2014年度のFD活動報告

[ 編集者:高等教育推進センター       2017年4月28日   更新  ]

2014年度FD活動報告

関西学院大学では各研究科、各学部・教育研究機関等が独自に工夫を凝らしたFD活動に取り組んでいます。以下に各研究科、各学部・教育研究機関等の取り組みを報告します。

神学研究科

 神学研究科の2014 年度FD 研修会においては、春学期に学部の卒業論文の指導と評価との関連で、研究科前期課程の指導と評価及び評価基準について懇談した。また秋学期には、「大学院へのGPA制度の導入および成績評価方法変更に関する件」を議題として懇談した。大学院へのGPA制度の導入に伴い、これまでの成績評価方法を変更することは、一面、よりきめ細かく評価が可能であるが、他面、海外の多様な大学の評価方法とどのように調整するのかという課題についても話し合われた。さらに、昨年度に意見交換の時を持った後期課程の単位制・キャンディデート制導入については正式に決定され、それに基づいて内規改正が行われた。また、今年度も非常勤の先生方との懇談において授業の在り方をめぐって有益な意見交換が行われた。

文学研究科

 文学研究科では、2014 年度から年次毎の研究進捗状況報告書の提出をすべての院生に義務づけるなどして、従来にもまして組織的・系統的な大学院生指導のための工夫を重ねてきた。今年度は、そうした取組をさらに前進させて、教員と事務室が協力して大学院における履修・研究指導・学位取得に関わる体制の見直しをはかり、大学院学生にとっても教員にとってもわかりやすく、丁寧な指導を可能にする体制の構築に務めてきた。
 具体的には、以下のような成果を得ている。
(1) 組織的な研究成果報告書提出の義務付けの本格的実施と、大学院生の研究上の進捗状況の把握とそれに則した指導の徹底
(2) 経年的な改変の累積によりきわめて複雑になっていた『文学研究科履修心得』の全面改訂による履修・研究指導過程の仕組みの整理と周知徹底
(3) 同じく複雑になっていた博士学位(甲号・乙号)取得にいたる手続きの明確化のための「申し合わせ」の作成と周知徹底
 以上諸点を単に執行部による事務的改変に留めず、大学院問題検討委員会で丁寧に議論を積み重ねるとともに、研究科委員会で数度にわたって報告・審議し、大学院における教育・指導過程の改善を図った。

社会学研究科

社会学研究科では、主に以下の3 つの活動を行なった。
(1) アドミッション・ポリシー、ディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシー、履修モデルについて、大学院FD 委員会において検証を行なった。
(2) 学生を対象とし、授業に関するアンケートを春学期と秋学期に各一回実施した。これは、授業・カリキュラム構成・学習環境の充実を目的としたものである。集計後、院生会と研究科副委員長・研究科委員長補佐とで計二回の会合を持ち、アンケート結果をめぐる話し合いを行なった。大学院FD 委員会では、アンケート結果および院生会との話し合いの内容について、報告と懇談を行なった。
(3) 院生教育のサポートのための科目「先端社会講義(研究)I/ J」の成果および改善を要する点について、担当教員と研究科副委員長・研究科委員長補佐との間で振り返り会を実施し、その内容について大学院FD 委員会で報告と懇談を行なった。

法学研究科

 法学研究科では、大学院問題検討委員会がFD 活動を担っており、例年、大学院教務課アンケートと共に法学研究科独自アンケートを実施して大学院生の要望を調査し、それを基にFD 検討会を開催している。
 今年度も7 月25 日に大学院問題検討委員全員と後期課程院生、前期課程院生(プログラム別)によるFD 検討会を行った。昨年度問題とされた選択必修科目と他の授業科目との時間帯の重複問題は文献研究(英)増設によって改善され、来年度からは不開講科目となっていた文献研究(独)も復活され外国文献科目が充実することとなった。また、要求の強かったコピーカード問題も昨年度の後期課程院生の改善に加え、今年度はスキャナー購入によって解決が図られることとなった。また、エキスパート・コース開設後10 年を経たこともあり、今年度初めての取組として教員向けアンケートを行った。
 高度専門職業人養成の必要性は高まってきているが、研究者養成との同時並行的教育には教員の負担も大きく、多くの解決すべき問題を抱えている。はじめてのアンケートで回収率は必ずしも高くはなかったが、来年度以降の教育方法改善の資料として生かしていきたい。

経済学研究科

 経済学研究科は昨年度に経済学部FD 委員会から独立した研究科FD 委員会を設立し、今年度はその活動を軌道に乗せ、一層の充実を図ることを目標に活動を行った。FD 活動の在り方については研究科と学部の間には当然ながら様々な共通点も存在するものの、少数の学生へのより高度な教育の場である研究科ならではの課題等も少なくない。そのような観点から2014 年度は主に次の二つを活動の中心に据えた。(1) 研究科独自の授業アンケート調査の実施と、それらの集計結果に基づくFD 委員会としての確認と点検。(2) 多様な教育バックグラウンドを持った学生が大学院に進学するという近年の傾向を重視した入学前教育の実施。経済学においては数学を多用するため、その基本的理解が十分でない学生が入学後に苦労するケースは珍しくない。このため課程修了に向けて良いスタートが切れるよう、入学前に経済数学入門の集中講義を開講した。今後も学生の授業理解度等の実情を考慮したきめ細かい教育実践を促進すべく活動したい。 

