[ 言語コミュニケーション文化研究科 ]研究科委員長挨拶

言語コミュニケーション文化研究科委員長 藤野 真子

言語コミュニケーション文化研究科委員長 藤野 真子

好奇心を胸に、真摯な姿勢で

 黒い顔、見開いた目、きらびやかな衣装。私が手にしている恐ろしげな顔の人形は、台湾の伝統劇・布袋戯に登場する、北宋時代に実在した名判事の包公(包拯)です。中国語圏の物語世界では、弱きを助け強きをくじく正義の人であるだけではなく、「昼はこの世を裁き夜はあの世を裁く」ほど超常的な力を備えたスーパーマンとして描かれます。

 そんな包公が大切にするのは、事件に関わる人々と丁寧にコミュニケーションをとりながら調査を進めることです。街中を歩き回って証拠を探し、時には証言を得るため「あの世」へ霊魂を訪ねて行き、先入観にとらわれず色々な立場の人に耳を傾け、小さな気づきをきっかけに大きな事実を発見し、事件の真相へと迫っていくのです。

 包公の態度は、大学院で研究する姿勢にも通じると思いませんか。当たり前のようで、こうした地道な作業を続けるのは意外に難しいものです。私たちはまずテーマを設定し、文献を調査したり人々にインタビューしたりするうちに、ある事実を見出し、説得力ある結論にたどり着きます。もちろん、その過程においては何度も試行錯誤を重ねることでしょう。そんなとき、包公は正義を貫きたいという情熱をモチベーションに行動しましたが、本研究科に集う皆さんには、代わりにマニアックなぐらいの好奇心を推進力として研究に携わって欲しいと思います。

 言語科学、言語文化学、言語教育学、日本語教育学、どの領域を選んでも、強い好奇心を抱き、他者と深くコミュニケーションをとり、人や物事の多彩な背景を真摯に調べていけば、きっと皆さんの求める「真実」を獲得できることでしょう。