2021.07.29.
<ジャン・モネ・モジュール>COIL型授業「The European Union: History, Politics & Economy」のご紹介

アンナ・シュラーデ 産業研究所准教授


 2020年と2021年に関西学院大学(KGU)の学生が(仕方なく)受講したオンライン授業。これをより良いものにするにはどうしたらいいのかと、考えたとき、 COILがありました。
 COILは、Collaborative Online International Learning(オンライン国際協働学習)の略です。その名のとおり、世界の異なる大学の学生が、オンラインで共に学ぶことを目的としています。私たち場合は、KGUの学士課程の学生とミュンヘン大学(LMU)の修士課程の学生との間で実施しました。それぞれの専攻が異なるにもかかわらず(LMUの学生は日本研究専攻、KGUの学生は国際学専攻でEUを研究対象)、上手く進めることができました。それは、「移民」を主なテーマとしたことで、比較・対照できる部分が多かったからです。

 全14回の授業では、LMUグループとKGUグループで毎回1つの共通テーマを設定しました。唯一異なるのは、ドイツの学生は日本の例を分析し、KGUの学生はEUの状況を調査したことでした。
 ほとんどの授業では、まず、Zoomに学生全員が集まる全体セッションでその日のテーマの概要を説明した後、LMUの学生がその日のテーマについて日本の例を挙げて短いプレゼンテーションを行います。その後、主なポイントについてディスカッションをしてから、2つのグループに分かれます。ドイツの学生のグループは議論を続ける一方で、KGUの学生のグループはEUからの観点について取り組んでいました。
 この授業の中で私は、次のような様々な角度からEUの労働移動と移民について講義を行いました。
  - 介護分野での労働移動
  - 農業における労働移動 
  - 高度人材の移住
  - 移動の経済的問題
  - 多文化主義vs.同化
  - 帰属意識の問題
  - 市民社会と移住
  - 難民と不法移住
  - 統合に向けての取り組み

 学生たちは、授業の最初に日本の状況を学ぶことで、EUについて調べる前に自分の国の概況や現状を把握しておくことができました。多くの日本の学生にとってはEU政策を学ぶことは難しいことから、まず日本について学び、次にEUの状況と比較することで、トピックに関連する多くの問題やさまざまな政策について理解を深めることができました。そうすることでEUがより身近なものに感じられ、日本とEU(主にドイツ)で何が違い、何が似ているのか明確になり、理解が深まったと思います。
 KGUグループの議論はいつも活発・熱心で、授業の最後の30分間をKGUとLMUでグループセッションを充てるために、議論を切り上げてもらうこともありました。
 再度全体セッションに戻り、両グループの学生がそれぞれの発見や議論のまとめを行いました。このまとめが最終グループディスカッションの基となります。日本とドイツでなぜこれほど移民、移住、難民に関するアプローチや政策が異なるのか、また、移民だけでなく地域住民にとってどちらのシステムが良いのかなど、興味深い討論が多く交わされました。
 この比較アプローチにより、学生たちは異なる政策を視野に入れて考えることができるようになりました。 
議論やグループワークは常に刺激的なものでしたが、時には難しいこともありました。私が感心したのは、全員がハイレベルであったこと(学士と修士の教育レベルの違いはほとんど気になりませんでした)だけでなく、協力的で熱心に取り組んでいたことでした。

 最終課題は、日本に住むドイツ人移民、あるいは、ドイツに駐在している日本人に聞き取り調査を行うことでした。これにより、学生たちは貴重な質的フィールド調査を経験し、興味深い結果を得ることができました。さらにKGUの学生は、日本に住む移民へ個別に聞き取り調査を行いました。その目的は、授業で理論として学んだことが個人の経験にあてはまるのかを確認することでした(聞き取り調査は、フィリピン出身の医療従事者、ソマリア出身の語学学校の学生、インド出身の高技能労働者、駐在員の夫と日本に来たポーランド人主婦、北アイルランド出身の困窮している永住権保持者、長期に滞在しているイギリス出身の英語教師、日本の大学に通うベラルーシ出身の学生など、に行いました)。聞き取り調査により、学生は自分の国で外国人がどのような状況に置かれているのか―どのような困難に直面し、どのような貢献をしているのか―についても理解を深めることができました。
 

 上記のことから、この授業はただ楽しいだけではなく、学生たちが多くを学び、フィールドワークを通して実践的な経験を得ることができるものであったことがおわかりいただけると思います。
 国際教育の新しい形であるCOILは素晴らしい概念であり、他の方にもお勧めできます。KGUの学生の感想を読んで、他の方も今後COIL授業にチャレンジしていただきたいと思います。

 「昨年からほとんどの授業がオンラインで行われていますが、この授業がこれまでで一番クリエイティブなものでした。ドイツの学生たちと一緒に授業を受けることは、いつも私のモチベーションを高めてくれ、私にとって特別なものとなりました。ドイツの学生と議論したり、一緒に作業したりする機会がたくさんありました。実際に海外の大学の学生とZOOMで授業が受けられることにとても驚きました。今後このようなスタイルの授業がもっと一般的になればと思います」
Kosuke N. 

 「ジョイントセッションはとても楽しかったです。EU諸国と日本の両方に関連する問題を同時に議論することで、問題に対しての異なる視点に気づくことができました。また、それぞれのバックグラウンドや価値観が異なるため、新しいアイデアや考えを聞き、発展させる機会にもなりました。例えば、外国人がドイツ人や日本人になるにはどうしたらいいのか、という議論が印象的でした。ミュンヘン大学のある学生は、「日本に外国人が増えれば、外国人も日本人としてのアイデンティティを得やすいのでは」と言っていました。これは、私には考えられないユニークなアイデアでした。このような議論から、国籍や生活環境、価値観の異なる人々の考え方を知ることの重要性を学びこのことが将来各国が直面する課題に対して、より柔軟で創造的な解決策をもたらすのではないかと感じています」
Rira T. 

 

【関連情報】
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2021年LMU-関西学院大学との移民についての共同授業報告
2021 Joint LMU-Kwansei Gakuin University Classroom on Migration – A Seminar Report