商学研究科

 商学研究科でのFD 活動としては、大学院FD 委員会によるFD活動を行うとともに、専任教員参加によるFD 教授研究会(講演会、討論会など)などを行っている。
 2014 年度の大学院FD 委員会は、2014 年7 月15 日(火)と10 月14 日( 火) に開催した。研究科委員長から大学院FD 委員会に対して、商学研究科のカリキュラムおよびシラバスについての定期的な検証を行い、その結果を10 月15 日(水)までに報告書として提出するよう諮問があり、その内容について検討を行い、報告書を作成した。
 2014 年度のFD 教授研究会は、商学部と共同で2 回開催され、多くの教員が参加し、参加教員との活発な質疑応答があった。第1 回FD 教授研究会:2014 年12 月17 日(水)、講師:藤野真子 商学部准教授、演題:中国の高等教育制度と留学生の動向。第2 回FD 教授研究会:2015 年2 月15 日(日)、講師:阿部 卓也 商学部准教授、「(ドイツ語)授業の手管」。この他にも、教授研究会として、商学部と共同で教員による研究報告会を行っており、教員の研究活動の活性化を図っている。

理工学研究科

 理工学研究科は大学院進学者が多く、大学院生を指導するためのFD 組織は重要である。2012 年度より理工学研究科のFD 推進組織として、大学院理工学研究科FD 委員会を設置し、順調に機能している。また、2012 年度から開講した英語のみで講義・研究を行う国際修士プログラムも順調に進んでおり、現在12 名の学生が受講している。プログラムの問題点をチェックするため、新入留学生全員と面接による聴き取りを行い、既習内容と研究テーマのマッチングの確認、生活面での問題点等について調査した。ここで得られた情報や要望は国際化推進委員会と共有され、大学院教育や生活面の改善に役立っている。その他、今年はアカデミックコモンズにおける学生のアクティブラーニングを推進することを目的とし、理工学部FD 委員会と共同で講演会を開催した(「アカデミックコモンズが拓く新たな学び」2014 年7 月16日 午後3 時10 分〜午後16 時40 分 アカデミックコモンズ1F シアター 本学理工学研究科 巳波 弘佳教授)。本セミナーを通じてアカデミックコモンズのあり方、およびアクティブラーニングの重要性を認識することができた。 

総合政策研究科

 総合政策研究科は、2014 年度に計3 回の委員会を開催し、FD活動を実践してきた。まず第1 回目の委員会において、総合政策研究科のアドミッションポリシー、ディプロマポリシー、カリキュラムポリシーの内容の確認と学位審査基準の確認・見直しを行い、その内容を公表した。特に、今年度修了予定である建築士実務家プログラム1 期生の修了要件についての確認と調整を行
い、研究科委員会においてその内容が承認され、公表された。
 今年度より導入された修士学位取得プロセスに関しては、指導担当者による研究計画書の確認・提出、学位取得への必要要件の徹底などを事前のガイダンスなどを通じて十分に行ったことから特に問題は生じなかった。
 また本年度は、2016 年度から導入予定である新カリキュラムについての議論を集中的に行い、研究者養成に重点を置いたカリキュラムへの変更案を練り、研究科委員会でその内容の確認を進めていった。一方、建築士プログラムと国際実務プログラムに関しては、担当者とのヒヤリングを進め、演習科目へより実践的な内容を反映できるようカリキュラム上の調整を行った。
 さらに、SGU への対応として、現行の英語コースの内容を確認し、新カリキュラムへ移行する場合、英語コースの内容と担当者をどのように調整するかを議論した。これらは新カリキュラム
案に反映される予定である。 

言語コミュニケーション文化研究科

 言語コミュニケーション文化研究科においては、FD 活動の一環として、研究科執行部の教員4名と、言語科学、言語文化学、言語教育学、日本語教育学の各領域の大学院生代表によるFD 研修会を年に1回開催している。その目的は、本研究科のカリキュラム構成、授業内容、教授法、設備、施設、および本研究科で運営する言語コミュニケーション文化学会とその関連行事に関して学生の意見を聴取し、教員との間で議論を交わすことにより、本研究科における教育・研究環境の全般的改善に結びつけることにある。
 2014 年度のFD 研修会は12 月4 日に行われ、学生からは、(1)実習授業における留学生と日本人学生の言語能力の差が考慮されていない、(2) プログラム間で修了必要単位の内容に相違がある、(3) 修士論文要旨の執筆言語として英語以外の研究対象言語が認められていない、などの問題提起がなされた。それを受けて、執行部としては現在、改善に向けての検討を進めているところである。またこれらは、研究科としての中長期的な将来構想に関わる重要な問題でもあり、そうした点においても有意義な機会となった。徹底などを事前のガイダンスなどを通じて十分に行ったことから特に問題は生じなかった。
 また本年度は、2016 年度から導入予定である新カリキュラムについての議論を集中的に行い、研究者養成に重点を置いたカリキュラムへの変更案を練り、研究科委員会でその内容の確認を進めていった。一方、建築士プログラムと国際実務プログラムに関しては、担当者とのヒヤリングを進め、演習科目へより実践的な内容を反映できるようカリキュラム上の調整を行った。
 さらに、SGU への対応として、現行の英語コースの内容を確認し、新カリキュラムへ移行する場合、英語コースの内容と担当者をどのように調整するかを議論した。これらは新カリキュラム
案に反映される予定である。 

