新課題の把握と研究 [人権教育研究室]

2023年度指定研究テーマ

■「関西学院と人権教育-インクルーシブ・コミュニティ実現を目指した人権教育の連携の在り方をめぐって」

本指定研究のこれまでの流れを踏まえて、「国連人権教育の10年」から引き継がれる課題として「人権教育の定義を踏まえること」、
「人権教育の柱を踏まえること」、「人権教育の目的を踏まえること」を念頭におきつつ、研究を継続していく。
「国連人権教育の10年」の決議文では、人権教育とは「あらゆる発達段階の人々が、あらゆる社会階層の人々が、他の人々の尊厳に
ついて学び、その尊厳をあらゆる社会で確立するための方法と手段について学ぶ、生涯にわたる総合的な課題である」と定義している。
この課題を、初等部から大学院まで幅広い教育を行っている関西学院で、いかに実践していくべきかについて、その見取り図を描いて
いくことが本研究の目的である。


2023年度公募研究テーマ

■「関学インクルーシブ・コミュニティの構築に向けたヒューマンライブラリーの試み
  -「司書」による振り返りの対話の分析を通して-」


本研究は、本学のヒューマンライブラリーの実施のプロセスを示し、その企画・運営を担う教員「司書」がどのような経験を経て、
何を学んでいるのかを、司書自信の協働的な振り返りをもとに明らかにするものである。
ヒューマンライブラリーとは、「生きている図書館」、「人を貸し出す図書館」とも言われるデンマーク発祥の対話型イベントであり、
イベントの参加者が集う場を図書館に見立て、語り手を「本」、聞き手を「読者」、企画・運営者を「司書」と呼ぶ。そこでは、ホームレス、
性的少数者、障害を持つ人など、日ごろ誤解や偏見を持たれやすい人が「本」となり、それぞれが数名の「読者」と30分語り合う。
人と人とのつながりを広げ、差別や偏見の低減に資する取り組みとして、約100カ国で行われており、日本においても多様性に開かれた
地域社会づくりを目指す試みとして広がりつつある。本学でも、全学的な試みとして2022年11月、人権教育研究室と日本語教育センターの
共同により第1回が開催され、2023年7月に第2回の実施も決定している。本学におけるヒューマンライブラリーは、多様なひとびとが集い、
互いに「個」として対話する場となるため、経験的な人権学習の場としての役割を果たしていると言える。
本学では、学生・教職員に対して人権学習の機会は多く提供されているが、個々人がそこでの学びをどのように体現しているのかについて
は、明らかではない。申請者らは、ヒューマンライブラリーが本学のインクルーシブ・コミュニティ構築に資する取り組みであると考え、
「司書」として他団体(「ヒューマンライブラリNagasaki」など)から学び、実践を行ってきた。2023年度以降はさらにネットワークを
広げ、充実した開催の継続を目指している。本研究では、教員「司書」にフォーカスを当てることで、経験的な学びのプロセスを解明し、
その学びを自らの教育実践にどう活かしているのかを具体的に示す。