2009年度のFD活動報告

[ 編集者:高等教育推進センター       2017年4月28日   更新  ]

2009年度FD活動報告

関西学院大学では各学部が独自に工夫を凝らしたFD活動に取り組んでいます。以下に各学部・教育研究機関等の取り組みを報告します。

神学部

 神学部では、2009年度に合計三度のFD研修の場をもった。専任教員のものとしては春学期は7月1日に、秋学期は11月11日に定例のFD研修会を、また3月1日は非常勤講師を対象としたFD研修会を実施した。春学期のFD研修会では、知らないと適切に関われないことが危惧されるので、発達障害について学びのときをもった。秋学期のFD研修会では、ディプロマ・ポリシーを主題とした勉強会を催した。ディプロマ・ポリシーやカリキュラム・ポリシーをめぐって討議し、神学部としてのディプロマ・ポリシーの素案も提示され、懇談をした。3月1日には非常勤講師を対象としたFD研修会を行い、最近の学生の動向やレポートの盗作問題などについて議論した。

文学部

 文学部では、本年度は春学期に1回、秋学期に2回、計3回のFD活動の場を設けた。まずは春学期の「『人文演習I』担当者連絡会議」で、これは文学部学生の必修科目であり、初年次教育の場となっている同科目の終了後に担当者が集まり、問題点について意見を交換する場として例年開催されているものである。今年度は9月17日に開催し今年度発生した問題点を明らかにするとともに、秋学期の『人文演習II』の担当者へ引き継ぎ、3月15日には「『人文演習II』担当者連絡会議」が開催された。秋学期には2月17日に「成績不振等によって授業に出て来なくなった学生へのアプローチ」をテーマにFD研修会が実施された。近年問題を抱え、長期に欠席する学生が増加傾向にある。そこで本年度の研修会では、試験的な取り組みとして、学生部学生支援センターのスタッフにも同席いただき、カウンセラーの方との意見交換と議論が行われた。

社会学部

 社会学部では、今年度から実施した3系7領域の新カリキュラムのもとで、「社会学リレー講義」「インターミディエイト演習」を開講した。これらの新科目をふくむ新カリキュラムの実施のフォローアップが、今年度の社会学部におけるFD活動の主たる目的だったと言えよう。二年次履修の「インターミディエイト演習」を一年次の「基礎演習」と三年次以降に開講されている「演習I」「演習II」「実習I」「実習II」に続く一連の教育体系と位置づけて、まずは「基礎演習」に対する学生の反応、効果、問題について話し合い授業にフィードバックした。「社会学リレー講義」では開講前に各担当者の講義内容を共有できるように全担当者にレジュメを配布し、連続した内容とレベルの授業ができるように工夫した。しかし多人数受講のため、担当者の評価採点の負担が重過ぎることや、遅刻や私語が多い等課題は残った。これらの問題は「学生の授業評価」やTAからのコメントをもとに、教授会等で議論しよりよい実施方法を探っている。

法学部

 法学部FD研究会(以下、本研究会という。)は、1月13日「演習教育を考える」というテーマのもとに開催された。本研究会のテーマは、現在、法学部において進められているカリキュラム改革における重要な柱の1つである「演習教育」の再編成・再構築と深く関連していることもあり、まず教務主任から「演習教育」の「現状と問題点」、「改革の方向性」について報告がなされ、その後若干の演習担当者からの補足を得た後、自由活発な情報交換および意見交換が行われた。基礎演習・法学教養演習・人文演習、研究演習については、(1)学生の多様化したニーズに対応していく必要がある(2)各担当教員のあいだで演習教育の到達目標が充分に共有されていない、という問題点が指摘された。演習教育のゆくえとしては(1)基礎演習の位置付けと内容の再定義(2)2年次以降の演習をどうするかという問題が、課題としてあがった。

経済学部

 経済学部ではFDに関しての活動として主に二つのことを行った。一つは専門基礎科目「経済と経済学の基礎」に焦点を当てた授業報告会であり、もう一つは「授業連絡ボード」の効果的な活用方法を学ぶ勉強会である。授業報告会は7月と3月の計2回行い授業方法の改善に役立てている。各担当者は授業における問題点や工夫、改善方法などを報告した。また次年度担当予定者も参加し自由活発な情報交換、意見交換がなされ、各担当者に共通した幾つかの課題や問題点が浮き彫りになり、来年度以降のFDでの更なる議論の必要性も指摘された。7月22日には学部活性化部会のもと、「授業連絡ボード」の活用方法に関する勉強会を行った。授業連絡ボードの利便性と応用性が十分認識され、今後積極的に活用することでより効果的な授業を行うことができるとの感想が参加教員から多数く聞かれた。

