2015年度のFD活動報告

[ 編集者:高等教育推進センター       2017年4月28日   更新  ]

2015年度FD活動報告

関西学院大学では各研究科、各学部・教育研究機関等が独自に工夫を凝らしたFD活動に取り組んでいます。以下に各研究科、各学部・教育研究機関等の取り組みを報告します。

神学研究科

 神学研究科では、2015 年度に FD 研修会を2 回実施した。
 第1 回は6 月3 日に開催し、「剽窃」をテーマに懇談を行った。リポートや修士論文における剽窃の問題を取り上げたが、そもそも文章や考え方を習い、真似ることは文化の継承・伝達とつながっており、私たちが注意し除かねばならない剽窃とは何かを定めるのが難しい。そこで主に剽窃の定義、そして心理的要因等について懇談した。また、アカデミックライティングに関する知識を深めるために、学部の基礎演習におけるアカデミックライティングの指導に注意を払うことについても話し合った。
 第2 回は11 月4 日に開催し、「学位論文の使用言語」について懇談を行った。学位論文は学術文化の成果のひとつであるので、日本文化のひとつとして学位論文は日本語で書くべきであるとの意見は当然ある。そのため条件付きで承認されるものとして、主に英語による修士論文執筆についての議論を行い、英文論文執筆能力の向上や、留学生の受入れと派遣の促進等について話し合った。これらの議論を基にして、指導教員および研究科委員会の承認を得た場合に限り、英語による修士論文執筆を可能にするよう内規改正を行った。

文学研究科

 文学研究科では昨年度から開始した(1)研究進捗状況報告書提出の義務化による大学院生の研究上の進捗状況の把握とそれに則した指導の徹底、(2)『文学研究科履修心得』の全面改訂による履修・研究指導過程の仕組みの整理と周知徹底、そして(3)博士学位(甲号・乙号)取得にいたる手続きの明確化のための「申し合わせ」の作成と周知徹底により、着実に成果を挙げている。
 また、来年度からの実施をめざし、(1)文学研究科独自の大学院生への研究支援制度の見直し、(2)大学院生と教員間の学術交流の活性化のための院生・教員合同研究会の定期開催、および(3)年2回実施している文学研究科「学生による授業評価」アンケート結果の活用について、大学院問題検討委員会で検討を行っている。

社会学研究科

社会学研究科では、主に以下の4つの活動を行った。
(1) アドミッション・ポリシー、ディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシーについて自己評価委員会にて改定し、大学院FD委員会において検証を行った。
(2) 学生を対象とし、授業に関するアンケートを春学期と秋学期に各一回実施した。当該アンケートは授業・カリキュラム構成・学習環境の充実を目的としたものである。ここ数年はアンケートの回収率が低調であったが、昨年度の院生会との懇談で実施体制および質問項目の適正化を図り、回収率を向上させることができた。集計後、院生会と研究科副委員長・研究科委員長補佐とで計2回の会合を持ち、アンケート結果をめぐる話し合いを行った。大学院FD委員会では、アンケートの結果および院生会との話し合いの内容について、報告と懇談を行った。
(3) 院生教育のサポートのための科目「先端社会講義(研究)I/J」の成果および改善を要する点について、担当教員からの報告書に基づき大学院FD委員会で報告と懇談を行った。
(4) 大学院科目のナンバリングについて大学院FD委員会で懇談を行い、当該委員会での意見を基に研究科に提案することとなった。

法学研究科

  法学研究科では、7 月30 日(木)にFD研究会を開催した。例年、大学院教務課アンケートとともに法学研究科独自のアンケートを実施し、法学研究科の院生の要望等を調査している。これらのアンケートの結果を基に、教員と院生がともに参加するFD研究会を開催し、大学院のカリキュラムや学習環境等について率直な意見交換を行った。     
 そこでの議論の一例を紹介すると、まず、シラバスについて、M2、D2以上では、ある程度内容が分かれば問題ないという意見もある一方で、M1、D1はもう少し内容を充実してほしいとの意見が多い。事前に指導教員と相談の上、授業開始前に履修登録する必要があるため、特に新入生にとって情報が少ないのは不安材料となっていることが判明した。これに対して、教員が今後もシラバスをできる限り詳しく記載するよう努力する旨、確認がなされた。次に、講義科目の選択を「どうしたらいいのかわからなかった」という意見について、博士後期課程の院生や研究員による個別学修相談制度を活用しやすいよう周知方法を検討する旨の確認が行われた。
 以上のように、FD研究会を、大学院における問題を教員と院生が膝を突き合わせて検討する場としても位置づけることの意義があらためて認識された。ここで明らかとなった課題を法学研究科の教育研究体制の改革につなげていきたいと考えている。

経済学研究科

 2015 年度の経済学研究科のFD 活動として、春と秋の2回のFD 委員会を開催し、①授業アンケート実施とその集計結果について、②経済学研究科在籍者数低下の影響について、の2 点について議論を行った。
 ①の授業アンケート調査の集計結果については、今年度も特に問題となるような授業はなかった。そして、今年度②の経済学研究科在籍者数低下の影響についての議論を行った。
経済学研究科への入学者数が、ここ数年大きく低下してきている。その影響として、経済学のコア科目と学部定期試験運営への影響が考えられる。
 現在、経済学のコア科目を、習熟度別に2 つのレベルに分けて開講しているが、現役学生数の低下によりレベル分けによるカリキュラム上の非効率が、そのメリットを上回ってきていると思われる。コア科目であるため、担当者の授業準備負担は大きいが、しかし実際は受講者がいなかった、ということがよく起こるようになってきた。この点について議論を行い、2017 年度からコア科目編成の変更を行うことが合意された。また、学部定期試験監督運営上の点については、研究科在籍者数が大幅に減少してしまうと、監督業務の運営に支障をきたす可能性があるため、早急にこの点への対策が必要ではないか、という議論を行った。

