[ 編集者:産業研究所   2023年6月19日 更新 ]

2023年5月25日  関西学院高等部でEUについての授業を実施

タイトル: 欧州統合への異見-ソフトパワーとしてのヨーロッパを確立する
日付:2023年5月25日13:20 – 15:00
場所:関西学院高等部 
講師 ホルガー・ブングシェ国際学部教授
参加者数:12名

授業の目的
この講義の目的は、戦争で破壊されたヨーロッパが、規範(ソフト)パワーを持つ存在に徐々に発展してきた過程を知ってもらうことです。また、最近の日韓の和解を背景に、日本と韓国のような中堅国が、民主主義、自由、人権、法の支配といった共通の規範や価値観に基づき、豊かな地域経済発展のために協力すれば、どのようなことが実現できるかを伝えることも目的としています。

授業内容

関西学院大学の国際学部1年生に、国際学をわかりやすく紹介するために寄稿した書籍『国際学入門』の章をベースに、授業を進めました。この章では欧州統合を3つの段階に分けて説明しています。

第一段階は、戦後から1950年代半ばまでであり、貿易の円滑化、欧州諸国間の分業構造の復活、安全と安定のための制度的枠組みの確立を目的として、OEEC(欧州経済協力機構)、EPU(欧州支払同盟)、ECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)という基本的に必要な機関が設立されました。

第二段階は、経済のスケールメリットの確立、共通の内部市場の形成、最初の共通政策の追求に焦点が当てられました。この段階では、1950年代末から1980年代末(ローマ条約と単一欧州法の時代)に、条約の枠組みから生じた統合の取り組みや、欧州為替制度(EMS)、環境政策、シェンゲン協定などの条約外からの取り組みも見られました。この期間における統合プロセスは、一定の速度から倍速、あるいはそれ以上へと変化していきます。

マーストリヒト条約に始まる第三段階は、加速された統合プロセスから、いわゆる「開放的調整法」アプローチへの変化が観察されるようになりました。このアプローチでは、まず1992年のリオデジャネイロ気候サミットで宣言された、持続可能な開発目標(SDGs)の追求、そしてEUのリスボン条約、新リスボン条約、ヨーテボリ議定書、さらには欧州2020や欧州グリーンディールの相次ぐ実施によって徐々に発展しました。共通の目標を掲げながらも、実際の政策実行を加盟国や欧州地域に委ねるこれらの戦略によって、EUは今日のような規範(ソフト)パワーを持つ存在になりました。もちろん、この規範(ソフト)パワーは、気候や環境政策に限らず、人権・難民・亡命者の権利の保護、国際秩序に基づく法の支配といった分野にも及んでいます。

高校3年生にはかなり難しい内容でしたが、欧州統合と拡大という基本的な内容もカバーすることができました。

参加生徒の感想
「日本は常にアメリカを見ているように思うが、ヨーロッパにもっと注目すべきだと感じた」
「ヨーロッパに関して非常に興味が湧いた。国際学部に進学し、さらに学びを深めたい」