2023.04.04.
手話通訳のタイミング

手話通訳のタイミング
森本郁代 法学部教授 手話言語研究センター研究員

 手話言語研究センターでは、シンポジウムや講話会など、さまざまなイベントを企画し、手話言語やろう者についての情報を発信し、フロアのみなさんとディスカッションをする機会を設けています。その際、当然、手話通訳をつけるわけですが、先日、群馬大学と共同で開催したオンラインでの合同シンポジウムにおいて、今さらながら気が付いたことがありました。それは、手話通訳のタイミングです。

 私は関西学院大学手話言語研究センターの教育・研究の取り組みについて、特別任期制助教の前川さんと共に、スライドを用いて発表したのですが、自分が次のスライドへと移行する時点で、まだ手話通訳が終わっていないことに気づきました。スライドと自分の発表原稿を見るのに集中していて、手話通訳の方まで注意が行っていなかったのです。気づいてからは、自分が話し終わった後も、手話通訳が終わるまでスライドを次に進めないようにしましたが、思い返してみると、音声言語間の通訳(例えば、日本語から英語や中国語)などではこうした経験はありませんでした。自分が日本語で発表している間、同時通訳の場合は通訳者の言語も聞こえてくるため、通訳が終わる時点を特に意識せずに済んでいたのだと思います。手話言語は視覚言語であるため、通訳の方の動きに留意しながら発表をすべきでした。これまでもきっと、手話通訳の方やろう者の方に大きな負担をかけていたに違いない、と思い、申し訳なさでいっぱいになりました。と同時に、発表の際、常にスライドと手話通訳の両方を見なければならないことは、ろう者の方にとって大変なことではないかと思いました。どうしたらろう者の皆さんの負担を減らすことができるのか、また一つ宿題をもらったと思っています。