商学研究科

 商学研究科におけるFD 活動としては、大学院FD 委員会による活動とともに、専任教員参加によるFD 教授研究会(講演会、討論会など)などを行っている。
 2015 年度の大学院FD 委員会は、第1 回を2015 年7 月15 日(水)に、第2 回を10 月14 日( 水) に持ち回りにて開催した。研究科委員長から大学院FD 委員会に対して、商学研究科のカリキュラムおよびシラバスについて定期的な検証を行い、その結果を11 月11 日(水)までに報告書として提出するよう諮問があり、カリキュラムおよびシラバスの内容について検討を行い、報告書を作成した。
 2015 年度のFD 教授研究会は、商学部と共同で2 回開催され、多くの教員が参加し、参加教員による活発な質疑応答があった。第1 回FD 教授研究会は2015 年7 月8 日(水)に開催され、研究倫理教育教材(DVD)を視聴の上、その内容について懇談した。第2 回FD 教授研究会は2016 年3 月15 日(火)に開催され、岡村浩一郎商学部准教授により「SGUに向けて:イタリア・ボッコーニ大学からの示唆」というテーマで研究報告が行われた。この他にも、教授研究会として、商学部と共同で教員による研究報告会を行っており、教員の研究活動の活性化を図っている。

理工学研究科

 理工学研究科は大学院進学者が多く、大学院生を指導するためのFD 組織は重要である。2012 年度より理工学研究科のFD 推進組織として、大学院理工学研究科FD 委員会を設置し、順調に機能している。また、2012 年度から開講した英語のみで講義・研究を行う国際修士プログラムも順調に進んでおり、現在15 名の学生が受講している。プログラムの問題点をチェックするため、新入留学生全員と面接による聴き取りを行い、既習内容と研究テーマのマッチングの確認、
生活面での問題点等について調査した。ここで得られた情報や要望は国際化推進委員会と共有され、大学院教育や生活面の改善に役立っている。その他、今年は、大学におけるインスティテューショナル・リサーチ(IR)の理解を促進させることを目的とし、理工学部FD 委員会と共同で講演会を開催した(「関西学院大学におけるインスティテューショナル・リサーチ(IR)の現状と課題」2015 月10 月19 日 13 時30 分〜 15 時00 分 7 号館102 号教室 本学高等教育推進センター 江原 昭博 准教授)。本講演会を通じて本学のIR の現状と課題についての理解を深め、IR の活用の重要性を認識することができた。

総合政策研究科

 総合政策研究科では、FD /入試制度・カリキュラム検討委員会を中心に、主に以下の活動を行った。
(1) 研究科のディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシー、アドミッション・ポリシーの再検討を行い、一部改定した。
(2) SGU /国連・外交コースの開設を見据え、本コースにおける履修・修得単位の取り扱いなどについて検討を行った。
(3) 国連・外交コース開設に合わせて2017 年度から導入予定の新カリキュラムについて、研究者養成に重点を置いた変更案への検討を進めた。また、国連・外交コースと関連して、現行の研究科:英語コースの内容や担当者について改めて確認などを行った。国連・外交コースの内容が確定すれば、新カリキュラム案に反映される予定である。
(4) 本研究科・学部では、専門分野の異なる各教員の研究内容や授業方法の紹介などを目的とした研究発表会を実施している。今年度は計6 回実施し、新任教員3 名、学院留学・特別研究期間で研究活動を行った教員3 名が研究報告を行った。

言語コミュニケーション文化研究科

 言語コミュニケーション文化研究科においては、FD 活動の一環として、研究科執行部と、言語科学、言語文化学、言語教育学、日本語教育学の全4領域の大学院生代表によるFD 研修会を年に1回開催している。本研究科のカリキュラム構成、授業内容、教授法、設備、施設、および本研究科で運営する言語コミュニケーション文化学会とその関連行事に関して学生の意見を聴取し、教員との間で議論を交わすことによって、本研究科における教育・研究環境の全般的改善に結びつけることがその目的である。2015 年度のFD 研修会は12 月10 日に行われ、教員4 名、学生4 名の出席を得て、活発な議論が交わされた。学生からは、実習授業のペアワークに関する問題点が何点か指摘された他、必修科目の入学前周知をより徹底してもらいたいなどの要望がなされた。研究科ではこれらの声を教員全体と共有することにより、問題点の解消に向けて努めていくとともに、学生の教育研究環境の向上のために、きめ細かな対応をしていくべく、継続的に検討を進めていくこととした。

人間福祉研究科

 平成27 年度、人間福祉研究科では、大学院諸問題検討委員会と大学院FD委員会を同時開催で計4回開催し、FD活動の充実に向けた検討を行った。2015 年度における主な活動は以下のとおりである。
(1)国連・外交コースの受け入れに関する検討
  現在、SGU構想の一環として検討が進められている「国連・外交コース(大学院)」について、本研究科としては受け入れることとし、受け入れ方法(入試のあり方等)、単位参入のあり方等について検討を重ねた。
(2)大学院科目等履修生の大学院入学後の単位認定
  大学院入学以前に科目等履修生として修得した単位について、入学後は10 単位を限度として認定することとした。
(3)授業評価の実施
  春・秋学期ともに実施。いずれも各授業についてよい評価を得た。
(4)人間福祉学部・研究科開設10 周年記念講演会の開催
  人間福祉学部・研究科開設10 周年を記念し、坂東眞理子氏(昭和女子大学学長兼理事長、)を講師として招聘し、「福祉社会のリーダーシップ」をテーマに講演会を開催した。
(5)前期課程中間報告会、後期課程成果報告会の開催
  前期課程、後期課程それぞれの学生が研究の進捗状況を発表することにより、知見を教員や院生等と共有するとともに、質疑を通して今後の研究に資する報告会を開催した。