人間福祉研究科

 人間福祉研究科では、大学院諸問題検討委員会と大学院FD 委員会を同時開催で計8回開催し、FD 活動の充実に向けた検討を行った。2014 年度における主な活動は以下のとおりである。
(1) 学位授与方針(ディプロマ・ポリシー)の改正
 前期課程、後期課程の学位授与方針を改正し、修得しておくべき学習成果をより明確化した。
(2) 専任教員の任用に関する申し合わせの改正 学生のより幅広い学びに資するため、「専任教員の大学院指導教員任用に関する申し合わせ」を改正し、大学院指導教員の積極的な任用を進めることとした。
(3) GPA制度の導入
 グローバル化の流れの中での成績評価の国際通用性をもたせるため、全学での検討に合わせ、人間福祉研究科においても前期課程におけるGPA制度の導入について協議し、承認を得た。
(4) 授業評価の実施 春・秋学期ともに実施。いずれも各授業について概ね非常によい評価を得た。また、アンケート結果をFD へどのようにつなげるかについて、研究科内で懇談を実施した。
(5) カリキュラムの充実
 「量的調査法」について、特に社会人学生等が学びやすい体系を整えるため、入門的位置付けの「量的調査法A」を新設し、従前の「量的調査法」を「量的調査法B」とするなど、カリキュラムの充実を図った。また、研究科におけるカリキュラム改編のプロセスについて意見交換を行い、整備を行った。

教育学研究科

 教育学研究科は、例年年度末に大学院FD 委員会によりFD 研究会を開催している。今年度は3月14日に学部と合同でFD 研究会を「研究指導における研究倫理」と題して開催した。
 現在、今年度はマスコミ等で研究不正の問題が大きく取り上げられたが、それらをふまえて、研究指導における研究倫理の在り方、研究不正を防ぐ方策について講師を招いて講演をしていただいた。講師は、日本学術振興会より招聘した。なお、今回はテーマの重要さに鑑み、研究推進社会連携機構の支援を受けた。また、他の研究科にも参加を呼びかけた。

国際学研究科

 国際学研究科は2014 年度に3 人の前期課程院生を迎えてスタートしたばかりであり、開講されていない授業も多い。FD 活動としては、大学院を特別扱いせず、学部を対象に行っていることは大学院でも行うことに努めている。執行部教員が学生から要望を直接聞く、学生インタビューを院生にも行っている。学部生は各ゼミの代表者であるが、院生は全員に参加してもらった。特に不満はないようであったが、必修のオムニバス科目が担当者によっては本来、意図していたものと少し異なった内容で行われてしまっていて、受講生の負担ばかりが多くなっていることがわかり、改善することができたことは意義のあることであった。
 FD 研修会は学部と合同で行い、キャリアセンターと連携した「ライフデザインについて」を9 月に実施した。また、教員が他の教員の授業を参観してコメントを書く、教員相互授業参観制度も対象を学部開講科目だけでなく大学院科目に拡大した。ただ、実際には大学院の授業は教員と院生が1 対1 で行っていることが多いため大学院科目の参観はほとんど行われておらず、制度が形骸化しているので今後の検討が必要と考えられる。

司法研究科

 司法研究科では、研究科長を含む5名の教員からなる「自己評価・FD 委員会」を原則として毎月1回開催している。今年度のFD 活動としては、次のような活動を行った。
(1) 授業評価:学生による授業評価アンケートを春学期最終授業終了時に実施した。評価結果は、ロースクールホームページ上において、また紙冊子によるものは事務室において教職員・学生を対象に公開している。また、授業評価全体集計表と授業評価結果報告書は、ホームページで公開の予定である。なお、この授業評価は、今年度から1学期のみの実施に変更しているので、秋学期は実施していない。
(2) 授業参観:各学期期間中に授業参観週間を設けて、教員相互の参観を実施している。また、特定の授業を指定して、授業終了後に担当教員退出の後、参観した教員と受講していた学生との意見交換を行っている。さらにその後、参観した教員と当該授業担当教員との意見交換を行い、授業方法等の改善にむけて率直な議論を重ねている。
(3) 中間アンケートの実施:各学期開始後原則として第4週目あたりで、授業に関するアンケートを学生にむけて行っている。これをもとにその後の授業改善に役立たせようとするねらいがある。
(4) 学生との個別面談の実施:春学期成績発表後、担当教員と学生との個別面談を実施している。ここで学生の学修状況の確認や悩みについての相談を行っている。
(5) 各分野別のFD 会議の実施:今年度はじめて各分野すなわち公法系、民事系、刑事系及び基礎演習科目の担当教員がそれぞれ集まって、分野ごとの取り組みについて議論を重ねた。
(6) FD ニュースの発行:自己評価・FD 委員会において、FD 活動に関して「FD ニュース」を作成して教員に配布した。

経営戦略研究科

 経営戦略研究科では、2014 年7 月9 日(水)に2014 年第1回のFD 委員会を開催し、2014 年10 月22 日(水)に大阪梅田キャンパス、また2015 年3 月4 日(水)に西宮上ケ原キャンパスで2014 年度の教育研究会を開催する旨の活動方針を決定した。
 2014 年10 月22 日(水)に大阪梅田キャンパスで開催した第1回教育研究会では、「研究科教員と実務家教員の共同研究の推進」をテーマに任期制実務家教員も含めた専任教員で議論を行った。
 2015 年3 月4 日(水)開催の第2回教育研究会では、2014年度のFD 活動を振り返るとともに、研究者教員と実務家教員のジョイント・エフォートの成功例として、日本マーケティング学会 オーラルセッション2014 ベストペーパー賞を受賞した共著論文についての発表を行ったほか、schoo WEB-campus を活用したウェブ上での公開講座の試みについて紹介・情報共有を行った。
 また、FD 委員会では、上記教育研究会の企画・実施のほかに関西学院大学経営戦略研究会ジャーナル『ビジネス&アカウンティング・レビュー』第14号に「教員の活動報告」を掲載するかについての検討を行い、掲載することを決定した。あわせて、「教員の活動報告」記入フォーマットや原稿作成スケジュールについても決定した。

