募集及び採用並びに配置、昇進及び教育訓練について事業主が適切に対処するための指針 (その二)

[ 編集者:人権教育研究室       2009年3月20日 更新 ]

3 法第六条に違反する措置

(1) 配置

配置に関し、一の雇用管理区分において、次に掲げる措置を講ずること。
イ 一定の職務への配置に当たって、女性であることを理由として、その対象から女性労働者を排除すること。
(排除していると認められる例)
【1】 営業の職務への配置に当たって、その対象を男性労働者のみとすること。
【2】 基幹的な業務を内容とする職務への配置に当たって、その対象を男性労働者のみとすること。
【3】 海外で勤務する職務への配置に当たって、その対象を男性労働者のみとすること。
ロ 一定の職務への配置に当たって、婚姻したこと、一定の年齢に達したこと、子を有していること等を理由として、女性労働者についてのみ、その対象から排除すること。
(排除していると認められる例)
【1】 女性労働者についてのみ、婚姻を理由として、研究の職務への配置の対象から排除すること。
【2】 女性労働者についてのみ、子を有していることを理由として、本社勤務から排除すること。
ハ 一定の職務への配置に当たり一定の資格を有することその他の条件を付す場合において、女性労働者に対して男性労働者と異なる条件を付すこと。
(異なる条件を付していると認められる例)
【1】 男性労働者については一定数の支店の勤務を経た場合に配置するが、女性労働者については当該一定数を上回る数の支店の勤務を経なければ配置しないこととすること。
【2】 女性労働者についてのみ、一定の国家資格の取得や研修の実績を条件とすること。
ニ 一定の職務への配置に当たりその資格について試験を実施する場合において、女性労働者に対して男性労働者と異なる取扱いをすること。
(異なる取扱いをしていると認められる例)
【1】 一定の職務への配置の資格についての試験の受験資格を、女性労働者に対して与えないこと。
【2】 一定の職務への配置の資格についての試験の合格基準を、女性労働者について男性労働者と異なるものとすること。
【3】 一定の職務への配置の資格についての試験の受験を男性労働者のみに奨励すること。

ホ 一定の職務への配置に当たり、配置の基準を満たす労働者の中からその職務に配置する労働者を選考する場合において、女性労働者に対して男性労働者と異なる取扱いをすること。
ヘ 一定の職務への配置に当たって、女性であることを理由として、その対象を女性労働者のみとすること。
(女性労働者のみとしていると認められる例)
【1】 秘書、受付等の職務への配置に当たって、その対象を女性労働者のみとすること。
【2】 補助的な業務を内容とする職務への配置に当たって、その対象を女性労働者のみとすること。
ト 一定の職務への配置に当たって、婚姻したこと、一定の年齢に達したこと、子を有していること等を理由として、女性労働者についてのみ、その対象とすること。
チ 女性であることを理由として、女性労働者についてのみ、不利益な配置転換をすること。
(不利益な配置転換をしていると認められる例)
【1】 女性労働者のみを、合理化のための出向の対象とすること。
リ 婚姻したこと、一定の年齢に達したこと、子を有していること等を理由として、女性労働者についてのみ、不利益な配置転換をすること。
(不利益な配置転換をしていると認められる例)
【1】 女性労働者についてのみ、婚姻又は子を有していることを理由として、通勤不便な事業場に配置転換をすること。
【2】 一定の年齢以上の女性労働者のみを、合理化のための出向の対象とすること。