教育学研究科

 教育学研究科は毎年、年度末にFD研究会を行っているが、今年度は2015 年6 月10 日と、2016 年2 月15 日の2 回、学部と共催でFD研究会を開催した。
 第1 回FD 研究会は「研究倫理教育・コンプライアンス教育」というテーマで行い、内容としては、研究倫理教育教材のDVDを視聴した。教授会終了後に開催したこともあり、多数のメンバーのほとんどが出席し、欠席者にはDVDを貸し出して、個人的に視聴してもらった。さらに後日、「平成18年~ 25 年における競争的資金の不正な使用」に関しての参考資料をメールにて配布した。昨年度の講演会の「研究指導における研究倫理」に引き続き、教員の研究や研究費の使用についての倫理観を高めるのに有意義な研究会であった。
 第2 回FD 研究会は本学部の芝田正夫教授に「学習指導要領と幼稚園教育要領の改訂と教職員免許法の改正について」というテーマで、現在進められている指導要領の改訂や免許法の改正について解説してもらった。「教職課程科目の大括り化」、「学校インターンシップの制度化」、「アクティブラーニングの視点に立った学びやICT を活用した学びの推進」など、これからの大きな変化に対応できるように備えておく必要があることを学ぶことができた。

国際学研究科

  国際学研究科は開設2 年目だが、FD 活動としては執行部教員が学部生から要望を聞く学生インタビューを院生にも行っている。院生は全員に参加してもらったので、言いにくい点もあったかもしれないが、率直な意見を聴取できた。少人数( しばしば1 対1) の授業が多いので、院生の関心に授業内容を合わせてくれる教員の対応に対する評価が高かったが、これが行き過ぎると学生のレベルへの迎合となりかねないので、大学院授業の質の保持のために教員の間での情報の共有が必要であると認識した。
 FD 研修会は学部と大学院と合同で、大学院科目を学部生に履修させ、そのことを成績証明書に反映させるなど、学部と大学院の連携について話し合った。単に内部進学者を増やすためだけでなく、国際学部のような学際学部においていかに専門科目教育を充実させるかという学部教育の課題の克服のために、大学院の授業を活用する方法を今後も検討していくこととなった。
 また、最初の学位( 修士号) 授与に向けてどの程度の研究水準を院生に求めるべきかについての教員の関心・意識は高く、学位論文の中間報告会には指導教員以外も多く参加し活発な助言が行われた

司法研究科

  司法研究科では、研究科長を含む5名の教員からなる「自己評価・FD 委員会」を原則として毎月1回開催している。今年度のFD 活動としては、次のような活動を行った。
(1) 授業評価:学生による授業評価アンケートを秋学期授業終了時に実施した。また、すべての授業担当者自身の自己評価アンケートも授業終了後になされている。評価結果は、ロースクールホームページ上において、また紙冊子によるものは事務室において教職員・学生を対象に公開している。
(2) 授業参観:各学期期間中に授業参観週間を設けて、教員相互の参観を実施している。また、特定の授業を指定して参観を行い、授業終了後に担当教員退出後、参観した教員と受講していた学生との間で意見交換を行っている。さらにその後、参観した教員と当該授業担当教員との間でも意見交換を行い、授業方法等の改善にむけて率直な議論を重ねている。
(3) 中間アンケートの実施:各学期の授業開始後、原則として第4週目あたりで、授業に関するアンケートを学生にむけて行っている。これは、授業担当者自身が行うもので、これをもとにその後の授業改善に役立たせようとするねら
いがある。(4) 学生との個別面談の実施:春学期成績発表後、担当教員と学生との個別面談を実施している。ここで学生の学修状況の確認や悩みについての相談を行っている。
(5) FD 研修会の実施:10 月28 日に、いわゆるアクティブラーニングに関する研修会を本学高等教育推進センター教育技術主事・武田俊之氏に講師を依頼し実施した。
(6) 外部評価の受審:12 月16 日に、弁護士及び企業法務部部長の2名の外部委員に依頼して、外部評価を受けた。各委員は終日におよび授業参観、学生との懇談等(学生は匿名)を行い、その後ロースクール教員との意見交換会を開催した。また、両委員からの報告書も寄せられている(FDニュースに添付して公開予定)。
(7) FD ニュースの発行:自己評価・FD 委員会において、FD活動に関して「FD ニュース」を作成して教員に配布する予定である。

経営戦略研究科

 経営戦略研究科では、2015 年5 月20 日(水)に、2015年度第1 回FD委員会を開催し、2015 年度上期のFD活動として研究不正防止に関する研修会を開催することを決定した。また、教育ソフトウェア主催の「大学FD学修会2015」に油谷教授を派遣することを決定した。
 前述のFD研修会は6 月24 日( 水) に開催し、研究推進社会連携機構作成の研究倫理についてのDVDを3本見た後で、質疑応答を実施した。
 また、2015 年7 月1 日(水)に2015 年度第2回FD委員会を開催した。6 月24 日に実施したFD研修会について振り返るとともに、5 月29 日( 金) に開催された教育ソフトウェア主催のFD研修会の内容の報告を油谷教授から聞いた。当会は、56 大学の参加があり、IR(InstitutionalResearch) などについて発表があったそうである。また、2015 年度下期のFD活動についても議論し、LUNA の講習会を開催することを決定した。続く10 月7 日(水)の第3回FD委員会では、その学習会の進め方について議論した。
 そして、11 月4 日( 水) に高等教育推進センターから2人の講師を招いてLUNA の講習会を開催した。活発な質問が出て有意義な講習会となった。