神学部

 神学部では、6 月11 日に専任教員を対象に、「卒業論文とその評価について」というテーマのもとFD 研修会を行った。神学部は2013 年度より卒業論文を導入したため、第1 回目となる卒業論文を一つずつ紹介しつつ、指導に関する課題やまた評価方法についての意見の交換をした。その結果に基づき、昨年度決定した卒業論文の評価基準を見直すと共に、2014 年度の卒業論文指導・評価についての懇談を行った。
 11 月5 日には、第2 回FD 研修会として、「初年次教育 LA・TA の活用と基礎教育(英語、基礎演習、文献講読)」について話し合う時を持った。特にLA から提出された報告書をもとに、「基礎演習」を充実させ、LA 自身の学びを深めるために、LA をどのように活用すべきかということを検討した。
 2015 年3 月4 日には、非常勤講師対象に高等教育推進センターのスタッフを招きLUNA の運用についてのFD 研修会を開催した。具体的な事例を紹介していただきながら、各授業における運用について懇談の時を持った。その他、神学部の教育理念、また学生がどのようなテーマに関心を持って卒論などに取り組んでいるかということについて研修の時を持った。

文学部

 文学部では、2014 年度のFD 活動として、2015 年3 月4 日に「大学とはなにか」と題するFD 研修会を行った。橋本伸也教授が近代ヨーロッパ大学史を踏まえ、日本の大学が置かれている状況を高等教育変貌の歴史の中に位置づける報告を行い、「大学とはなにか」という問題を提起した。それを受けて、大学が果たしている多様な機能、アクティブラーニング、学生の意識の変化、入試、企業の採用のあり方等、諸問題について意見交換を行った。
 また2014 年9 月12 日と2015 年3 月4 日に、人文演習担当者会を開催した。人文演習は大学における学びの導入として、3学科11 専修全ての学生に課している科目である。担当者会では授業実践の報告を行うとともに、この科目において共通のスキルとして教えるべきものや剽窃の問題について議論した。また担当者それぞれの授業の進め方や提言をリポート集としてまとめ、次年度以降に活用することを確認した。

社会学部

 社会学部では、FD 委員会の主導のもと、組織的にFD 活動に取り組んでいる。具体的には、各年度2~3回、授業のあり方をめぐる教員間の議論や研修の機会を設けている。教員が授業で直面している最も困難な事項を常にテーマとして取り上げている。特に各教員の成功例と失敗例などを共有することを大切に考えている。2014 年度は以下の通り、2回実施した。
 1 月13 日には、「卒業論文指導」に関するFD 研修会を開催した。社会学部の学びの集大成である卒業論文の指導方法について、各教員が実践しているさまざまな工夫を紹介した。新しい情報機器やサービスを活用した指導方法、逆に、時代やツールが変化しても変わらない添削のノウハウの情報共有・交換の場となった。 3 月4 日には、「入学前から卒業までの教育を考える」という
テーマで学部懇談会を開催した。懇談会では3つの小テーマ(①入学試験について②グローバル人材育成に向けて③正課教育とピア・エデュケーション活動の連携に向けて)を設け、発題者が現
状や取り組みの報告をした後、今後の学部教育の在り方や取り組むべき事項等について活発に意見交換をおこなった。

法学部

 法学部では2014 年10 月1 日にFD 研究会を行った。10 月1日は、1 年生必修のスタートアップ演習を取り上げ、講師を派遣しているNKS および講師、さらにLA を務めた学生2 名をゲストに迎え、本年度の教育内容やLA の起用のありかたについて振り返り検討した。スタートアップ演習は基礎的なスタディスキルを全学生に身に着けてもらうことを目的に、2011 年度カリキュラムより導入されている。この科目では昨年度までLA とTA を併用していたが、今年度よりTA を外した。この研究会の議論としてこのようなLA の全面的な導入の成果が確認され、次年度以降もこの方針を継続すべきという結論を得た。なおこのようなスタートアップ演習の改革については、高等教育推進センター発行の『高等教育研究』第5 号において拙稿「法学部における初年次教育改革」としてまとめている。
 また2015 年3 月14 日の教授会において、学生による授業評価の結果ならびに現状のカリキュラムについて報告と懇談を行った。これらを踏まえ授業改善を進めるとともに、現行のカリキュラムの見直し作業を次年度より開始する。

経済学部

 経済学部が2014 年度に実施したFD 活動は以下にまとめられる。
(1) 学部の「基礎演習」については2014 年4 月2 日に担当者会議を行い、前年度の基礎演習運営についての評価、引き継ぎおよび注意事項の確認、質疑応答と議論を行い、現状と問題点について会議出席者による共有をはかった。
(2) 学部の専門基礎科目「経済と経済学の基礎」の補習授業について、2014 年4 月2 日に担当者会議を行い、引き継ぎや注意点の確認、LA の活用などについて話し合い、現状と問題点について会議出席者による共有をはかった。
(3) 学部の「言語と文化」については、2014 年7 月2 日に言語・文化・宗教担当者による担当者会議を行い、引き継ぎや注意点の確認、さらには現状の共有をはかった。
(4) 学部の専門基礎科目「経済と経済学の基礎」「現代経済入門」「経済の歴史と思想」について、2014 年9 月17 日に担当者会議を学部FD 委員会との共催で行い、内容など運営方法や注意点の確認、質疑応答と議論を行い、現状と問題点について会議出席者による共有をはかった。また、2015 年3 月14 日にも担当者会議と学部FD 委員会を実施した。
(5) 昨年度から始まったシラバス点検作業は2 年目の実施となった。

