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関西学院大学人権教育の基本方針

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[ 編集者:人権教育研究室   2019年4月4日 更新  ]

<はじめに>

 1948年に国連で採択された世界人権宣言では、「人は生まれながらにして自由であり、かつ尊厳と権利とにおいて平等」(1条)な存在であるという確信の下に、すべての人の権利として30条にわたりさまざまな権利を確認している。戦後の日本では、憲法に基づき国家が人権を保障する義務をもつという近代的立憲主義を採用し、さらに国際人権諸条約の批准や国内法を通じて、人権を守ることを約束してきた。しかしながら、現実には日本や世界には差別などの人権侵害により尊厳を奪われる状況はなくならず、グローバル化、情報化社会などの進展と共に新たな課題も生まれている。
 人権が保障される社会を作るために貢献することは、すべての人、組織の任務であろう。とりわけ、キリスト教主義にもとづく「隣人愛」を基礎におき、“Mastery for Service”を体現する世界市民を育むことを目的とする本学にとっては、その目的(ミッション)と深く関わる中核的な課題である。
 関西学院大学では、1970年代に起きた部落差別事件をきっかけに、同和問題への取り組みの遅れを初めとする人権への取り組みについて反省を迫られることとなった。この教訓の上に、1975年に大学評議会において「同和教育の基本方針」を採択し、「全学的課題としての同和問題に対して、それぞれの場において、より積極的に取組む」ことを確認、全学的な教育・研究の取り組みを開始した。その後、日本における人権課題への意識も深まり、それにともない本学における人権教育の課題も拡大し、在日コリアン、障がい者、ジェンダー、在日外国人、セクシャル・マイノリティ、子どもなどに関わる人権上の課題にも取り組むようになっている。
 本基本方針では、こうした過去の経緯を踏まえた上で、さらに発展させていくため、今後の本学の人権教育に関わる基本的な考え方を確認するものである。

1.建学の精神、ミッションと人権教育

 本学はその建学以来キリスト教主義(Principles of Christianity)に基づき、その歴史の中で生み出されたスクールモットー“Mastery for Service”の実践を教育・研究の重要な目的として今日に至っている。その実践の根底にあるものはキリスト教的「隣人愛」に他ならない。ここで意味される「隣人愛」とは、自らが関わる相手を自分と関わりなく存在するものとしてとらえるものではなく、常に相手との積極的な関わりの中で自らのあり方を根本的かつ批判的に問いながら実践するものでなければならない。すなわち、その実践においては、個々人の「いのち」と尊厳が常に遵守される社会を創造するための感性と行動を不断に問いつつ、一人一人が自らを「絶対化」しようとする誘惑と常に対峙する必要がある。
 さらに今日、本学は創立者W.R.ランバスの生涯にならい、世界市民(World Citizen)をはぐくむことを大きな目的の一つとしている。建学の理念を鑑みたとき、本学が目指す世界市民とは、他者と対話し共感する能力を身につけ、よりよい世界の創造に向けて責任を担う人々であると考えることができる。
 そして、他者と共感する力を持つためには、固定観念や偏見を廃しながら、人の多様性を受け入れることが前提となる。また、自己と他者の権力関係を正しく理解し、不当な抑圧を生み出さず、差別などの人権侵害を見抜く眼が不可欠である。
 他者と対話しながら、よりよい世界の創造に貢献していくためには、「人は生まれながらにして自由であり、かつ尊厳と権利とにおいて平等」な存在であるという共通の確信に導かれつつ対話を行う力が必要となる。また、人の尊厳が守られる社会を生み出す過程に参加する力と意思も必要となる。
 人権の前提である確信、すなわち「人は生まれながらにして自由であり、かつ尊厳と権利とにおいて平等」な存在であることを理解し、人権を活かしながらよりよい社会を生み出す力を身につけることは世界市民の前提条件と考えられる。
 このように、人権教育は、本学のミッションの中核に関わる。このため、本学における人権教育はそれを専門とする一部の教員だけが実施するのではなく、多くの教職員と学生の参加を得ながら共に作り上げてきており、今後も全学的な取り組みを深めていく。