神学部

 神学部では、6 月3 日に専任教員を対象に第1 回FD 研修会を開催した。2016 年度のカリキュラム改編に伴い2 年次の科目として「文献講読」を開講するため、「基礎演習と文献講読」というテーマのもと文献講読の授業の進め方や1年次の基礎演習との関連について研修を行った。さらに、大学院との共通の課題としてレポートや論文の剽窃問題について、その実態や程度、対策、またその心理的要因についても学びの時を持った。
 11 月4 日の第2 回FD 研修会では、第1 回のテーマであった「文献講読」を取り上げ、さらに具体的な授業方法について研修の時を持った。その授業方法、アクティブラーニングについて理解を深め、これまでの経験を紹介しながら意見の交換を行った。
 2015 年3 月2 日には、非常勤講師対象に総合支援センターのスタッフを招き「関西学院大学における障がい学生の支援について」と題してFD 研修会を開催した。「障がい学生支援に関する基本方針」「障がい学生支援実施基準(ガイドライン)」について具体的な事例を交えて説明していただいたことによって、理解を共有する機会となった。さらに、神学部として取り組む「少人数教育」「ハンズオンプログラム」についても懇談の時を持ち、その理解と協力を求めた。

文学部

 文学部では、2015 年度のFD 活動として、まず2015 年9 月10 日に「人文演習担当者連絡会議」を開催した。文学部では、初年次春学期の「人文演習Ⅰ」については、文学部11 専修の学生をシャッフルしてメンバーを構成する一方、秋学期「人文演習Ⅱ」については、各専修に分かれて専修の教員が指導する形をとっている。「連絡会議」においては、シャッフル型の「人文演習Ⅰ」の指導内容について、事前に各担当者が提出したリポートやいくつかの事例報告をもとに
意見交換を行い、「人文演習Ⅰ」の意義と可能性について懇談した。
 また2016 年3 月2 日には「人文学の今日的意義」と題するFD 研修会を行った。松見淳子教授が自身のアカデミックキャリアを振り返りながら、精神病棟での患者の行動観察、地域発達支援における大学・学校・自治体の連携、あるいは授業での様々な取り組み等々を紹介しつつ、今日における人文学の意義と役割を論じた。それを受けて、目指すべき本来の「グローバル」とは何か、あるいはそれに対して人文学とその教育はいかなる貢献をなしうるか等について活発な意見交換を行った。

社会学部

 社会学部では、FD委員会が中心となり、組織的にFD活動に取り組んでいる。具体的には、各年度2~3回、教員間の議論や研修の機会を設けており、教員が授業で直面している最も困難な事項を常にテーマとして取り上げている。特に各教員の成功例と失敗例などを共有することを大切に考えている。2015 年度は以下の通り、2回実施した。 11 月25 日には、「学生の私語をめぐって」と題して、FD研修会を開催した。社会学部では、私語に関するC.O.D. への学生の投書を学部として深く受け止め、各教員間の対処法の共有ならびに制度上の根本的な解決策がないか議論した。講義科目では、単純に出席を取ること、特に出席カードは、厳密な管理のもとで配布しなければ、かえって不正利用の温床となり、受講態度の悪い学生をただ単に教室に呼び込むだけになるなどの意見もあった。
 3 月3 日には、「社会学部の教育・研究の未来」というテーマで学部懇談会を開催した。懇談会では3つのテーマ(①研究母体としての専攻分野 ②フィールド文化学専攻分野、データ社会学専攻分野の特性 ③将来構想・人事構想)を設け、学部長、副学部長らが発題者となり、活発に意見交換をおこなった。

法学部

 法学部は、2015年10月14日にFD 研究会を行った。内容は、本年度春学期のスタートアップ演習についてであった。
 当日は、3名の外部講師に出席して頂き、演習の状況および改善すべき点などをお話頂いた。お話によれば、学生が遅刻や欠席をすることなく、積極的に演習に参加するよう常に働きかけて頂いており、その結果、欠席による不合格者は基準が厳しくなったにもかかわらず減少し、また授業で行われる「本の要約」には、昨年よりも優れた要約レポートが増えたということであった。改善点としては、グループによる「法学部パンフレット」作成の時間を十分に確保するために授業のスケジュールを調整すること、中央講堂で実施したスピーチコンテストでの審査中の待ち時間をどのように活用するかを検討する必要があるとのことであった。
 その後、出席者から外部講師に対してLA の活用などの質問があり、今後に向けてより良い演習にするための話し合いが行われた。また、この演習の法学部独自に行う前半部分と外部委託をする後半部分との連携について、とくに学生の学びにしっかりとした連続性があるのかについて、法学部として検証すべきであるとの意見が出された。

経済学部

 経済学部が2015 年度に実施したFD 活動は以下の通りである。
(1)学部の「基礎演習」については、2015 年4 月と2016年3 月に担当者会議を行った。前者は2014 年度、後者は2015 年度の基礎演習運営に関する現状と問題点に関する
共有等を図った。
(2)学部の専門基礎科目「経済と経済学の基礎」に関しては、補習授業の担当者会議を2015 年4 月に行い、科目担当教員とTA の顔合わせおよび進め方、LA の活用方法等に関する確認・情報共有を図った。
  また、2017 年以後の改革に向けた検討に着手した。TA人材の慢性的不足を受け、補習をなくす一方、授業時間内で演習時間を確保し、それらに対応したカリキュラムの修正等を行った。2015 年10 月に専門教育委員会で基本方針を確認後、11 月に作業ワーキンググループを立ち上げ諮問案を取りまとめ、2 月に第2 回専門教育委員会で諮問案の検討・確認を行った。
(3)学部の専門基礎科目「経済と経済学の基礎」「現代経済入門」「経済の歴史と思想」について、2015 年9 月、2016 年3 月の2 回にわたり担当者会を行い、講義内容や採点・評価、授業実施上の課題等に関する情報交換を行った。
(4)シラバスの点検作業は、今年度で3 年目の実施となった。

