基本用語解説

[ 編集者:高等教育推進センター       2017年5月26日   更新  ]

アクティブラーニング型授業とは

アクティブラーニングの簡潔な定義は「学習者が活動への能動的な参加とその省察を通じて学ぶよう促す学習・指導方法の総称」(松下 2016)です。

言い換えると、学生が授業内容に対して自ら学ぶ姿勢をもって臨み、学習活動に関する振り返りを通してより学びを深めている状態が、「アクティブラーニング」となります。
学生のアクティブラーニングをねらった学習活動を取り入れた授業を、「アクティブラーニング型授業」と呼びます(溝上 2014)。

アクティブラーニングをねらった学習活動の特徴には下記のようなものがあります。

(1)先生の話を「聴く」以上の学習活動がある。「読む」、「書く」、「他者と意見を交換する」などの学習活動の場が設けられている事。
(2)教授者自身の意識は、効果的に情報(知識)を伝達できたかどうかではなく、学生自身の成長(知識技能、思考力・判断力、態度の発達)に向いている事。
(3)頭の中で起こっている様々な認知プロセス(記憶だけでなく、推論や判断、意思決定など)を表現する事のできる場が設けられている事。
(4)学生自身の価値観や態度の変容を意識した場が設けられている事。

溝上慎一(2014)アクティブラーニングと教授学習パラダイムの転換.東信堂
松下佳代・石井英真(2016)アクティブラーニングの評価.東信堂

講義型授業とは

義型の授業は、教授者が知識を伝達し、学習者がその知識を記憶する形式をとります。アクティブラーニング型授業と対比する形で批判される事もありますが、限られた時間の中で一定の知識を伝達するという意味では、合理的な形式だといえます。また、アクティブラーニング型授業が増加する中でも「講義」が無くなることはありません。アクティブラーニング型授業と二項対立の関係として捉えるのではなく、目的や対象に応じて柔軟に使いわける工夫が必要になります。

協同学習とは

協同学習は,小グループを編成し仲間と共に課題に取り組む学習法です.協同学習は,単に人が集まっただけのグループ学習とは区別されています.グループ学習に,下記の特徴が加わった際に,それは「協同学習」になると考えられています(安永ほか 2016).

(1)メンバー全員がグループの学習目標に向けて信頼関係を築き,力を出しあう
(2)自分の学びに加え,仲間の学びに対しても責任を持つ
(3)グループ内のメンバー同士が積極的に交流をする
(4)学習スキルや対人スキルの習得も意図して授業がデザインされている
(5)振り返りを定期的に行い,グループ学習の改善を行う

安永悟・関田一彦・水野正朗(2016)アクティブラーニングの技法・授業デザイン・東信堂

問題解決学習とは

問題解決学習(Problem-Based Learning)は,一般的に「PBL」と呼ばれるています.PBLは,「実世界で直面する問題やシナリオの解決を通して,基礎と実世界とを繋ぐ知識の習得,問題解決に関する能力や態度等を身につけること」を意図しており(溝上・成田 2016),問題の設定が重要な意味を持ちます.例えば,早くからPBLが取り入れられはじめた医学教育の分野では,はじめに患者の病状や置かれている状況が「問題」として提示され,その後学習者は手がかりをみつけ,仮説の生成,実験,検証などのステップを踏みます.この場合,患者の病状や状況は,現実性の高いものが設定され,学習者がリアリティを感じやすいよう工夫されています.学習プロセスは,個人学習とグループでの学習を組み合わせて行われます.

PBLは,Problem(問題)が与えられるところから学習がスタートします.以下,そのプロセスを簡潔に説明します.

(1)Problem(問題)が提示される.学習者はProblemの内容をよく理解する.
(2)追加で必要になる情報収集を行う.
(3)仮説を生成する
(4)検証する(実験等)
(5)分かった事を整理する
(6)プロセス(1)~(5)で分かった事をまとめる

上記,(1)~(6)のプロセスを行う中で,教授者による形成的評価や学習者による自己評価を適宜行い,プロセスが円滑に進むよう勤めます(溝上・成田 2016).
 
 PBLのプロセスの特徴は,一般的な講義型授業では,教授者による解説(知識の伝達)の後,それらの理解度を確認するために問題が与えられ,解くという学習活動が始まるのに対し,PBLでは,はじめに「問題」が与えられ,それに必要な知識を学習者が自ら収集するという点です.ここに,アクティブラーニングを成立させる強い要素が含まれています.

溝上慎一・成田秀夫(2016)アクティブラーニングとしてのPBLと探究的な学習.東信堂

プロジェクト学習とは

プロジェクト学習(Project-based Learning)は,一般的に「PBL」と略され,問題解決学習のPBLと混同されがちですので,要注意です.

プロジェクト学習(PBL)と問題解決学習(PBL)の決定的な違いは,はじめのステップにあります.PBLでは,はじめに問題(Problem)が与えられるのに対して,プロジェクト学習ではプロジェクトテーマの設定からはじまります.プロジェクトテーマとは,学習者が探究したいと思う課題などを意味しているため,何を設定するかによって学習内容が異なります.つまり,予め教授者によって学ぶ内容が問題を通して設定されている問題解決学習とは違い,プロジェクト学習は学習者の興味関心に基づいた学習活動になる点が特徴であると言えます.

プロジェクト学習の基本的なプロセスは下記になります(溝上・成田 2016).

(1)プロジェクトテーマの設定
(2)解決すべき問題や問い・仮設をたてる*
(3)先行研究のレビュー
(4)必要な知識や情報,データの収集
(5)結果と考察
(6)成果物として仕上げる(発表・レポート等)

上記プロセスの中で,場合によっては基礎情報を与えるために(2)の前に大まかに(3)を行う場合もあります.

溝上慎一・成田秀夫(2016)アクティブラーニングとしてのPBLと探究的な学習.東信堂

編集:時任隼平(高等教育推進センター教員)