商学部

 商学部は、商学部ファカルティ・ディベロップメント委員会によるファカルティ・ディベロップメント活動を行うとともに、専任教員参加によるファカルティ・ディベロップメント教授研究会(講演会、討論会など)などを行っている。
 2014 年度の商学部ファカルティ・ディベロップメント委員会は、7 月15 日(火)、10 月14 日(火)に開催した。商学部長から商学部ファカルティ・ディベロップメント委員会に対して、商学部のカリキュラムおよびシラバスについての定期的な検証を行い、その結果を報告書として提出するよう諮問があり、その内容について検討を行い、報告書を作成した。
 2014 年度のファカルティ・ディベロップメント教授研究会は、商学研究科と共同で2 回開催され、多くの教員が参加し、参加教員との活発な質疑応答があった。第1 回:2014 年12 月17日(水)、講師:藤野 真子 商学部准教授、演題:「中国の高等教育制度と留学生の動向」。第2 回:2015 年2 月15 日(日)、講師:阿部 卓也 商学部准教授、「(ドイツ語)授業の手管」。
この他にも、教授研究会として、商学研究科と共同で教員による研究報告会を行っており、教員の研究活動の活性化を図っている。

理工学部

 理工学部FD 委員会は毎年、FD に関係する活動の経験者や識者を講師に招いて講演会を開催している。2014 年度は本学部情報科学科教授で、アカデミックコモンズ活性化委員会コンビーナーを務められている巳波弘佳氏に依頼し、生きた学びの場として神戸三田キャンパスに設置されたアカデミックコモンズの理念・現在の運営方針と活動状況・将来の展望について、「アカデミックコモンズが拓く新たな学び」という演題で語っていただいた。その結果、学生による自学空間を創造するための、プロジェクト型アクティビティをはじめとする様々な工夫について学ぶことができた。さらに、クレセントチューターと呼ばれる院生中心の学習支援システムがレポート作成、成果発表、試験勉強などのフィールドに分かれてきめ細かく対応している状況や、チューター自身の能力向上のための支援体制のあり方などは、ラーニング・アシスタント制度の効率的な運用を考える上でも大きな手がかりを与えるものであった。
 また、理工学部は2015 年度より3 学科が新設され。完成時には学生数は現在の1.5 倍になる。そこで、授業調査の手間などを軽減するため、独自の出席調査アプリを開発した。来年度より運営を開始する予定であり、FD を支援するインフラの一つとして大いに役立つものと期待される。

総合政策学部

 総合政策学部は、FD 活動として、4回のFD・カリキュラム委員会の開催、初年次教育の再検討、教員による研究報告会を実施した。
 FD・カリキュラム委員会では、今年度、主として現在の「学位授与方針(DP)」「教育課程の編成・実施の方針(CP)」「学生の受け入れ方針(AP)」の見直しを行った。現在のところ、変更すべき点は特に指摘されなかった。
 初年次教育委員会では、入学前教育の見直し、基礎演習の今後の在り方について議論した。入学前教育において、これまで講義映像を視聴して、所定のテーマに関するレポートを課していたのだが、教員が指定した書籍を読ませてレポートを作成させるやり方に変更した。基礎演習については、共通教材の開発、通年体制の是非、セメスターごとの共通した指導内容について議論した。特に、広く学部学生に読ませたい書籍を各教員が精選した「総合政策学部の100 冊」を改訂し、新たに100 冊を選んだ。基礎演習を中心に、2015 年度からこの新しい推薦書籍リストを活用する予定である。
 総合政策学部は、専門分野の異なる教員から構成されているため、各教員の専門分野や研究内容、あるいは授業方法の分かりやすい紹介を目的とした、研究発表会を昼休みに実施している。今年度は、7回実施し、新任教員を中心として7名の専任教員が発表し、研究や授業方法に関する情報交換を行った。

人間福祉学部

 2014 年度のFD 活動は大きく分けて2 つの活動からなる。
 まず、第1 に初年次教育(基礎演習)の改善の取組みである。近年基礎演習について学力レベルのバラツキが見られ、運営上の課題や悩みが多く寄せられるようになったことから、担当者を対象にアンケートを実施し、実態把握を行うとともに授業運営上の課題や工夫について調査した。その結果をもとに学部FD 研修会を10 月29 日に開催した。研修会では、積極的な取組みを行っている法学部での事例を藤田法学部事務長より紹介いただき、各学科からも基礎演習の運営における取組みと課題の共有を行った。その後の意見交換では、積極的かつ具体的な提案がいくつか出され、今後の基礎演習における新しい取組みの可能性について検討する有意義な機会となった。
 第2 に、FD 活動の一環として11 月5 日に学部人権問題研修会を開催した。テーマは「セクシュアル・ハラスメント~起こさない、見逃さないために~」と題して、フェミニストカウンセラー
の川喜田好恵氏を招き、さまざまな事例をもとに、改めて問題の重要性や防止の取組みについて考えることができた。

教育学部

 2014 年度は、学部創設から6 年目となりみえてきた関学教育学部の課題の整理と将来構想を踏まえ、「関学教育学部の学士力」をテーマに、学部FD 委員の企画運営による2 回のFD 研究会を実施した。
 第1 回(2014.05.14)では、「関学教育学部で育てる<学士力> -卒業研究の視点から-」というテーマで行った。大学教育の根幹ともいえる各教員のゼミにおける卒業論文指導について、その指導方法や課題認識について事前にアンケート調査を行い、その結果に基づいてグループでの意見交換を行った。
 第2 回(2014.12.10)では、「基礎演習で育てるKG 教育学部の学士力」として、とくに初年次教育に焦点を当てて研究会を実施した。基礎演習は学部4 年間の教育活動の基盤となる科目であるが、複数の教員が担当しており、毎年その担当は入れ替わるため、その内容や方法などに食い違いがみられるようになってきた。そこで、基礎演習の目的や位置づけを確認し、教育目標およびアクティブラーニング型の演習の活性化に関する共通理解をはかった。
 また研究科FD と共催で、日本学術振興会より笹川光氏を講師に招き、「大学における研究倫理をめぐる動向」について、おもに研究費の不正使用、研究活動における不正行為の防止について
の研究会を実施した(2015.03.14)。