商学部

  商学部においては、商学部ファカルティ・ディベロップメント委員会によるファカルティ・ディベロップメント活動を行うとともに、専任教員参加によるファカルティ・ディベロップメント教授研究会(講演会、討論会など)などを行っている。
 2015 年度の商学部ファカルティ・ディベロップメント委員会は、4 月15 日( 水)、9 月18 日( 金)、11 月25 日( 水)、2 月24 日( 水) の計4 回開催した。商学部のカリキュラムおよびシラバスについての定期的な検証を行い、その結果を報告書として提出するようにとの商学部長からの諮問があり、その内容について検討を行い、報告書を作成した。
 2015 年度のファカルティ・ディベロップメント教授研究会は、商学研究科と共同で2 回開催され、大半の教員が参加し、活発な質疑応答があった(第1 回:2015 年7 月8 日( 水)、講師:阪智香商学部教授、演題「研究倫理について」、第2 回:2016 年3 月15 日( 火)、講師:岡村浩一郎商学部准教授、演題:「SGU に向けて:イタリア・ボッコーニ大学からの示唆」)。
 この他にも、教授研究会として、商学研究科と共同で教員による研究報告会を行っており、教員の研究活動の活性化を図っている。
 なお、2015 年度の新たな試みとして、初年次教育充実のための「商学演習」履修者向けL.A. 配置、WEB テストを参考にした英語クラス編成(1 年生)が挙げられる。今後、導入の効果を検証しつつ、限られた予算のなかでの効果的な取り組みを検討したい。

理工学部

 理工学部FD 委員会は毎年、FD に関係する活動の経験者や識者を講師に招いて講演会を開催している。2015 年度は本学高等教育推進センター准教授で、SGU 推進本部委員も務められている江原昭博氏に依頼し、本学におけるインスティテューショナル・リサーチ(IR)の現状と課題について、「IR 学生調査データの活用法」という演題で語っていただいた。その結果、単なる学生調査のデータとして学内で情報共有するだけではなく、大学間でのデータ比較による国内にお
ける本学の現状把握や、課題を設定し複数の調査データを分析することで課題解決につなげる積極的な活用方法について学ぶことができた。
 また、2015 年度より全学的にアカデミック・アドバイザー(AA)制度が導入されたが、理工学部ではFD 委員会メンバー間で学生との面談に関する感想や情報共有を行い、教員側の
面談指導能力の向上を図っている。
 他にも三田キャンパスで開催されたメンタルヘルス研修会「アサーティブなコミュニケーション」への理工学部教員の積極的な参加が見られ、自他共に肯定するという考え方に基づくより一層の教育指導能力の向上が期待される。

総合政策学部

 総合政策学部は、FD・カリキュラム委員会のもとで、FD活動とカリキュラムの改善を一体的に推進している。2015年度は、11 回のFD・カリキュラム委員会開催に加え、初年次教育の継続検討、教員等による研究報告会等を実施した。
 FD・カリキュラム委員会では、実施中の国際教育プログラムやハンズ・オン・ラーニング科目についての実態把握と今後の実施方針について議論した。その一環で新たな海外研修プログラムを試行するとともに、5 月にはアジア開発銀行の中尾総裁を招き教員向け講演会を行なった。また今後実施予定のカリキュラム改訂の基本方針や課題、可能性について、総合政策という理念の評価に立ち戻って検討を開始した。初年次教育については、作成した共通教材の使用についての効果や課題、通年体制の是非、専門教育との連続性などを昨年度に引き続き議論した。
 総合政策学部は、専門分野の異なる教員から構成されているため、各教員の専門分野や研究内容、あるいはわかりやすい授業方法の紹介を目的とした研究発表会を実施している。今年度は新任教員を中心として4 名の専任教員が発表し、情報交換を行った。

人間福祉学部

 2015 年度は学部FD委員会を12 月2 日に開催し、前年度から引き続いて初年次教育の改善の取り組みとして、基礎演習を中心に学習における基礎的な知識やスキルおよび倫理について簡単に解説したスタディガイド( 案) について検討した。また、次年度の活動では、教育研究目標2 のもとにある行動計画に記された「卒業研究ガイド」についても議論を進めることを確認した。
 これに先立ち11 月21 日に開催された教授会および研究科委員会にて、自己点検・評価の教育研究目標に関して、カリキュラム委員会、自己評価委員会とともにFD委員会に関わる事項が多いため、2015 年度は合同で研修会を開催することが承認された。そこで、2016 年1 月20 日に学部FD活動として合同研修会を開催した。合同研修会では、初年次教育の中心である基礎演習で用いるスタディガイド( 案) を基に、項目をはじめ文言や活用方法等についてさまざまな意見交換を行い、積極的な参加を得ることができた。その結果、研修会で出された意見を基に内容を改訂し、最終的に学部長室委員会で配布の対象等について検討したうえで次年度以降の活用に向けて取り組む予定である。

教育学部

 2015 年度、教育学部はFD活動として次の2 回のFD研究会を実施した。ともに教育学研究科のFD研究会と合同で行った。
 第1 回は2015 年6 月10 日、関西学院大学コンプライアンス教育のDVD を3 巻視聴した(「公的研究費ガイドライン改正」、「研究者として必要なコンプライアンス意識とは」、「研究活動に関するガイドライン改正について」)。視聴の理解を深めるために、研究推進社会連携機構から提供をうけた資料を教員に配布した。教育学部教員の全員が参加し、研究活動における倫理および不正行為の防止について学ぶことができた。
 第2 回は2016 年2 月15 日、「学習指導要領と幼稚園教育要領の改訂と教育職員免許法の改正について」というテーマで芝田正夫教授が報告し、そのあと質疑応答を行った。学習指導要領等が2016 年度に改訂される予定で、それに伴って教育職員免許法も2016 年度には改正されることが予測される。教員養成を主たる目的とする教育学部にとって、今後のカリキュラムや教育方法の改革に結びつく政策動向を、教授会メンバーで共有し、今後の学部改革にとって重要を思われる視点を確認した。参加者は36 名だった。