商学部

 商学部では春学期1回、秋学期1回のFD教授研究会を開催し、活発な議論を行った。第一回は6月17日に、第二回は12月2日に行われた。春学期に行われた研究会では商学部の准教授を講師として、「関西学院大学における語学教育の現状―第二外国語担当者の視点から―」というタイトルの報告がなされ、本報告内容を土台とした活発な議論が行われた。今回は語学教員による報告ということで、商学部専門分野の教員にとっても教育の質を高めるに際しての語学固有の問題を知る良い機会となった。秋学期に行われた研究会では、本学部においてFD委員会を内包する「将来構想委員会」を中心として「商学部の授業における学生の受講態度について」というタイトルのもとディスカッション形式での意見交換が行われた。

理工学部

 理工学部で扱う専門科目は数学・物理系科目を中心に積み上げ型の講義科目が多く、教育の改善をするためにも文系学部とは異なる課題がある。理工学部では毎月一回、FD委員会を開催し、上記問題を改善するための話し合いを行ってきた。2008年度に教員が教育上に直面している問題点と改善目標の意識調査を行った。2009年度は教員ニーズの高い学力差間の大きな集団への対処法と学生を惹きつける講義法に焦点を絞り、講師を招いて講演会を開催した。9月16日に行われた龍谷大学大学教育開発センター長・松本和一郎氏は「龍谷大学数理情報学科の数学基礎教育改善の試み」と題して、龍谷大学のLAによる支援制度について講演された。次に講義手法を扱う内容として11月18日にアクティブ・ラーニング社の羽根拓也氏を招いて「学生を能動的人材に育てる授業技術」について講演会を開催した。

総合政策学部

 2009年度、総合政策学部ではFD活動として単独の活動は行っていないが、二つの新学科、都市政策学科と国際政策学科を開設し、これに伴い大幅なカリキュラムの改編が実施された。また入学時に学科分属を行わず2年進級時に所属学科を決定する方式へ変更されたのに伴い、1年次学生への学科紹介を4月、9月に2回にわたり行い、各学科の教育内容、特徴について学生への適切な周知を図った。こうしたガイダンスや学科HPの更新のため、学科ごとに教員間で各学科の特徴ある教育内容や入門科目に位置付けられる科目について、内容の精査、改編が行われた。さらに、2009年3月31日にFD研修を兼ねた総合政策学部教員研修会を開き、就任予定の新任教員へのオリエンテーションを行うとともに、学部教員との間の懇親会を開催した。このオリエンテーションで、学部カリキュラム、学生活動などの説明を行い、成績評価や講義シラバスなどについての案内など、FD活動を包含する研修が行われた。

人間福祉学部

 人間福祉学部が文部科学省に提出した学部設置届出趣旨書『関西学院大学人間福祉学部設置の趣旨及び特に設置を必要とする理由』に「教員の資質の維持向上の方策」についての記載がされており、これをガイドとして、FD委員会を設置し学部FDを実施しているところである。設置2年目の2009年度に学部FD委員会が行った教員の資質維持と向上のための活動は以下のとおりである。(1)FD委員会を6回開催(2)シラバスの点検については社会福祉士及び精神保健福祉士の法改正による新課程がスタートしたためカリキュラムの一部を変更し学生のニーズに応えることができた(3)授業運営についての研修および教員同士の授業評価については学部研究会やFD研修会を開催(4)学生による授業評価については大学が実施する授業評価に参加(5)人権教育に関する研修会を実施(6)教育業績の公開、出版助成に関しては検討を継続(7)研究業績の公表として学部紀要を発刊、などである。次年度の課題としては、(1)教員同士の授業評価方法についての再評価(2)教育方法の開発、教科書の出版(3)研究業績表彰の検討などである。

