2021.04.26.
「優生保護法」に関する裁判

「優生保護法」に関する裁判
平 英司 手話言語研究センター 専門技術員

  皆さんは自分の知らない間に子どもが作れない体にされてしまったら、どう思いますか?今回のコラムは、実際にあった本人の同意のない不妊手術にまつわるお話です。
    現在、全国で「優生保護法」という法律に関する裁判が行われています。たまにニュースで見かけるかもしれません。でも、実際にどういう裁判なのか分かりにくいという声も聞かれますので、このコラムで簡単にご紹介します。
 優生保護法という法律が以前ありました。この法律は優生思想という、障害者やろう者は「不良」であり、健常者や耳の聞こえる人が正常であるという考えのもと「不良な子孫の出生を防ぐ」ということを目的としたもので、1996年(平成8年)まで存在していました。
 この法律を背景に、本人の同意がないままに手術をさせられ、一生涯子どものいない人生を送らざるをえなくなった人たちが国を相手に裁判をしています。これまでの裁判では、国は20年間の除斥期間(時効のようなもの)を理由にして、原告側の敗訴が続いています。手術をしたのが20年以上前だから時間切れということです。
 兵庫県では現在裁判が行われており、4名のろう者と1名の脳性麻痺の方が国と裁判をしています。この裁判の判決は8月に出る予定です。原告のろう者のうち、お一人は判決を見ないまま、昨年亡くなりました。国の法律のもと、本人の意思と関係なく、子どもを授かる権利を奪われ、国からの謝罪もないまま一生を終える。僕が想像できないほど無念だったのではないでしょうか。
 兵庫県の弁護団は、法律があり、優生思想がはびこる中、障害者の方々が声を上げられない状況におかれていたことや被害が手術のその時点のみではなく永続していることを指摘しています。そして、「優生保護法」が平成8年に削除される際に、何の議論もなかったことを問題視しています。削除する際に、この法律が誤ったものであったと社会に対して伝えていないということです。国が「障害者は不良である。」という差別の火をつけ回ることは止めたけど、優生思想を社会に広げておきながら、その火消し作業はしていない、ということでしょう。
 詳しく知りたい方は「優生保護法による被害者とともに歩む兵庫の会」をご参照ください。今後、優生保護法の裁判を考える参考になれば幸いです。
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