国際学部

 国際学部においては、2015 年度に春秋期各2 回、年4 回のFD 研修会を実施した。
 春期第1 回(5 月27 日実施)及び秋期第1 回(9 月30日実施)の研修会では、本年度3 期生を送り出す時期にあたり、3,4 年次研究演習科目及び卒業研究のあり方を再検討すること目的として、教員に対する自由記述式意見集約を事前に行い、それをもとに議論した。
 春期第2回研修会(6 月17 日実施)はキャリアセンターによる2015 年3 月卒業生の進路状況等の報告を受けて質疑応答及び討論がなされ、緊密な情報共有及び研究演習における能動的学習の強化の重要性が改めて確認された。
 秋期第2 回研修会(12 月16 日実施)では、開設2 年目を迎えた大学院と学部教育との連動性をめぐって議論が行われた(国際学研究科と合同により実施)。具体的には、学際系学部カリキュラムの性格上十分な量と質の専門科目を提供しきれていない現状、少人数でしっかり講読・議論させる専門科目を強化したいという教員・学生双方の要望を踏まえ、学部・大学院共同開講科目の設置や早期卒業制度のいっそうの活用、5年一貫修士課程の導入などが検討された。

言語教育研究センター

 (英語)GGJ/Go Global のプログラム開発、自律的学習や協働学習の促進、学習者ポートフォリオの導入をすすめ、CEFR に基づく英語学習効果をメディア利用によって研究調査を行い、発表するとともに教育にフィードバックした。(フランス語)聞く・話すという学習者の弱点をクラス規模の改善により克服できるように、次年度からの申込制度を変更した。(ドイツ語)ドイツ語圏からの留学生との対面タンデム学習、日独学生交流会、ドイツ語母語話者LA の活用により、学習の動機づけを促進した。また、ポートフォリオ作成、使用についても本格的導入のための準備を行った。(中国語)自作教科書の改訂を行った。カリキュラム充実のために教科書統一を決定した。また、履修登録の方法を変更した。中国文化週間を実施し文化交流を促進した。(朝鮮語)教科書について意見交換を行った。(スペイン語)教員の勉強会を実施、文法教授法について検討し、補助教材の使い方も検討した。自作教科書の改訂作業を開始した。センター全体としては、学習の動機づけ、学習者ポートフォリオ導入、協働学習、カリキュラム・シラバス改善、教材開発に取り組み、一定の成果を得た。

教職教育研究センター

 本センターでは、文科省から求められている教職課程の質の保証に応じた積極的・計画的な取組を推進するために、計3 回のFD 研修会を実施した。第1回研修会(7月14 日・専任教員のみ)では、「本年度の教育実習(5~6月を中心に約400 名が参加)の改善と充実」をテーマとし、事前指導・訪問指導の在り方や今後の課題・改善点について検討した。教育実習については、同省から大学による評価の客観性や指導体制の充実が求められている中、実習校確保の方法なども含めて協議を行い、今後も継続して検討することを確認した。第2回研修会(11 月7 日・非常勤講師を含む) では、2013 年度から導入されている「教職実践演習」( 必修科目・4年次秋学期履修) の実施上の課題について意見交換を行った。同科目は多様な授業内容を複数の授業形態を組み合わせて実施するところから、出席者でその課題について共通理解を図り後半の授業に備えた。第3回研修会は、教職課程研究懇話会(12 月18 日) の中で行った。現行の学習指導要領において掲げられている理数教育の推進を踏まえ、数学科教育法の実践方法・内容に関する発表が授業担当者によってなされ、その後全員( 非常勤講師を含む) で情報交換を行った。

スポーツ科学・健康科学教育プログラム室

 2015 年度スポーツ科学・健康科学教育プログラム室では以下のFD 活動を行なった。
(1)関西5 私大体育研修会への参加
 2015 年10 月に同志社大学(今出川キャンパス)で開催された関西5 私大体育研修会に、本プログラム室の室長、副室長が参加した。本研修会は関西学院大学、関西大学、同志社大学、立命館大学、龍谷大学の関西5 私大で構成された研修会である。今年度は、「保健体育科目の現状報告と課題及び課題解決の方策について」というテーマにもとづき、室長が本学の現状報告を行ない、他大学との情報共有を行なった。
(2)スノーボード研究会への参加
 2016 年1 月に実施されたスノーボード研究会にプログラム室構成員2名が参加した。スノーボード初心者、初級者、中級者、上級者各々に対する指導上必要な技術に関する実技研修を受けた。また、昨今問題になっている、ゲレンデ内外での事故に対する防止策、対応法に関しても専門家による講義、実技指導がおこなわれ、同時に参加者全員による情報共有がおこなわれた。