教育学部

 2009年4月に開設した教育学部では、初年度より学部内に授業評価・FD委員会を設け、そのもとでFD活動を行った。学部のFD研究会を2回、研究科のFD研究会を1回開催した。ともに構成員のほとんどが参加し、有意義な研究会となった。6月24日に「基礎演習の運営について」をテーマに学部として最初のFD研究会を開催した。1年生の必修科目である基礎演習を担当している3名の教員が実際の基礎演習の運営について報告し、そのあと意見交換を行い、次にFD委員会のメンバーから「これからのFD活動の在り方について」というテーマで発題があり討論を行った。第2回のFD研究会は12月2日に開催した。芝田学部長が「臨床教育学とは」というテーマで学科の理念・目的、及び臨床教育学の入門として1年生に開講している「臨床教育学入門AB」のシラバスと内容を紹介した。教育学研究科のFD研究会は7月8日に開催し、芝田学部長が「大学院の授業評価とFD活動」というテーマで報告を行った。

スポーツ科学・健康科学教育プログラム室

 2009年度スポーツ科学・健康科学教育プログラム室では以下のFD活動を行った。

1.スノースポーツにおける指導技術の向上 2.授業展開方法に関する懇談 3.関西五私大体育研修会への参加である。本プログラム室のFD活動において共通するのは、受講生に対する安全管理能力の向上を期した内容といえる。受講生が意欲的にスポーツ活動に取り組むためにも、安全管理能力の向上を指導することはプログラム室全体で取り組んでいくべき重要事項といえる。

情報メディア教育センター

 情報メディア教育センターでは、学部教育におけるFaculty Development(以下、FDと略)体制の確立のために、2008年度後期から授業補佐全員に「授業補佐業務終了後に提出する業務報告書」(以下、SA業務報告書と略)の提出を義務づけた。この情報メディア教育センター独自のFD活動は2009年度にて、実施2年目となる。SA業務報告書は授業補佐の間で閲覧できる。過去のSA業務報告書を活用したり、他の授業補佐に役立つSA業務報告書を記入するなど授業補佐の間で自律的に「共有力」を養成できる。本施策の実施により、授業補佐同士・授業コーディネータ・各教員の間で情報共有が行いやすくなった。2008年度から平均で週に1・2回、授業コーディネータと授業補佐で 「SA連絡会」 を開催しており、各授業の報告などを授業補佐にさせ、情報の共有を図り、重要な事柄は授業コーディネータから各担当教員に報告や相談している。このように、SA連絡会とSA業務報告書閲覧体制は相補的に機能している。

言語教育研究センター

 言語教育研究センターでは、センター全体で、また言語ごとにさまざまなFD活動を行っているが、2009年度は主として以下のような活動を行った。

●センター会議:5月28日に「言語教育におけるろう・難聴学生への対応について」「学部新設に伴う言語教育におけるST比について」の二つの問題を取り上げ開催。

●選択外国語担当非常勤講師と言語コーディネーター、センター副長との懇談:6月中旬から7月上旬にかけて11言語の語種ごとに実施し、授業運営上の問題点、履修者の出席状況などについて懇談を行い、授業改善に向けた取り組みを行った。

●言語教育研究センター研究会:「大学における言語教育コミュニケーション教育ならびに言語文化教育のカリキュラム・教材の開発と研究」を共通テーマに7つの言語ごとに共同研究を行い、成果を年報に公表した。また、2月には研究発表会を開催した。

●講演会・シンポジウム・セミナー:センター構成員の研究水準の高度化を目指し、国内外の学者、文化人を招聘し、講演会7回、シンポジウム、セミナー各1回を開催した。

●語種別懇談会・教育研究会:語種別に懇談会や研究会を実施し、FDに関わる議論を行った。

教職教育研究センター

 教職教育研究センターでのFD活動は、教職教育研究センター専任教員と事務職員によって、ほぼ毎週開催される教職教育研究センター連絡会(以下センター連絡会)と、年1回の教職課程等研究懇話会の2つが中心となっている。センター連絡会のおもな役割は、教職を目指す学生が希望する教育職員免許を間違いなく取得できるようにサポートし、さらに、教職につくことができるように支援することである。教職課程を取る過程で多くの不安や悩みを抱える学生にどのような適切なアドバイスをあたえるかも、FD活動としては重要な懸案となる。懇話会では授業で直面する問題点や疑問点などを提起し、その解決方法について互いに意見交換し、ここでの情報や交換意見に基づいて、それぞれの教員は、授業の運営方法や講義の内容の改善を省みることになる。この他に、センターの5名の専任教員は積極的に、本学を会場とした兵庫県教育委員会主催の教員研修や文部科学省認可の教員免許更新講習の講師を、毎年担当している。そこから得られる現職の教員からのフィードバックを、本学での各担当科目の講義内容の改善に役立てるよう努めており、これもFD活動の一環である。