2023.09.27.
2023年度 国際シンポジウム「手話言語✕AI~ICTを活用した新たなチャレンジ~」を開催しました

 2023年9月10日(日)に、2023年度国際シンポジウム「手話×AI~ICTを活用した新たなチャレンジ」を、本学西宮上ケ原キャンパスの中央講堂にて開催しました。今年の4月に、手話言語研究センターが正式に本学の研究所として常設化され、再スタートを切ってから、記念すべき最初のイベントとなりました。オンラインではなく、対面での開催でしたが、大変多くの方にご参加いただきました。本シンポジウムは、香港中文大学 手話言語学・ろう者学研究センター、Google社、日本財団と協働ですすめている「プロジェクト手話」の新製品、「手話タウンハンドブック(AIによる手話認識技術を活用した手話学習ツール)」のお披露目も兼ねて、皆さんと一緒に手話教育におけるICT、AIの可能性と課題について考えを深めることを目的に開催いたしました。

 まず初めに、主催者を代表して、本学の土井健司副学長(神学部教授) より、開会の挨拶として、手話言語研究センターの設立から今日に至るまでの様々な取り組みについて、お話しさせていただきました。
全体の進行は、前半がプレゼンテーション、後半はパネルディスカッション、という二本立てで進められました。まず、プロジェクト手話に関わった5名の登壇者に、このプロジェクトの概要、AIを使った手話認識の仕組み、今後の課題や展望等を話していただきました。
初めに、香港中文大学、手話言語ろう者学研究センターのKa Yiu Cheng氏にこのプロジェクトが始まった経緯と背景を、次に、Google社 のJoe Fry氏よりプロジェクト全体のコンセプト、続いて公益財団法人 日本財団 特定事業部の川俣 郁美氏より、これまでの取り組みについてご報告いただきました。技術的な観点からは、タイのbit.studioより、Kiattiyot “Boon” Panichprecha氏にご登壇いただき、AIの機械学習の仕組みと、この手話タウンというソフトがどのような技術を使って作られているのか等、専門的なご説明をいただきました。次に、主に手話のデータ収集については本学の手話言語研究センターの前川和美助教より、現状と課題についてお話いただきました。

 後半のパネルディスカッションでは、まず本学の副学長、巳波教授より前半の総括と、本学のAI活用人材育成プログラムの紹介がありました。その後、モデレーターとして、各登壇者との意見交換を進行していただき、それぞれプロジェクト手話に関わる中で見えてきた課題、今後の展望などを語っていただきました。

技術だけが先行してしまうのではなく、その技術を利用する人と一緒に開発をすることが大切だということ、またAI技術がすべてを解決するのではなく、あくまで大切なのは人であり、AIは、人と人とのやり取りを助けるために介在するものであるべき、そして、本当の意味でこの技術を使えるものにするには、大量の正確なデータが必要不可欠である、等の意見が交わされました 。また、これまで無理だと思われていたことが、技術の進歩により当たり前になった事例も多くあるので、音声言語と手話言語の垣根を越えて、いつでもどこでも誰とでも、自由にコミュニケーションが取れる社会を作っていきたいという大きな夢も語っていただくなど、密度の濃い、大変有益な時間となりました。

 最後のQ&Aの時間では、「利き手の違いや服装の違いで手話認識に影響はあるのか」、「手話データの偏りについて」等、様々な質問が寄せられました。利き手や服装の違いだけで手話の認識に影響することはないが、より精度を上げるために、今回の技術を開発し、またさらに発展させていきたいということでした。また、データ収集には、正確なデータを大量に集めることが最も大事であることが強調されていました。時間の都合上、すべてにお答えすることはできませんでしたが、参加者の皆さんも一緒に、考えを深めてくださっていることが良く分かりました。

 最後に、参加者から寄せられた感想の一部を紹介します。
 ・AIについて詳しく知らないまま苦手意識があったが、今日のお話を聞いて、今後の利用や可能性に期待が持てた。
 ・ろう者とAIにおける取り組みの課題や成果を知ることで、私たちに何ができるのかを考えるきっかけになった。
 ・話題のテーマだけに大変良かった。ただ、専門的内容も多く、難易度が高めに感じた。
 ・AIの素晴らしさだけでなく、課題も赤裸々にお伺いできて、私もその一員となりたくさん考えさせられた。

まだ課題は多くありますが、今後も皆様のご協力をいただきながら、このプロジェクトを継続し、発展させたいと考えています。お忙しい中、登壇してくださった皆様、ご参加くださった皆様、本当にありがとうございました。
 

【お問い合せ】
 関西学院大学 手話言語研究センター
 TEL: 0798-54-7013
 FAX: 0798-54-7014
 Email: slrcenter@kwansei.ac.jp