人権教育研究室

 人権教育研究室では、室長室会を人権教育における全学的なFD 推進主体として位置づけ、その下で2015 年度は次のような取り組みを実施した。第1に、4月に教職員対象人権研修プログラムと題し、新たに本学に赴任した教職員を主対象に「関西学院大学人権教育の基本方針」を基にした研修と大阪人権博物館への見学を実施し、本学における人権教育の実情、特に障害学生支援と人権教育との関連について理解を深めてもらった。
 また第2 に、人権に関する様々なテーマを取り上げた研究会、人権教育研究室指定プロジェクトの報告会、公開シンポジウム「どうして「人権」は権利なのか?-グローバル時代におけるHuman Rights という挑戦-」などを開催し、人権教育担当者のみならず教職員としての力量向上の場とした。特に、LGBT 啓発を意図した第3 回関学レインボーウィーク「誰にとっても、いきやすい関学に!」では、昨年に続きリーフレット(今年度より英語版も作成)とステッカーを全教員に配布し、キャンパス内で昨年度以上にステッカーが目につくことになり、直接的な参加ではない形での「意思表示」が多く得られた。また、今年度より教職員からの応募型の研究制度を実施し、自発的な参加意欲と人権教育の主体性涵養と意識向上に努めた。
 さらに第3 として、各学部より新任教員から人権教育科目運営委員を選出していただき、担当人権科目に毎回出席の上で、代表者と共に授業運営に携わって、人権問題についての理解を深めてもらっている。そして第4 に、2016 年3 月7 日に本年度および次年度の人権教育科目担当者(上記本年度運営委員含む)の連絡会を実施し、教授方法改善も含めて情報・意見交換を行なった。今回は「ハラスメントセンターの概要と設置の経緯」と「関学におけるLGBT に関する取り
組む」を紹介し、全体での情報共有を図ると同時に、人権教育科目については、授業評価方法・学生の参加意欲・当事者学生への効果などについて意見交換を行うことが出来た。
今後も、「インクルーシブ・コミュニティ創出に向けて」実現のために、インクルーシブ・コミュニティ促進委員会とも連携しながら、本学の人権教育・多様性が尊重される文化の深化を図っていきたい。

国際教育・協力センター

 昨年度より、国際教育・協力センターでは、交換留学を主眼に据えて開講する日本・東アジア研究プログラムについての検討ワーキンググループを設置して議論を続けてきた。昨年度のワーキンググループでは、通常の授業調査とは別に、協定校から来学している交換留学生を対象にアンケートを行い、日本・東アジア研究プログラムとして提供する科目群が彼らの留学目的に沿った学びを体系的に提供できる科目構成となっているかについて尋ねた。その結果、特定分野・領域に開講科目が集中していたり、交換留学生の関心が高い分野・領域での開講科目が欠落していたりしているなどの課題が浮き彫りになっていた。今年度は、その結果を踏まえて、日本・東アジア研究プログラムを「現代日本プログラム」と装いも新たに改編し、全体的な科目構成を抜本的に見直しただけでなく、各フィールドにおける科目の整備にも着手した。交換留学生の数が急速に増える中、彼らの学問的な関心も非常に多様化してきており、関西学院大学で満足のいく留学生活を送ってもらえるよう今後も彼らのニーズに耳を傾けながらプログラムを充実させていく所存である。

日本語教育センター

 日本語教育センターは、正規外国人留学生、交換留学生、短期外国人留学生、正規日本人学生を対象とするプログラムをもっており、それぞれ別のカリキュラムでプログラムを運営している。グローバルスタディ科目を除いて、その他のプログラムはすべて外国人留学生を対象とするため、教室での授業以外の学習支援や生活・文化順応支援、相談業務が個々の教員に数多く発生する。また正規外国人留学生に対する日本語教育は単なる外国語教育ではなく、卒業論文の作成、口頭発表やレジュメ、レポートの作成、学部・大学院における専門科目の受講に直結するため、成績・評価を出して終わるものではなく、学習成果の十分な見極めとサポートが必要になる。そのような観点からもFD 活動を行っている。
 正規外国人留学生を対象としたプログラムでは、コーディネータおよび科目チーフ担当者が作成したシラバスに基づき、全クラス共通の内容で授業を実施している。各学期授業開始前と終了後に講師会議を開催し、到達目標、授業内容の徹底、および科目担当者による意見交換を行い、授業期間内では講師室内での打合せやメールを利用して、情報共有に努めている。また授業アンケートは本センター独自の質問票によるものを実施し、問題点の洗い出し、その改善を行ってい
る。
 交換留学生を対象としたプログラムではコーディネータが科目担当者から月末報告書の提出を受け、年々増加する交換留学生に対するきめ細やかな指導の実施に努めている。また授業アンケートは、在学期間の短い交換留学生の要望や問題点に素早く対応できるよう、本センター独自の質問票により、学期途中と学期末に2 回実施し、授業方法、内容などについて改善に努めている。
 本センターの留学生を対象としたプログラムはすべてティームティーチングによって指導しているため、教員間の連絡や情報共有が欠かせない。従って本センターに所属する教員は常にクラスの状況や学生一人一人の勉学上の問題点を共有し、お互いの教授方法や進度などの情報を共有している。
その意味で、1 学期に1,2 度開催される講師会(非常勤講師まで含めた教員全員の連絡会)や毎月行われる講師室会(専任、特別契約、常勤講師のみでの連絡会)での議論、そして講師室で頻繁に行われる任意の打合せなどはすべてFD として機能し、授業改善や留学生対応の適切化に寄与している。さらに従来行ってきた関学日本語教育研究会(年2 回)の活動の一環として、昨年度から教員一人一人の教育実践上の試みを紹介し議論しており、実践上の新たな試みの評価や効果などを教員間で共有できるようになった。