国際学部

 国際学部においては、2014 年度に春秋期各2 回、年4 回の
FD 研修会を実施した。
 春期の研修会(5 月28 日及び6 月18 日実施)では、開学5年目を迎え、1 年次基礎演習科目の内容改編及び授業改善を目的として、教員アンケートの回答結果を分析検討し議論した。その
結果を受けて7 月9 日教授会において懇談を行い、次年度に向けて内容の一部改編及び授業内における能動性向上に向けてのLA 活用などの方針が示された。
 秋期第1 回研修会(10 月1 日実施)はキャリアセンターによる2014 年3 月卒業生の進路状況等の報告を受けて質疑応答及び討論がなされ、学生の就職活動に資するという面からも能動的学習の推進が今後さらに重要性を増してくることが再確認された。
 秋期第2 回研修会(12 月17 日実施)では、以上の流れを受け、「高等教育におけるICT 利用の動向」と題し、大学の授業における情報通信技術活用の現状と問題点、具体的にはスマートフォンやタブレットPC を用いた授業実践やMOOC(大規模公開オンライン授業)を利用した反転授業等の方向性、さらにはこれに伴う今後のオフライン授業変質の可能性等に関する報告と授業改善に関する議論が行われた。

言語教育研究センター

 2014 年度言語教育センターでは、授業改善のため以下のFD
活動を行った。
(1) 言語ポートフォリオ評価者研修(2014 年7 月24 日) 本センターがGGJ において推進するプロジェクトの1つである「言語ポートフォリオの導入」に向け、まずは英語科目での導入検討のための評価者育成を目的として、本研修を開催した。講師として、大阪大学 言語文化研究科 言語社会専攻 特任講師(常勤)専任のファーガス・オドワイヤー氏を招き、「ヨーロッパ共通参照枠(CEFR)」に基づく「能力記述枠組み(Can Do List)」および「言語ポートフォリオ」に関する公開講義とワークショップを行った。ワークショップを通して、言語ポートフォリオ導入に向けての具体案や検討事項など、参加した教員間で積極的な意見交換がなされた。本研修を踏まえて、今後の本格的な導入および運用について議論を進めていく。
(2) 言語教育研究センター研究会(2015 年2 月18 日)
 英語常勤講師4名および英語特別講師2名により、種々の教育実践に関する共同研究の成果報告を行った。また、その研究内容については、本センター発行の「センター研究年報」を通して報告した。
(3) ドイツ語インテンシブ・プログラムにおけるLA の導入(秋学期)
 2014 年度秋学期よりドイツ語圏からの交換留学生をラーニング・アシスタント(LA)として採用し、「ドイツ語インテンシブ初級Ⅰ」の授業において導入した。授業実施後は、LA 導入の効果や課題を検討するために、関係者にインタビューを行った(対象者はLA4 名、担当教員3 名、科目履修学生1 名)。本取り組みおよびインタビューの結果については、本センター発行の「センター研究年報」を通して報告した。
 上記の活動に加え、英語・フランス語・ドイツ語・中国語・朝鮮語・スペイン語の各語種において、年間を通じてより充実した言語教育のカリキュラムおよび教材開発、そして研究活動を実践している。引き続き、さらなる言語教育プログラムの推進に向けて、語種を超えて取り組んでいきたい。

教職教育研究センター

 本センターでは、文科省から近年一層求められている教職課程の質の保証に対応し、計3 回のFD 研修会を実施した。第1回研修会(7月8日・専任教員のみ)では、「本年度の教育実習(5~6月を中心に約400 名が参加)の改善と充実」をテーマとし、事前指導、訪問指導の在り方や今後の改善点について検討を行った。教育実習については、同省から大学による評価の客観性や教育実習指導体制の充実が求められており、実習校確保の方法、指導体制の在り方などについて協議を行い、今後も継続して検討することを確認した。第2回研修会(11 月8日・非常勤講師を含む)では、2013 度より新たに導入された「教職実践演習」( 必修科目・秋学期履修) の授業内容・展開上の課題について意見交換を行った。同科目は、多様な授業内容を複数の授業形態を組み合わせて実施する必要があるところから、出席者がその課題について共通理解を図り後半の授業に備えた。第3回研修会は、教職課程研究懇話会(12 月19 日) の中で行った。2015 年4 月から理工学部の新設学科で理科( 中高) の教職課程が新たに設置されることを受け、授業担当者による理科教育法の実践方法に関する発表がなされ、その後全員( 非常勤講師を含む) で情報交換を行った。

スポーツ科学・健康科学教育プログラム室

 2014 年度スポーツ科学・健康科学教育プログラム室では以下のFD 活動を行った。
(1) 関西五私大体育研修会への参加
 2014 年12 月に龍谷大学(深草キャンパス)で開催された関西五私大体育研修会に、本プログラム室の室長、副室長が参加した。本研修会は、関西学院大学、関西大学、同志社大学、立命館大学、龍谷大学の関西五私大で構成された研修会である。今年度は、「教養科目としてのスポーツ・健康科目のコンセプトと現状および今後の展開」および「発達障害の学生の履修状況について」というテーマに基づき、室長が本学の現状報告を行い、他大学との情報共有を行った。
(2) スノーボード研究会冬期研修会への参加
 上記研修会へ本プログラム室構成員2 名が参加した。実技研修と共に、「ゲレンデ英語」に関する講演、「タイプの異なる初心者に対する指導法」に関する議論、「豪雪対策と実習運営法」に関する意見交換等の機会に恵まれ、プログラム室提供科目「余暇生活学演習D冬期アウトドア」の指導において、大いに役立つ研修会となった。

