キリスト教と文化研究センターの理念・目的・教育目標

[ 編集者:キリスト教と文化研究センター  2006年9月11日 更新 ]

理念・目的・教育目標

 「キリスト教と文化研究センター」(以下RCCと略す)は、関西学院大学のキリスト教主義に基づいた研究と教育の充実をめざして、1997年度に発足した。センターの名称を「キリスト教と文化」としたのは、本センターが、現代社会と文化が直面する諸問題とキリスト教とのダイナミックな折衝を、学術的に探究するという設立理念によっている。
 RCCは「キリスト教と文化・人間・世界・自然の諸問題に関する総合的な調査・研究」を実施するとともに、関西学院大学の「キリスト教主義教育の内実化」を図る(「センター規程」第2条)との理念のもとで、二つの目標を明文化している。
 そのひとつは、キリスト教と文化一般の諸問題の総合的分析と研究を行なうことであり、もうひとつはMDSプログラム(複数分野専攻制)「キリスト教と文化」を設けて、キリスト教主義に基づいた総合教育活動を推進することである。
 RCCの理念ならびに目標の設定において特に注意されるべきは、キリスト教と文化の総合研究にせよ、キリスト教主義に基づく教育活動にせよ、その両者が「文化」「教育」の概念を広く捉えて、あらゆる現代的領域に対話していく公開的な姿勢をもったことである。これは従来、本学のキリスト教関連の研究・教育活動が、ややもすると特定の狭いサークル内の専門人によって、「内向き」になされてきたことへの反省による。そのゆえにRCCの教育・研究は、キリスト者、非キリスト者の別を問わず、学内外に「開かれた」知的空間をめざすものとされてきたが、この基本姿勢は今後も維持されていく方針に変わりはない。
 さてセンターの基本理念と目標にそって、RCCは発足以来、具体的には生命倫理、エコロジー、グローバル化、民族、宗教、戦争、人権、平和といった現代的課題とキリスト教の接点を探り、共生的な世界を構築するために各種の研究会、講演会を精力的に企画してきた。そしてその成果を「RCCニュースレター」といった定期刊行物、インターネット上のホームページの開設、さらに研究の出版を通して内外に広く公開してきた。さらに学術界だけでなく、地域社会のためにも「父母のためのキリスト教講座」や各種のキリスト教講演会、オープンセミナーの機会を設けてきたが、こうした一般社会への啓発・教育的貢献も、今後さらに充実・発展させるべく組織体制を整備していくことが目ざされる。

 なおRCC提供のMDSの教育プログラムは、2004年度より神学部に移管されて新しい歩みが始まった。MDSの開設は現代世界の多様なニーズに応じるため、従来の学部の枠にとらわれない、幅広い知性と教養を備えた学生を養成するために設けられた、RCCの学際的な教育理念の柱のひとつであったが、神学部における新たなコース制の発足により、より総合的な学習効果を達成すべく結果的にはRCCの手を離れた。しかしRCCは今後とも協力できるところは協力して、各種の情報や研究成果を提供して側面から支えていくことにしていくことに変わりはない。
 RCCはこの三年間に限っても『生命科学と倫理―21世紀のいのちを考える』(2001年)、『民と神と神々とーイスラーム、アメリカ、日本を読む』(2004年)(以上、関西学院大学出版会)、『アメリカの戦争と宗教―アジアのまなざしから』(2004年9月出版予定、新教出版社)と研究成果の出版を矢継ぎ早に行ってきた。こうした先端的な研究活動と業績成果は、日本国内にある他大学のキリスト教文化研究所やセンターの高い評価をえて、RCCへの内地研究留学を志望する大学教員が出るまでになった。今後は現在の研究水準を維持し、現在進行中の各種企画、「暴力とキリスト教」(大学共同研究採択)、「スピリチュアリティと宗教」「周死期」といったパイロット・プロジェクトを積み上げつつ、新たな総合研究主題「宗教と平和戦略研究」(Religion and Peace Strategic Studies)のもとで、日本におけるキリスト教平和学の情報発信センターをめざし、RCCの基本理念のさらなる実現を図っていきたい。