2010年度のFD活動報告

[ 編集者:高等教育推進センター       2018年9月26日   更新  ]

2010年度FD活動報告

関西学院大学では各学部が独自に工夫を凝らしたFD活動に取り組んでいます。以下に各学部・教育研究機関等の取り組みを報告します。

神学部

2010 年度神学部では、学部行事として6 月30 日(水)と12 月1 日(水)の4時限目に専任教員を主体としたFD研修会を実施し、また3 月1 日(火)には非常勤講師の先生を対象とした研修会を実施した。その他、教育活性化資金を用いてラーニング・アシスタントを投入した基礎演習BとDの担当者会は秋学期のはじめに行い、打ち合わせを行った。
 春学期の6 月30 日には吉岡記念館会議室2においてカリキュラムポリシー、カリキュラムマップを中心に協議したが、学部カリキュラム全体について専任教員が認識を共有することができたように思う。また秋学期の12 月1 日には大学において導入されたLUNA の講習会を実施した。場所はF 号館のPC 教室で具体的にLUNA の使い方を高等教育推進センターの方から指導していただいた。
 非常勤講師の研修会は吉岡記念館会議室1で10 時から2時半まで実施した。午前は学部において作成したDP ならびにCP を中心としたカリキュラムの説明やシラバスなどにかかわる学部の考え方をお伝えし、午後は全体討論の場とした。日頃の授業運営での問題点、AV 機器のトラブル問題、学生の欠席や遅刻のことなど、率直な意見を伺い、話し合う場となった。出席者は13 名であった。

文学部

  文学部では、今年度は3回のFD 活動の機会を設けた。秋学期初め(9月16 日)には、春学期の人文演習I の担当者会が催された。この数年必ず話題となるのが、1クラスの学生が多いことに起因する、少人数ゼミとしての授業進行の困難や教育効果の低下である。ただし、この問題は本質的には学内の慢性的な教室不足や開講科目数の制限、ST 比などに関わり、単純に人文演習のクラス数を増やすなどの、学部だけでの対処が難しい。FD 研修会(2月16 日)ではコピペをテーマに取り上げ、他大学に先駆けて大規模コピペ検索システムを導入した阪南大学でシステム開発に携わった、花川典子教授の講演会を行った。阪南大学では、今年度から教育システムの学生ポータルサイトから学生の期末レポートの提出が義務化されたのを機に、同システムが導入された。レポートの課題は様々であり、コピペ率が高いレポート=悪質な剽窃レポートとみなされるものではないが、コピペ率の高い(または低い)課題に見られる特徴や学生間のコピペなど、システムが明らかにしたことは、我々教員に熟考を促すものであった。秋学期の人文演習II の担当者会は3月14 日に開催の予定。

社会学部

  〈各教員の授業に関する資質向上〉という意味のFacultyDevelopment としては、社会学部ではそれぞれの工夫と洞察、直面している困難と失敗例などを共有することを最重要視している。具体的には、1 月と3 月に延べ10 時間におよぶ研修と議論の機会を設けている。今年度は、「社会学研究と学部教育をいかに架橋するか」などが論点に挙げられた。
 また、〈学部組織としての教育に関する資質向上〉という意味でのFD に関しては、2010 年度教育研究活性化資金を活用して「社会学部授業補佐(SSA)」という新制度を試行した。これは、多人数講義の担当教員が希望した場合、成績優秀な上級生にピアリーダーとしてクラスの運営に参加
してもらうというものである。単年度かぎりの試みであったが、ピアリーダーのミーティングの中で様々な課題と可能性が指摘された。次年度以降、LA 制度を効果的に活用するための貴重なデータが得られたように思う。

