女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約 (女子差別撤廃条約) (その二)

[ 編集者:人権教育研究室       2009年3月20日 更新 ]

第四部

第十五条 1 締約国は、女子に対し、法律の前の男子との平等を認める。
2 締約国は、女子に対し、民事に関して男子と同一の法的能力を与えるものとし、また、この能力を行使する同一の機会を与える。特に、締約国は、契約を締結し及び財産を管理することにつき女子に対して男子と平等の権利を与えるものとし、裁判所における手続のすべての段階において女子を男子と平等に取り扱う。
3 締約国は、女子の法的能力を制限するような法的効果を有するすべての契約及び他のすべての私的文書(種類のいかんを問わない。)を無効とすることに同意する。
4 締約国は、個人の移動並びに居所及び住所の選択の自由に関する法律において男女に同一の権利を与える。
第十六条 1 締約国は、婚姻及び家族関係に係るすべての事項について女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとるものとし、特に、男女の平等を基礎として次のことを確保する。
(a) 婚姻をする同一の権利
(b) 自由に配偶者を選択し及び自由かつ完全な合意のみにより婚姻をする同一の権利
(c) 婚姻中及び婚姻の解消の際の同一の権利及び責任
(d) 子に関する事項についての親(婚姻をしているかいないかを問わない。)としての同一の権利及び責任。あらゆる場合において、子の利益は至上である。
(e) 子の数及び出産の間隔を自由にかつ責任をもつて決定する同一の権利並びにこれらの権利の行使を可能にする情報、教育及び手段を享受する同一の権利
(f) 子の後見及び養子縁組又は国内法令にこれらに類する制度が存在する場合にはその制度に係る同一の権利及び責任。あらゆる場合において、子の利益は至上である。
(g) 夫及び妻の同一の個人的権利(姓及び職業を選択する権利を含む。)
(h) 無償であるか有償であるかを問わず、財産を所有し、取得し、運用し、管理し、利用し及び処分することに関する配偶者双方の同一の権利
2 児童の婚約及び婚姻は、法的効果を有しないものとし、また、婚姻最低年齢を定め及び公の登録所への婚姻の登録を義務付けるためのすべての必要な措置(立法を含む。)がとられなければならない。

第五部

第十七条 1 この条約の実施に関する進捗状況を検討するために、女子に対する差別の撤廃に関する委員会(以下「委員会」という。)を設置する。委員会は、この条約の効力発生の時は十八人の、三十五番目の締約国による批准又は加入の後は二十三人の徳望が高く、かつ、この条約が対象とする分野において十分な能力を有する専門家で構成する。委員は、締約国の国民の中から締約国により選出されるものとし、個人の資格で職務を遂行する。その選出に当たつては、委員の配分が地理的に衡平に行われること並びに異なる文明形態及び主要な法体系が代表されることを考慮に入れる。
2 委員会の委員は、締約国により指名された者の名簿の中から秘密投票により選出される。各締約国は、自国民の中から一人を指名することができる。
3 委員会の委員の最初の選挙は、この条約の効力発生の日の後六箇月を経過した時に行う。国際連合事務総長は、委員会の委員の選挙の日の遅くとも三箇月前までに、締約国に対し、自国が指名する者の氏名を二箇月以内に提出するよう書簡で要請する。同事務総長は、指名された者のアルファベット順による名簿(これらの者を指名した締約国名を表示した名簿とする。)を作成し、締約国に送付する。
4 委員会の委員の選挙は、国際連合事務総長により国際連合本部に招集される締約国の会合において行う。この会合は、締約国の三分の二をもつて定足数とする。この会合においては、出席しかつ投票する締約国の代表によつて投じられた票の最多数で、かつ、過半数の票を得た指名された者をもつて委員会に選出された委員とする。
5 委員会の委員は、四年の任期で選出される。ただし、最初の選挙において選出された委員のうち九人の委員の任期は、二年で終了するものとし、これらの九人の委員は、最初の選挙の後直ちに、委員会の委員長によりくじ引で選ばれる。
6 委員会の五人の追加的な委員の選挙は、三十五番目の批准又は加入の後、2から4までの規定に従つて行う。この時に選出された追加的な委員のうち二人の委員の任期は、二年で終了するものとし、これらの二人の委員は、委員会の委員長によりくじ引で選ばれる。
7 締約国は、自国の専門家が委員会の委員としての職務を遂行することができなくなつた場合には、その空席を補充するため、委員会の承認を条件として自国民の中から他の専門家を任命する。
8 委員会の委員は、国際連合総会が委員会の任務の重要性を考慮して決定する条件に従い、同総会の承認を得て、国際連合の財源から報酬を受ける。
9 国際連合事務総長は、委員会がこの条約に定める任務を効果的に遂行するために必要な職員及び便益を提供する。