2.人権教育でなにをめざすか

 本学では、学生の大学での体験総体を通じて、人権を支える価値観・姿勢、人権への理解、人権の活用能力をはぐくむことをめざす。具体的には、次のような教育目標をもって人権教育を行いたい。
1)人権を支える価値観・姿勢を獲得する
 人は生まれながらにして自由であり、かつ尊厳と権利とにおいて平等な存在であるという確信を持つことができるようになる。
 このためには、日本や世界に存在する差別の実態を、歴史的、社会的、政治的、文化的、経済的な背景などを含めて理解する必要がある。さらに、自らにある「固定観念」や「偏見」を直視し、それらによって人の多様なあり方を受け入れることができなくなったり、マイノリティの状況が理解できなくなったりすることがないようにしなくてはならない。
2)人権への理解を獲得する
 人々の尊厳を損なう権力関係が社会に存在していることを認識することができるようになる。
 その上で、権力関係のありかたを問いつつ、人の尊厳を守ることを可能とする人権のさまざまな役割を理解し、加えて、「人間の自由、尊厳と権利の平等」を実現するためには、変化する社会の中で新たにどのような人権が必要なのかを構想できるようになる。
3)人権を活用する能力を獲得する
 自己と他者の人権擁護のために、具体的な状況において人権を適用し、それらを理性的に活用しながら問題解決を行う方法を見つけることができ、その実現のために行動することができるようになる。

3.人権教育の前提としての大学における人権保障

 人権を理解し、その役割を確信するためには、自らや他者の人権が守られる環境で学ぶことが不可欠である。大学の中で人権が守られる環境を作ることは、学生の権利保障のためのみならず、人権教育の実現のためにも欠かせない。これは、「多様性を力とする垣根なきコミュニティ」を生み出すことにもつながる。
 とりわけ、以下を実現する責務を大学は持つ。
1)多様性の尊重、偏見・差別の排除をもとに大学の構成員一人一人がハラスメントなく学び、働ける環境を保障する。被差別部落出身などの社会的出自、ジェンダー、障がい、国籍、人種・民族、宗教、性的指向などに基づく差別は許されない。
2)国際人権諸条約や関連国内法に基づき、障がい者が等しく教育を受けるための権利、または同等に働く権利を、合理的な配慮に基づく支援の提供も含めて、保障する。
3)これらを含めた人権の保障は、すべての大学の構成員の責務である。大学はこの責務を果たすため教職員向けの研修等を実施する。また、学生支援、ハラスメント防止、人権教育などに関わる部門は、それぞれの機能に応じて連携する。これらの大学による人権保障の実現は、見直しを行いながら継続して改善する。

4.研究・地域連携を通じ人権の守られる社会づくりへの貢献

 「世界市民」をはぐくむためには、大学自体が「よりよい世界の創造」のためのプロセスに参加することで、範を示さなくてはならない。また、社会的出自、ジェンダー、障がい、国籍、人種・民族、宗教、性的指向などの側面で多様な属性を持つ学生や教職員が、共感に基づく対話を実現できる「垣根なきコミュニティ」を生み出すためには、大学内部はもとより社会全体が変わっていく必要がある。
 このために、研究と地域連携を通じ、とりわけ次のような側面で社会発信を行う。
1)新たな人権の課題について議論する場や素材の提供
 社会の変化にともない生じる新たな課題を人権の視点から考え、議論を行う場を講演会、公開研究会などの手法で提供すると共に、出版物を通じてその成果を発信する。
2)学生が卒業後も人権を守れるような社会へと変革するための発信
 人権を単なる建前で終わらせないためには、一人一人の人権が守られる社会が必要である。大学の中での人権教育が説得力を持つためにも、大学自身が研究や地域連携を通じ人権が守られる社会づくりのための発信を行う。

以 上

2014年3月   
関 西 学 院 大 学
学 長 井上 琢智

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