法学部

 法学部FD研究会は、2010 年6月2 日15 時10 分~ 16時40 分、法学部大会議室において、「法学部カリキュラム改革を考える」のもとに、法学部教員30 名の参加を得て開催されました。昨年度に引き続き、2012 年度からの実施に向けて鋭意進められている法学部カリキュラム改革の基本内容について、自由活発な情報交換および意見交換が行われました。
 主な内容は、コース制と演習科目に関するものです。コース制では、司法特修コースの新設および公共政策コースと地域政策コースとの合併が検討されました。司法特修コースの新設は、法科大学院進学希望者をはじめ、より高度で深い法律学習を希望する学生のニーズに応じるものです。演習科目では、各年次の演習教育の内容と相互関連について検討されました。内容は豊富で多岐にわたりますが、今回の最も大きな改革は、これまでの1年次の法学・政治学基礎演習(通年4単位:必修)を、導入演習(春学期2単位:必修)と法学・政治学基本演習(秋学期2単位:選択必修)に再編成した点にあります。共通学士力、社会人基礎力に関する初年次教育として、法学・政治学を学ぶために必要なスタディースキルの修得を独自のものとして位置づけたことによるものです。

経済学部

 経済学部ではFD に関しての活動として、2010 年度は主に基礎科目に焦点を当てた授業報告会を数回行った。報告会は「基礎演習」担当者会と「経済と経済学の基礎」授業報告会の2つが行われ、効果的な授業の進め方等についての意見交換をする場所として重要な意味を持った。詳細は以下の通りである。
(1)「基礎演習」担当者会
 経済学部では基礎科目として、1年生の演習(ゼミ)科目として「基礎演習」が必修科目となっている。この科目ではレポートの書き方、プレゼンテーションの仕方、ディベートなどを学び、大学での学習をより効果的なものにする上で重要な導入科目となっている。経済学部では「基礎演習」に関して、秋学期に担当者会を行い授業方法の改善に役立てている。本年度は経済学部基礎教育部会のもと担当者会が1月に行われ、授業内容やゼミ学生の所見に関する報告がなされ、種々懇談がなされた。特に、ゼミの活性化のための様々な工夫が紹介され、学生同士の良好な友人関係の早期構築の重要性やディベートに関する効果的な指導法などが紹介された。また、自分の考えを論理的に構成できる能力を持っている学生があまり多くないなかで、どのようにして学生にしっかりとしたレポートを書かせるかについて幾つかの指導方法が報告された。
(2)「経済と経済学の基礎」授業報告会
 経済学部では基礎専門科目として、1年生で2科目(春学期の「経済と経済学の基礎A」と秋学期の「経済と経済学の基礎B」)、2年生で1科目(春学期の「経済と経済学の基礎C」)が必修科目となっている。これらの専門基礎科目は2年生以降に学ぶ専門科目の土台であり、その習得度の向上はその後の専門科目の学習効果を高める上で極めて重要である。そのため経済学部では「経済と経済学の基礎」科目に関して、春学期と秋学期に計2回の報告会を行い授業方法の改善に役立てている。本年度の7月と1月に行われた授業報告会では、次年度担当予定者もオブザーバーとして報告会に参加してもらい活発な議論が行われた。報告会では、各担当者は講義内容や成績に関する資料(シラバス、講義内容の抜粋、成績の分布状況の変化や傾向を分析した
資料、授業に関する学生のアンケート結果など)を提示し、授業形態、出席状況、試験形態、授業補佐の利用方法等に関する説明を行い、授業における問題点や工夫点などを報告した。昨年度から引き続きの担当者に関しては、昨年度の授業報告会で報告した問題点の改善方法なども紹介した。報告会では自由活発な情報交換、意見交換により、各担当者に共通した幾つかの課題や問題点が浮き彫りになった。特に重要なものとして、学生の成績に関しての分散が大きくなってきているという報告があった。報告によると、非常に優秀な学生も多くいるものの、成績不良者も増えてきており、成績下位の学生に対応できるような工夫を早急に議論していく必要性が指摘された。

