することが非常に大切である、とご自身の経験を交えながらお話しいただきました。

手話による絵本の読み聞かせ

講演の後は、いよいよお待ちかね、手話による「絵本の読み聞かせ」です。
譜面台に絵本をセットしたかと思うと、吉本先生は、まるで絵本と一体化したように、身体全体を使って物語を紡いでいかれました。その語りに参加者全員ぐいぐい引き込まれていきました。途中、学生とのインタラクションも交えながら語りを進めていかれ、学生からは笑いと「なるほどなぁ・・・」という感心の声が聞こえてきました。

学校の教科書には決して紹介されていないろう教育の歴史を、現場の、しかもろう当事者である先生が、手話を用いてお話くださったこの90分は、参加してくれた学生にとって大いに有意義な時間だったことでしょう。

参加者対象のアンケート結果から、学生が書いてくれた感想を一部紹介します。
・ろうの先生から実体験を交えた貴重な話をたくさん聞くことができ、とても勉強になりました。
・手話を実際にすることができてよかったです。
・今日初めて知ったこともあり、勉強になりました。手話での読み聞かせ、とても分かりやすかったです。
・耳の聞こえない児童たちがどのように扱われてきたのかを理解することができました。
・これから耳の聞こえない子たちがどのようにしていけば学びやすい環境を整えていけるか考えていきたいと思います。

講師の吉本先生、ありがとうございました。また、講座にあたり手話通訳をしてくださった方々、要約筆記をしてくださった学生の皆様にも、この場をお借りしてお礼申し上げます。

これでもって今年度の「ミニ講座」はすべて終了しましたが、また来年度も開催する予定です。
今回お越しになれなかった方も是非次回はお越しください。

2018.11.8