人権教育研究室

 人権教育研究室では、室長室会を人権教育における全学的なFD 推進主体として位置づけ、その下で2014 年度は次のような取り組みを実施した。第1に、4月に教職員対象人権研修プログラムと題し、新たに本学に赴任した教職員を主対象に「関西学院大学人権教育の基本方針」を基にした研修と大阪人権博物館への見学を実施し、本学における人権教育の実情、特に障害学生支援と人権教育との関連について理解を深めてもらった。
 また第2 に、人権に関する様々なテーマを取り上げた研究会、人権教育研究室指定プロジェクトの報告会を随時実施し、人権教育担当者のみならず教職員としての力量向上の場とした。特に、LGBT 啓発を意図したレインボーウィーク「もっとカラフルな関学に!」では、リーフレットとステッカーを全教員に配布したところ、様々な場所でのステッカーが目につくことになり、直接的な参加ではない形での「意思表示」が多く得られた。次年度より教職員からの応募型の研究制度を実施し、自発的な参加意欲と人権教育の主体性涵養と意識向上に努めたい。
 さらに第3 として、各学部より新任教員から人権教育科目運営委員を選出していただき、担当人権科目に毎回出席の上で、代表者と共に授業運営に携わって、人権問題についての理解を深めてもらっている。 そして第4 に、2015 年3 月2 日に本年度および次年度の人権教育科目担当者(上記本年度運営委員含む)の連絡会を実施し、教授方法改善も含めて情報・意見交換を行なった。今回は「ハラスメントガイドライン」と障害学生支援における本学の取り組みを紹介し、全体での情報共有を図ると同時に、人権教育科目については、授業評価方法・学生の参加意欲・当事者学生への効果などについて意見交換を行うことが出来た。
 今後は、「インクルーシブ・コミュニティ創出に向けて」実現のために、インクルーシブ・コミュニティ促進委員会とも連携しながら、本学の人権教育・多様性が尊重される文化の深化を図っていきたい。

国際教育・協力センター

 国際教育・協力センターでは、交換留学生を主眼に据えて開講する日本・東アジア研究プログラムについて検討ワーキンググループを設置した。ワーキンググループでは、授業調査とは別に交換留学生にアンケート調査を実施し、日本・東アジア研究プログラムとして提供する科目群が協定校から来学している交換留学生の留学目的に沿った学びを体系的に提供できる科目構成となっているかについて検証を行った。検証の結果、特定分野・領域に開講科目が集中していたり、交換留学生の関心が高い分野・領域での開講科目が欠落していたりしているなどの課題を把握した。
これらの課題については次年度以降の科目整備を進めていくことをセンター内で確認した。
 また、各種の派遣留学プログラムについては、独自の留学プログラム評価アンケートを実施し、派遣学生の留学前・留学後の外国語運用能力試験のスコアアップ率などを集計するなどのデータをもとにして、各プログラムを実施する協定校担当者と連携を取りながら、授業内容、方法等について改善に取り組んでいる。 

日本語教育センター

 日本語教育センターは、正規外国人留学生、交換留学生、短期外国人留学生、正規日本人学生を対象とするプログラムをもっており、それぞれ別のカリキュラムでプログラムを運営している。グローバルスタディ科目を除いて、その他のプログラムはすべて外国人留学生を対象とするため、教室での授業以外の学習支援や生活・文化順応支援、相談業務が個々の教員に数多く発生する。また正規外国人留学生に対する日本語教育は単なる外国語教育ではなく、卒業論文の作成、口頭発表やレジュメ、レポートの作成、学部・大学院における専門科目の受講に直結するため、成績・評価を出して終わるものではなく、学習成果の十分な見極めとサポートが必要になる。そのような観点からもFD 活動を行っている。
 正規外国人留学生を対象としたプログラムでは、コーディネータおよび科目チーフ担当者が作成したシラバスに基づき、全クラス共通の内容で授業を実施している。各学期授業開始前と終了後に講師会議を開催し、到達目標、授業内容の徹底、および科目担当者による意見交換を行い、授業期間内では講師室内での打合せやメールを利用して、情報共有に努めている。また授業アンケートは本センター独自の質問票によるものを実施し、問題点の洗い出し、その改善を行っている。
 交換留学生を対象としたプログラムではコーディネータが科目担当者から月末報告書の提出を受け、年々増加する交換留学生に対するきめ細やかな指導の実施に努めている。また授業アンケートは、在学期間の短い交換留学生の要望や問題点に素早く対応できるよう、本センター独自の質問票により、学期途中と学期末に2 回実施し、授業方法、内容などについて改善に努めている。
 本センターの留学生を対象としたプログラムはすべてティームティーチングによって指導しているため、教員間の連絡や情報共有が欠かせない。従って本センターに所属する教員は常にクラスの状況や学生一人一人の勉学上の問題点を共有し、お互いの教授方法や進度などの情報を共有している。その意味で、1 学期に1,2 度開催される講師会(非常勤講師まで含めた教員全員の連絡会)や毎月行われる講師室会(専任、特別契約、常勤講師のみでの連絡会)での議論、そして講師室で頻繁に行われる任意の打合せなどはすべてFD として機能し、授業改善や留学生対応の適切化に寄与している。さらに従来行ってきた関学日本語教育研究会(年2 回)の活動の一環として、今年度から教員一人一人の教育実践上の試みを一人15 分程度で紹介し合うこととしたことにより、実践上の新たな試みの評価や効果などを教員間で共有できるようになった。