商学部

 商学部では、2010 年度に将来構想委員会FD 部会によるFD 教授研究会が2 回開催された。
 第1 回は、2010 年5 月26 日(水)15 時20 分から約1時間半にわたり、「商学演習および人文演習の運営について」をテーマとして開催された(論題提起:寺地孝之教授、司会:山口隆之教授)。近年、学生の質の確保が多くの大学において喫緊の課題となっており、商学部のカリキュラムでは、第1学年に商学演習、第2学年に人文演習を設置しているが、かかる少人数クラスは、学生と膝を付き合わせた指導が可能なクラスとして重要なばかりでなく、その後の学生の学習態度や学習計画に大きな影響を与えるものである。各教員レベルではこうした少人数クラスの運営において様々な工夫を凝らしているものの、そうしたノウハウが商学部の教員全体で必ずしも共有されているわけではない。そこで、(1)最近の商学演習と人文演習における学生の受講態度の実態と問題点を確認し、(2)各教員が実践している創意工夫(たとえば、個人指導の方法、学生の発言・積極的参加を促すための工夫、欠席を重ねる学生の取り扱い、リポートの書き方の指導、課題の設定方法など)を披瀝し、(3)商学演習や人文演習の運営のあり方や入学~中期段階(研究演習所属以前)における学生への指導について、教員が心掛けるべき事柄と方策について活発な議論を交わした。
 第2 回は、2010 年12 月22 日(水)15 時20 分から約1時間半にわたり、「経済学部のカリキュラムについて」をテーマとして開催された。商学部では2012 年4 月からの新カリキュラム導入のために、2009 年度から教授会等で懇談や審議が重ねられている。商学部のカリキュラム改編は約10 年ぶりであり、よりよい改編を進めるにあたり、2008 年度にカリキュラム改革を決定し2009 年度より順次実施している経済学部の状況・方向等について経済学部の田中敦教授(2007 ~ 2008 年度教務主任)に御講話いただいた。内容は、一連のカリキュラム改革の概要、カリキュラム改革のポイントとして研究演習、基礎演習、経済英語教育の改革、体系的・段階的な経済学教育、外国語科目の再編等であり、御講話後は多くの質問が商学部の教員より寄せられた。

理工学部

 理工学部のFD 活動として最も特徴的であり、かつ積極的に取り組まれているのが、高校数学リメディアルに対するFD 推進である。基礎学力の低下が待ったなしの状況となりカリキュラムの改編すら迫られるなか、2010 年度から理工学部物理学科、情報科学科、人間システム工学科では、テキストに基づく入学前教育、入学直後の「数学基礎力テスト」など、数学リメディアルプログラムを実施している。このプログラムの実施により一定の効果が見られたため、2011年度は6 学科中5学科が参加することとなっている。しかしながら、今後はリメディアルのレベルでなくなってくる可能性も十分に考えられるため、FD 講演会やFD 研修会を通じて、他大学、他プログラムの情報収集や、担当教員との意見交換を進めて、より効果的なリメディアルのあり方を模索している。大学院における活発な研究・教育活動の推進を支える観点からも、十分な基礎力を身につけ、柔軟な思考力で未知の問題の解決に取り組める人材の育成が求められる。高校数学リメディアルを筆頭に、多面的、多角的な取り組みを推進しているのが理工学部のFD 活動なのである。

総合政策学部

 2010 年度、総合政策学部では3月14 日研究科委員会終了後、FD として基礎演習担当教員により教育方針、目標、共用資料について検討、確認を行った。またバラエティ豊かな教員間を横断する機会として各種の講演会、セミナーを開催した。例えば学科紹介セミナーとして「2010 年度学科紹介連続セミナー」を行った。このセミナーはチャペルアワーを用い全24 回24 人の講師が各学科の特徴ある教育や研究活動を紹介する企画として行われた。さらに多くの講演がビデオ撮影され、KG-TV という総合政策学部ホームページの動画発信サイトから公開され、多くの方から視聴していただいた。このセミナーは学科紹介を目的に1 回生を対象として行われたものだが、実際には多くの教員の参加聴講があり、総合政策学部の幅広い教育、研究情報の共有の場として機能した。また、オランダ元首相ファン・アクト氏の講演会をはじめ国際問題から能楽まで幅広い内容を網羅する19 回の講演会があり、リベラルアーツを基本とする本学部の教員の意識啓発に寄与した。

人間福祉学部

 人間福祉学部では、文部科学省に提出した学部設置届出趣旨書に「教員の資質の維持向上(FD)の方策」を記載しており、これをガイドとして、FD 委員会を設置し学部FD を推進している。設置3年目の2010 年度は、以下のような「教員の資質維持と向上のための活動」を実施した。
 学部FD 委員会を2回開催し、学部FD 研修会を1回実施した。研修会では、「人間福祉教授法~学生のメンタリティを考慮した学習支援とは~」と題した講演とワークショップを実施した。人権教育に関しては、学部人権問題研修会委員会を2回開催し、「セクシャルマイノリティと人権」と題した研修会を1回実施した。授業運営についての研修および教員同士による授業の評価については、前年度と同様に学部研究会において、教員の研究の紹介と評価という形で4回(発表者数は8名)実施した。学生による授業評価についても昨年度同様、大学が実施する授業評価に参加し、実施した。学生および教員に対する結果のフィードバックについても大学の手順に従った。 昨年度に引き続き、教員の教育研究を互いに理解し、学生の理解を深めるためのDVD の作成作業を続けたが、まだ完成には至っておらず、次年度の課題となった。昨年度から始まっている教員の最新の研究を紹介する本の出版も次年度の課題となった。