キャリア教育プログラム室

 キャリア教育プログラム室では、(1) インターンシップ関連科目、(2) キャリアゼミについてFD活動に取り組んだ。そもそも、本センターの教育カリキュラムは、(a) 講義、(b)小集団ゼミ、そして(c) キャリアゼミという3 段重ねになっている。
(1) インターンシップ関連科目は、 (a) と(b) からなる。(a) は大教室での講義であり、「社会の中での自分」というタイトルをつけている。春学期半年間を通じて、産業界や官界にあるいはNPO に進む将来の道を、タイムリーな情報提供を通じて現在の日本の産業の現状と課題を教えることで、思索し、歩ませたいという意図を持っている。とくに今年から公務員志望者向けの内容を付加した。(b) は秋学期開講である。クラス40 名程度でディベートやディスカッションをさせることで自分自身の発見と自覚を目指すものである。NKS 能力開発センター・紀伊国屋書店等に講師派遣とテキスト開発を委託している。学期終了後に、担当講師およびNKS 能力開発センター、紀伊国屋書店、キャリアプログラム室が一堂に会して、反省と次年度への改革を討議している。ここで共有した改革点はテキストの増補改訂や次年度の授業に反映させている。
(2) キャリアゼミは夏休みや春休みの期間を利用して開講する集中科目である。キャリアゼミA・B・Cの他に、霞が関セミナーや海外インターンシップ(2014 年夏からスタート、ロサゼルス方面) があり、東京での合宿形式が多い。これらの参加者の中から中央官庁総合職が二人決定したことは誇りであり当センターの努力が実ったとも言える。担当教員を中心に、学生の評価や理解度、満足度から問題点を確定し次年度の改良点として、ゼミ運営に生かしている。

共通教育センター

 当センターは2010 年4 月の設置以来、全学科目体系の整備、初年次教育科目「スタディスキルセミナー」や「グローバルキャリアデザイン入門」の提供、ラーニング・アシスタント(L . A .)制度の運用を主なFDに関する取り組み事項として推進してきました。
 2015 年度は上記取り組みの推進と改善に加え、(1) 共同学習空間「ラーニングコモンズ」の円滑な運営と改善、(2)2016 年度より開講するハンズオン・ラーニング科目の開発を行いました。以下、これらの取り組みについて言及します。
(1) 西宮上ケ原キャンパスのH号館1・2階の「H号館ラーニングコモンズ」および中央講堂地下の「中央講堂ラーニングコモンズ」の運用を2014 年度より担っています。「中央講堂ラーニングコモンズ」については、グループワークの促進のため、夏季休暇期間中にセミナーゾーンにグループ学習ルームを3室設置し、グループ学習ルームとしてもセミナーゾーンとしても利用できるスペースに変更しました。また、保温・吸音効果を高めるために、グループ学習ルームとラーニングゾーンの床にカーペットを敷きました。さらに、学生のニーズに合ったラーニングコモンズの運営を目指して、利用者アンケートを実施しました。実施期間は2015 年11 月9 日(月)~ 20 日(金)で、645名の学生から回答を得ました。「声を出してグループワークやミーティングができる」点について「非常に良い」「やや良い」と評価した人数が回答者の87%に上ることから、コモンズならではのメリットを活かした学習活動が行われている様子がうかがえます。今後はアンケートにより得られた学生からの声をもとに、さらに学生の学習活動に有効
なスペースやサービスが提供できるよう改善を図っていく予定です。
(2) 2014 年度に採択された「スーパーグローバル大学創成支援」事業の目玉とされる「ダブルチャレンジ制度」の1 つである「ハンズオン・ラーニング・プログラム」として『社会探究実習Ⅰ・Ⅱ(広島・江田島平和フィールドワーク)』『社会探究実習Ⅰ・Ⅱ(瀬戸内海・豊島環境フィールドワーク)』『PBL特別演習001(福島から原発を考える)』を2016 年度より提供する準備を行ってきました。いずれも受講生自らが課題を探求し、主体的に考え、行動する能力を培うことを主眼におく科目です。平和・環境・コミュニティなどをキーワードに、現地でのフィールドワークを行い、「キャンパスを出て、実社会を学ぶ」とともに、大学での事前・事後の学習を組み合わせることで、より効果的な学びが得られる構成となっています。
 当センターでは、このような課題解決型授業を積極的に開発していくとともに学習環境の改善に取り組んでいます。学生の学習意欲を喚起し、授業を活性化することを通じて、今後も教育の質の向上を目指していきたいと考えています。また、全学的な取り組みの推進が求められている、シラバスの高度化等のFD推進課題に関する調査と検討を進めて、教育の質向上に寄与していきたいと考えています。

大学宗教主事会

本学では、原則8 月を除く月一回、本学の全宗教主事と神学部代表教員1 名、宣教師代表1 名と担当職員の方で構成される「宗教主事会」を開催しその終了後、「宗教主事会」構成員から初等部・中学部・高等部の宗教主事を除いて構成される「大学宗教主事会」を開催し、情報共有並びに意見交換、キリスト教活動計画の策定等々を実施し、各責任部署でのFD につながっている側面もあるが、それに加えて「大学宗教主事会」では春・秋の年二回FD 研修会を実施してきている。昨年度からは、初等部の新設とそれに伴う中高の共学化、千里国際との法人合併といった学院全体の大きな変化の中でのキリスト教主義教育の「一貫性」をめぐって各学校の現状を共有し意見交換を始めた。今年度も引き続き次のような形でFD 研修会を関係者のご協力によって開催した。
・開催日時:2015 年7 月3 日(金)
 報告・発題者:福島 旭 中学部宗教主事
 内容:ケーブルテレビで放映された中学部の紹介映像を見たのち、中学部の聖書科授業カリキュラムの紹介と各種礼拝ならびにキリスト教主義に基づく、生徒の活動の報告を受け、特に完全共学化となって2 年目を迎えての課題と展望に関する現状分析と意見交換を実施。
・開催日時:2015 年12 月4 日(金)
 報告・発題者:福万広信 初等部宗教主事
 内容:初等部の年間行事をスライドを用いて紹介頂いたのち、初等部のキリスト教授業カリキュラムの紹介と各種礼拝ならびにキリスト教主事に基づく、児童の活動の報告を受け、特にキャンパスが離れている中で抱える課題と展望に関する現状分析と意見交換を実施。