(2) 昇進

昇進に関し、一の雇用管理区分において、次に掲げる措置を講すること。
イ 一定の役職への昇進に当たって、女性であることを理由として、その対象から女性労働者を排除すること。
(排除していると認められる例)
【1】 女性労働者に対して、役職への昇進の機会を与えないこと。
【2】 女性労働者については、一定の役職までしか昇進できないこととすること。
ロ 一定の役職への昇進に当たって、婚姻したこと、一定の年齢に達したこと、子を有していること等を理由として、女性労働者についてのみ、その対象から排除すること。
(排除していると認められる例)
【1】 女性労働者についてのみ、婚姻を理由として、昇格できないこととすること。
【2】 女性労働者についてのみ、子を有していることを理由として、一定の水準までしか昇格できないこととすること。
ハ 一定の役職への昇進に当たり、出勤率、勤続年数その他の条件を付す場合において、女性労働者に対して男性労働者と異なる条件を付すこと。
(異なる条件を付していると認められる例)
【1】 男性労働者については一定の勤続年数を経た場合に昇進させるが、女性労働者については当該一定の勤続年数を超える年数を経なければ昇進できないこととすること。
【2】 男性労働者については出勤率が一定の率以上である場合に昇格させるが、女性労働者については出勤率が当該一定の率以上であることに加えて一定の勤続年数を経なければ昇格できないこととすること。
【3】 男性労働者については婚姻の有無にかかわらず一定の年齢に達している場合に昇格させるが、女性労働者については既婚者である場合には当該一定の年齢に達した後一定の年数を経なければ昇格できないこととすること。
【4】 女性労働者についてのみ、一定の役職を経たことを条件とすること。

ニ 一定の役職への昇進のための試験を実施する場合において、女性労働者に対して男性労働者と異なる取扱いをすること。
(異なる取扱いをしていると認められる例)
【1】 一定の役職に昇進するための試験の受験資格を、女性労働者に対して与えないこと。
【2】 一定の役職に昇進するための試験の受験資格を、男性労働者には一定の勤続年数を経た場合に与えるが、女性労働者には当該一定の勤続年数を超える年数を経なければ与えないこと。
【3】 一定の役職に昇進するための試験の受験資格を、男性労働者には婚姻の有無にかかわらず一定の勤続年数を経た場合に与えるが、女性労働者には既婚者である場合には当該一定の勤続年数を経たことに加えて上司の推薦がなければ与えないこと。
【4】 男性労働者についてのみ一定の役職に昇進するための試験の一部を免除すること。
【5】 一定の役職に昇進するための試験の合格基準を、女性労働者について男性労働者と異なるものとすること。
【6】 一定の役職に昇進するための試験の受験を男性労働者のみに奨励すること。
ホ 一定の役職への昇進に当たり、昇進の基準を満たす労働者の中から昇進させる労働者を選考する場合において、女性労働者に対して男性労働者と異なる取扱いをすること。
ヘ 一定の役職への昇進に当たって、女性であることを理由として、その対象を女性労働者のみとすること。
ト 一定の役職への昇進に当たって、婚姻したこと、一定の年齢に達したこと、子を有していること等を理由として、女性労働者についてのみ、その対象とすること。

(3) 教育訓練

教育訓練に関し、一の雇用管理区分において、次に掲げる措置を講ずること。
イ 教育訓練に当たって、女性であることを理由として、その対象から女性労働者を排除すること。
(排除していると認められる例)
【1】 一定の職務に従事する者を対象とする教育訓練を行うに当たって、その対象を男性労働者のみとすること。
【2】 工場実習を行うに当たって、その対象を男性労働者のみとすること。
【3】 海外での留学による研修の対象を男性労働者のみとすること。
ロ 教育訓練に当たって、婚姻したこと、一定の年齢に達したこと、子を有していること等を理由として、女性労働者についてのみ、その対象から排除すること。
(排除していると認められる例)
女性労働者についてのみ、一定の年齢に達したことを理由として、将来従事する可能性のある職務に必要な知識を身につけるための教育訓練の対象から排除すること。
ハ 教育訓練の実施に当たり勤続年数その他の条件を付す場合において、女性労働者に対して男性労働者と異なる条件を付すこと。
(異なる条件を付していると認められる例)
【1】 男性労働者については一定の勤続年数を経た場合に教育訓練の対象とするが、女性労働者については当該一定の勤続年数を超える年数を経なければ教育訓練の対象としないこととすること。
【2】 女性労働者についてのみ上司の推薦を条件とすること。
【3】 男性労働者については全員を教育訓練の対象とするが、女性労働者については希望者のみを対象とすること。
ニ 教育訓練の実施について、女性労働者に対して男性労働者と異なる取扱いをすること。
(異なる取扱いをしていると認められる例)
【1】 女性労働者の教育訓練の期間を男性労働者と異なるものとすること。
【2】 女性労働者の教育訓練の課程を男性労働者と異なるものとすること。
ホ 教育訓練に当たって、女性であることを理由として、その対象を女性労働者のみとすること。
(女性労働者のみとしていると認められる例)
【1】 一定の職務に従事する者を対象とする教に従事させることが必要である職業育訓練を行うに当たって、その対象を女性労働者のみとすること。
【2】 接遇訓練を行うに当たって、その対象を女性労働者のみとすること。
へ 教育訓練に当たって、婚姻したこと、一定の年齢に達したこと、子を有していること等を理由として、女性労働者についてのみ、その対象とすること。