教育学部

 2010 年7 月7 日と12 月1 日にFD 研究会を開催した。いずれもほとんどの教員が参加し、盛況であった。7 月の研究会のテーマは、聖和キャンパスの施設と設備の諸問題であった。参加者を10 名程度の4 グループに分けて話し合いをしたのち、全体会で課題を確認した。教室については、座席数やOA 機器の不足、演習室の不足、模擬授業用の教室がないことなどの諸問題、加えて、学生にはキャンパス内の居場所がないこと、食堂が狭いことなども指摘された。最後に、聖和キャンパス整備にむけた総合的な計画を作成する必要があることが教員の間で共有された。この研究会のあとで、高等教育推進センターが中心となって進めている来年度の授業調査について、学部FD 委員がその素案を紹介した。12 月1 日の研究会は、大学における研究と授業をテーマとした。最初に学部長が、研究業績データベースをもとに、教育学部教員の研究活動の特徴について報告した。学校に赴いて講演や、指導・助言をすることが多いこと、多くの教員が自治体で教育・文化等についての諸会議で委員を務めていること、などを学部の特徴として指摘した。
次に、音楽科教育の教員が、自分自身の授業改善への試みを紹介した。それをもとに、教育学部における授業のねらいや方法について議論した。

国際学部

 本年度の国際学部FD として、まず教授法研修会が挙げられる。春学期中盤に90 分にわたり、「スタディスキルとライティングスキル指導について」をテーマとし、本学部の専任教員を講師として、本学部1 年生を対象とした「基礎演習」のための指導法研修会が行われた。続いて専任教員相互授業参観がある。特に時期は限定せず、本学部1 年生全員を履修対象とした「国際学入門」と「国際地域理解入門」を対象科目とし、授業参観の機会が広く全教員に与えられた。参観希望者は事前に授業担当者に連絡し、参観後には感想・コメントを事務室経由で授業担当者に提出し、後日の意見交換会の際の資料とした。
 次に学生インタビュー調査がある。基礎演習のゼミ委員を招集し、講義内容や学生生活全般、学部内の設備等に関して感想や要望を聞き取り、その結果は教授会で共有された。
 最後に学習アドバイザリー研修会がある。本学部の「基礎演習」の担当教員には、各学生の希望進路を踏まえて2年次以降の適切なコース科目履修に関して指導を行うことが求められるが、そのための事前研修として学習アドバイザリー研修会(ライフデザインワーク指導のための講演会)が秋学期に実施された。

言語教育研究センター

 本年度、言語教育研究センターでは授業改善の一環として2つのFD 活動を行った。1つは、言語教育研究センター会議(2010 年5 月27 日)における外国語教育の事例研究である。ここでは、6名の言語教育科目担当の新任教員(田禾・経済学部助教、韓燕麗・経済学部助教、森田由利子・経済学部准教授、山田一美・理工学部専任講師、大貫隆史・商学部准教授、梅咲敦子・商学部教授)に、前任校における外国語教育の事例をお話しいただき、それに基づき意見交換を行った。もう1つは言語教育研究センター共同研究「大学における言語コミュニケーション教育ならびに言語文化教育のカリキュラム・教材の開発と研究」である。毎年、各語種(英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、中国語、朝鮮語、日本語)ごとにカリキュラム・教材開発の共同研究を行い、成果発表を行っている。本年度は、センター研究会(2011 年2 月17 日)にて、英語インテンシブ・プログラムの教材開発について5名のIEFL(Joshua Cohen,A n d r e w S o w t e r , S u s a n Gilfert, Marian Wang, JohnEidswick) が共同研究の成果を発表した。