キャリア教育プログラム室

 キャリア教育プログラム室では、(1) インターンシップ関連科目、(2) キャリアゼミについてFD 活動に取り組んだ。そもそも、本センターの教育カリキュラムは、(a) 講義、(b) 小集団ゼミ、そして(c) キャリアゼミという3 段重ねになっている。
 インターンシップ関連科目は、 (a) と(b) からなる。(a) は大教室での講義であり、「社会の中の自分」というタイトルをつけている。春学期半年間を通じて、産業界や官界にあるいはNPO に進む将来の道を、タイムリーな情報提供を通じて現在の日本の産業の現状と課題を教えることで、思索し、歩ませたいという意図を持っている。とくに今年から公務員志望者向けの内容を付加した。(b) は秋学期開講である。クラス40 名程度でディベートやディスカッションをさせることで自分自身の発見と自覚を目指すものである。NKS 能力開発センター・紀伊国屋書店等に講師派遣とテキスト開発を委託している。学期終了後に、担当講師およびNKS 能力開発センター、紀伊国屋書店、キャリアプログラム室が一堂に会して、反省と次年度への改革を討議している。ここで共有した改革点はテキストの増補改訂や次年度の授業に反映させている。
 キャリアゼミは夏休みや春休みの期間を利用して開講する集中科目である。キャリアゼミA、同B、同Cの他に、霞が関セミナーや海外インターンシップ(2014 年夏からスタート、ロスアンゼルス方面) があり、東京での合宿形式が多い。これらの参加者の中から中央官庁総合職が二人決定してことは誇りであり当センターの努力が実ったとも言える。担当教員を中心に、学生の評価や理解度、満足度から問題点を確定し次年度の改良点として、ゼミ運営に生かしている。

共通教育センター

 当センターは全学科目の提供部署との連携・調整による提供カリキュラムの質的向上と、初年次教育を中心とした授業・学習支援等に取り組むため、2010 年4 月に発足しました。発足以来、全学科目体系の整備、初年次教育科目「スタディスキルセミナー」や「グローバルキャリアデザイン入門」の提供、ラーニング・アシスタント(L . A .)制度の運用を主なFD に関する取り組み事項として推進してきました。
 2014 年度は上記取り組みの推進と改善に加え、新たに(1)アクティブラーニングを全学的に浸透させていく共同学習空間「ラーニングコモンズ」の設置と円滑な運営、(2)Project BasedLearning の推進を視野に入れた「社会連携プロジェクト」の科目提供を行いました。以下、今年度より着手したFD に関する取り組みについて言及します。
(1) 西宮上ケ原キャンパス北西部再開発計画の一環として、H号館1・2階に共同学習スペース「ラーニングコモンズ」を設置し、4月末からその運用を担っています。コモンズは、学生の自主的な活動の場、学生の活動モードにあわせて段階的に展開する学習空間としてデザインされました。学習スペースの提供のみならず、多様なニーズを持った学生の学習活動を側面から支援する機器貸し出しやカウンターサービス等を行い、アクティブラーニングの推進と浸透に取り組んでいます。授業の準備学習や、ゼミ活動の一環でもある成果発表会等に向けた議論と練り上げの場として、終日予想を大幅に超える利用状況となっています。コモンズの飽和状態を緩和するために、11 月末には中央講堂地下に平日限定のラーニングコモンズを新設しました。(2) 学生の課題発見・解決力の育成を主眼におく科目として、2014 年度から「社会連携プロジェクト」を新規開講しました。学内における新たなシーズの発掘や、履修学生が取り組む各種プロジェクトの支援を行っています。今年度スーパーグローバル大学創成事業に採択された本学では、課題解決型授業をよりいっそう積極的に開発していく必要があります。そのモデルプログラムとなるよう、取り組んでいく予定です。
 当センターでは、以上のような学生の主体性を育む参加型授業の提供や学習環境の改善に取り組んでいます。学生の学習意欲を喚起し、授業を活性化することを通じて、今後も教育の質の向上を目指していきたいと考えています。また、全学的な取り組みの推進が求められている、ナンバリングやシラバスの高度化等のFD推進課題に関する調査と検討を進めて、教育の質向上に寄与していきたいと考えています。

大学宗教主事会

 各教科におけるFD への取り組みが行われる中、各学部で必修科目として実施されている「キリスト教学」のあり方に対する情報共有と質の向上を目的として、学部の垣根を越える形で大学宗教主事会のもとに2012 年度よりFD 部会を設置し、これまで以下のような取り組みを実施してきた。
 2012 年7 月6 日:キリスト教と文化研究センターの研究プロジェクトの一つ「関西学院におけるキリスト教主義教育の展開」研究会に合流し、国際学部の「キリスト教学」とキリスト教活動に関する発表を平林孝裕国際学部教授・宗教主事より受け意見交換を実施。
 2012 年10 月5 日:大学宗教主事会において、経済学部の「キリスト教学」とキリスト教活動に関する発表を舟木讓経済学部教授・宗教主事が行い意見交換を実施。
 2013 年7 月5 日:大学宗教主事会において、総合政策学部の「キリスト教学」とキリスト教活動に関する発表を村瀬義史総合政策学部准教授・宗教主事が行い意見交換を実施。
 2013 年10 月4 日:大学宗教主事会において、商学部の「キリスト教学」ならびにキリスト教活動に関する発表を山本俊正商学部教授・宗教主事が行い意見交換を実施。2014 年7 月4 日:大学宗教主事会において、各学部宗教主事も講義等に関係している神学部のカリキュラムの理念と内容に関して、中道基夫神学部教授(教務担当副学部長)に発表を頂き意見交換を実施。
 2014 年10 月3 日:大学宗教主事会において、関西学院の一貫教育の情報共有として高等部のキリスト教主義教育に関して松隈協高等部宗教主事に発表を頂き意見交換を実施。
 以上のほかに、2013 年度、2014 年度はそれぞれ一泊の研修会を実施し、各学部におけるキリスト教主義教育・活動に関する情報交換と意見交換を実施している。