4 女性労働者に係る措置に関する特例

法第九条は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となっている事情を改善することを目的として女性労働者に関して行う措置は違法でないことを定めている。この場合、支障となっている事情とは、固定的な男女の役割分担意識に根ざす企業の制度や慣行に基づき、雇用の場において男女労働者の間に事実上格差が生じていることをいうものであり、支障となっている事情の存否は、女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない状況にあるか否かにより判断するものとすることが適当である。このことから、女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない雇用管理区分等において事業主が次に掲げる措置を講ずることは、2及び3にかかわらず、違法でない。

(1) 募集及び採用
女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない雇用管理区分における募集又は採用に当たって、当該募集又は採用に係る情報の提供について女性に有利な取扱いをすること、当該採用の基準を満たす者の中から男性より女性を優先して採用することその他男性と比較して女性に有利な取扱いをすること。
(2) 配置
一の雇用管理区分における女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない職務に新たに労働者を配置する場合に、当該配置の資格についての試験の受験を女性労働者のみに奨励すること、当該配置の基準を満たす労働者の中から男性労働者より女性労働者を優先して配置することその他男性労働者と比較して女性労働者に有利な取扱いをすること。
(3) 昇進
一の雇用管理区分における女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない役職への昇進に当たって、当該昇進のための試験の受験を女性労働者のみに奨励すること、当該昇進の基準を満たす労働者の中から男性労働者より女性労働者を優先して昇進させることその他男性労働者と比較して女性労働者に有利な取扱いをすること。
(4) 教育訓練
一の雇用管理区分における女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない職務又は役職に従事するに当たって必要とされる能力を付与する教育訓練に当たって、その対象を女性労働者のみとすること、女性労働者に有利な条件を付すこと、その他男性労働者と比較して女性労働者に有利な取扱いをすること。

5 適用除外

次のいずれかに該当する場合については、この指針を適用しない。
(1) 次に掲げる職業に従事する労働者に係る場合
【1】 芸術・芸能の分野における表現の真実性等の要請から男性又は女性のいずれか一方の性に従事させることが必要である職業
【2】 守衛、警備員等防犯上の要請から男性に従事させることが必要である職業。
【3】 【1】及び【2】に掲げる職業のほか、宗教上、風紀上、スポーツにおける競技の性質上その他の業務の性質上男性又は女性のいずれか一方の性に従事させることについてこれらの職業と同程度の必要性があると認められる職業
(2) 労働基準法(昭和二二年法律第四九号)第六一条第一項、第六四条の二又は第六四条の三第二項の規定により女性の労働が制限され、又は禁止されていることから、通常の業務を遂行するために、女性に対して男性と均等な機会を与えること又は女性労働者に対して男性労働者と均等な取扱いをすることが困難であると認められる場合
(3) 風俗、風習等の相違により女性が能力を発揮し難い海外での勤務が必要な場合その他特別の事情により女性に対して男性と均等な機会を与えること又は女性労働者に対して男性労働者と均等な取扱いをすることが困難であると認められる場合

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