第十八条 1 締約国は、次の場合に、この条約の実施のためにとつた立法上、司法上、行政上その他の措置及びこれらの措置によりもたらされた進歩に関する報告を、委員会による検討のため、国際連合事務総長に提出することを約束する。
(a) 当該締約国についてこの条約が効力を生ずる時から一年以内
(b) その後は少なくとも四年ごと、更には委員会が要請するとき。
2 報告には、この条約に基づく義務の履行の程度に影響を及ぼす要因及び障害を記載することができる。
第十九条 1 委員会は、手続規則を採択する。
2 委員会は、役員を二年の任期で選出する。
第二十条 1 委員会は、第十八条の規定により提出される報告を検討するために原則として毎年二週間を超えない期間会合する。
2 委員会の会合は、原則として、国際連合本部又は委員会が決定する他の適当な場所において開催する。
第二十一条 1 委員会は、その活動につき経済社会理事会を通じて毎年国際連合総会に報告するものとし、また、締約国から得た報告及び情報の検討に基づく提案及び一般的な性格を有する勧告を行うことができる。これらの提案及び一般的な性格を有する勧告は、締約国から意見がある場合にはその意見とともに、委員会の報告に記載する。
2 国際連合事務総長は、委員会の報告を、情報用として、婦人の地位委員会に送付する。
第二十二条 専門機関は、その任務の範囲内にある事項に関するこの条約の規定の実施についての検討に際し、代表を出す権利を有する。委員会は、専門機関に対し、その任務の範囲内にある事項に関するこの条約の実施について報告を提出するよう要請することができる。

第六部

第二十三条 この条約のいかなる規定も、次のものに含まれる規定であつて男女の平等の達成に一層貢献するものに影響を及ぼすものではない。
(a) 締約国の法令
(b) 締約国について効力を有する他の国際条約又は国際協定
第二十四条 締約国は、自国においてこの条約の認める権利の完全な実現を達成するためのすべての必要な措置をとることを約束する。
第二十五条 1 この条約は、すべての国による署名のために開放しておく。
2 国際連合事務総長は、この条約の寄託者として指定される。
3 この条約は、批准されなければならない。批准書は、国際連合事務総長に寄託する。
4 この条約は、すべての国による加入のために開放しておく。加入は、加入書を国際連合事務総長に寄託することによつて行う。
第二十六条 1 いずれの締約国も、国際連合事務総長にあてた書面による通告により、いつでもこの条約の改正を要請することができる。
2 国際連合総会は、1の要請に関してとるべき措置があるときは、その措置を決定する。
第二十七条 1 この条約は、二十番目の批准書又は加入書が国際連合事務総長に寄託された日の後三十日目の日に効力を生ずる。
2 この条約は、二十番目の批准書又は加入書が寄託された後に批准し又は加入する国については、その批准書又は加入書が寄託された日の後三十日目の日に効力を生ずる。
第二十八条 1 国際連合事務総長は、批准又は加入の際に行われた留保の書面を受領し、かつ、すべての国に送付する。
2 この条約の趣旨及び目的と両立しない留保は、認められない。
3 留保は、国際連合事務総長にあてた通告によりいつでも撤回することができるものとし、同事務総長は、その撤回をすべての国に通報する。このようにして通報された通告は、受領された日に効力を生ずる。
第二十九条 1 この条約の解釈又は適用に関する締約国間の紛争で交渉によつて解決されないものは、いずれかの紛争当事国の要請により、仲裁に付される。仲裁の要請の日から六箇月以内に仲裁の組織について紛争当事国が合意に達しない場合には、いずれの紛争当事国も、国際司法裁判所規程に従つて国際司法裁判所に紛争を付託することができる。
2 各締約国は、この条約の署名若しくは批准又はこの条約への加入の際に、1の規定に拘束されない旨を宣言することができる。他の締約国は、そのような留保を付した締約国との関係において1の規定に拘束されない。
3 2の規定に基づいて留保を付した締約国は、国際連合事務総長にあてた通告により、いつでもその留保を撤回することができる。
第三十条 この条約は、アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語をひとしく正文とし、国際連合事務総長に寄託する。

以上の証拠として、下名は、正当に委任を受けてこの条約に署名した。

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