[ 編集者:産業研究所    2022年8月30日 更新 ]

2022年3月29日   カンファレンス「地方の再生化:産業、経済と社会的条件」を開催
(ジャン・モネ・チェア ワークショップ「EUと日本における地域産業と経済発展」との共同開催)

タイトル: 地方の再生化:産業、経済と社会的条件
(ジャン・モネ・チェア ワークショップ「EUと日本における地域産業と経済発展」との共同開催)
日 時:2022年3月29日 午後3時 - 午後6時45分
場所:オンライン
言語 英語、日本語
参加者:14名

2022年3月29日、本学ジャン・モネ・モジュールとジャン・モネ・チェアにおいて初めての共同アカデミック・カンファレンスを開催しました。日本への渡航制限が継続していたため、対面参加ができない発表者に配慮し、オンライン開催となりました。

本学ホルガー・ブングシェ教授が率いるジャン・モネ・チェア ワークショップ「EUと日本における地域産業と経済発展」と共同で開催し、地域開発に関するさまざまな視点が盛り込まれた内容となりました。「地方の再生化:産業、経済と社会的条件」というカンファレンスのテーマのもと、日本、ドイツ、イギリス、バングラデシュの6人の研究者が、ヨーロッパと日本における地域開発の可能性について新たなアイデアや洞察を発表しました。 

最初に、高松大学の岡本丈彦准教授から、「地産地消による地域経済活性化における倫理的意思決定:西日本の事例に基づいて」と題した発表がありました。岡本氏は、地産地消がどのように地域の活性化や観光振興につながるかを分析し、四国の例として、徳島県上勝町がフードツーリズムを通じて地場産品とその地域社会の振興に成功したことを紹介しました。

岡本 丈彦氏

次の発表はアートによる地方の活性化に焦点を当てたもので、本学経営戦略研究科のキース・ジャクソン教授と、同研究科博士課程のタジキル・ウッジャマン・エーケーエム氏が、香川県の豊島がゴミの島からアートの島へと発展した経緯を分析し、芸術や文化を地域振興や観光に活用するポテンシャルを示しました。また、「日本の地方における固形廃棄物管理に関するステークホルダーについての研究:バングラデシュの地方コミュニティ活性化プログラムへの教訓」というタイトルで、地方の固形廃棄物処理についてバングラデシュとの比較を発表しました。

タジキル・ウッジャマン・エーケーエム氏
キース・ジャクソン氏

前半の最後の発表は「日欧産業クラスター連携と地域開発」に焦点を当てたものでした。追手門学院大学の藤原直樹准教授は、小さな地方都市であっても、製品の研究開発次第で、国内外をリードする存在になれることを示しました。佐賀県唐津市の事例から、日欧の企業や研究機関による国際的な連携が、都会から離れた町をマーケット(この事例では香水やパーソナルケア産業)のリーダーへと導く可能性を指摘しました。

藤原 直樹氏

カンファレンス前半は主に日本の地域開発の事例を中心とした発表を行い、後半はヨーロッパ(ドイツ、イギリス)に焦点を当てました。はじめに、ドイツの再生可能エネルギーに関して2つの発表がありました。1つ目は、本学ジャン・モネ・モジュールのリーダーであるアンナ・シュラーデ准教授が「里山に再生可能エネルギーを:ドイツの事例から学ぶ」のタイトルで発表しました。ドイツや日本の地域コミュニティが、エネルギー供給事業者となるポテンシャルを分析し、事例として、ドイツにおいて、150を超える村や小さな町がエネルギー自給を実現しただけでなく、再生可能エネルギーを生産し、エネルギー企業に販売して収益を上げていることを紹介しました。

アンナ・シュラーデ氏

次に、本学のホルガー・ブングシェ教授が、「EUのグリーンディールと地域産業発展への影響:代替エネルギー産業を中心に」と題して、地域でのエネルギー生産が地域社会に有益であることを示しました。ドイツのエネルギー・アバンギャルドを例に挙げて、EUのグリーンディール政策が地方のエネルギー生産に大きな可能性をもたらすことを説きましました。

ホルガー・ブングシェ氏

最後は、本学フェローのフランシス・ローリンソン氏が、イギリスの新政策「レベリング・アップ」についての洞察を述べました。講演は「レベリング・アップ:イギリスの新たな地域活性化政策」と題し、EU離脱(Brexit)により終了したEUの地域開発プログラムに代わり、地域活性化のための新たな国家プログラムを導入するイギリス政府の大胆な計画を分析しました。この新政策には大きなポテンシャルがある一方で、実施の遅れや、政策の発動や管理に関して不明瞭な点があることを指摘しました。

フランシス・ローリンソン氏

本カンファレンスは大変好評をいただきました。参加者の方々は、地方が遠隔地という立地を強みに変えることができる多くの事例を熱心に聞いていました。また、発表にはまだ一般にあまり知られていないケーススタディやベストプラクティスが多く、充実したものとなりました。
このJMMとJMCの合同カンファレンスを盛会のうちに終えることができ、みなさまに比較分析についてさらに興味を持っていただけたことをうれしく思います。

発表スライド
アンナ・シュラーデ准教授「里山に再生可能エネルギーを:ドイツの事例から学ぶ」

ホルガー・ブングシェ教授「EUのグリーンディールと地域産業発展への影響:代替エネルギー産業を中心に」

 

ポスター カンファレンス「地方の再生化:産業、経済と社会的条件」(JMCワークショップ「EUと日本における地域産業と経済発展」と共同開催)