[ 編集者:産業研究所   2022年2月4日 更新 ]

2021年12月10日  駐日欧州連合代表部「オンライン訪問」

実施日時:2021年12月10日(金)午前11時-午後12時30分
参加者: 17 
テーマ: EUの気候変動政策 

プレゼンテーション1: 欧州グリーンディールの実現 - 「Fit for 55」政策パッケージ
講師:ヘイディ・ヒルトネン氏(通商部)

プレゼンテーション2: エラスムス・プラス-日本人学生のための大学院進学
講師:リチャード・ケルナー氏 (政治・広報部)

 

プレゼンテーション1:欧州グリーンディールの実現 –「Fit for 55 」政策パッケージ
 まず、気候変動政策や、輸送やエネルギー政策などの関連分野を担当されている通商部のヘイディ・ヒルトネン氏よりプレゼンテーションがありました。最初にヒルトネン氏は、2019年に導入された「欧州グリーンディール」は、温室効果ガス排出量を削減すると同時に、経済成長を持続させ、欧州で新たに高技能・高賃金の仕事の創出を目指すEUの基本的な新成長戦略であると説明しました。経済成長と、資源・エネルギーの利用や環境汚染を初めて切り離し、最新の資源効率に優れた、競争力のある産業発展へのエコロジカルな転換にEUを導くことを目的としています。このようにして、雇用を創出し、競争力を高め、イノベーションを後押しします。

 次に、欧州経済の変革を達成するための施策を挙げ、特にエネルギーやモビリティ、環境、生物多様性から農業や研究開発までの政策分野横断型の施策の必要性を指摘しました。また、この変革は、誰一人取り残さない「公正な変革」であることも強調しました。EUの2030年および2050年までの気候目標と、その達成のための主要な決定事項について簡単に触れ、EUが実施した影響評価報告書の結果を紹介し、特に民間部門に計画の確実性を与え、新技術への投資を可能にするために、長期的で信頼性の高い法律が必要であることを述べました。


 このテーマをより理解しやすくするために、ヒルトネン氏は、EUで実施されている3つの政策例を紹介しました。最初の例は、2020年7月にEUが採択した水素戦略で、2020年から2024年、2024年から2030年、2030年以降の3段階のフェーズがあり、特に脱炭素化が難しいとされる部門でクリーンな水素エネルギーの普及を目指しています。二つ目は老朽化しているヨーロッパの建築物ストックの改修取り組みです。個人住宅は、EU全体の40%のエネルギーを消費し、36%の温室効果ガスを排出しています。そこで、建築部門で16万人の緑の雇用(グリーンジョブ)を創出し、ヨーロッパ内の3,500万棟の建築物を改修することを目標としています。三つ目の例はEU洋上再生可能エネルギー戦略で、特に浮体式洋上風力発電のような新技術の高い可能性や、このような取り組みに、多くの人々の賛同を得る必要性が強調されました。

 次に、EU経済の変革に必要とするEUレベルでの取り組みとして、2030年までに温室効果ガス排出量を55%削減目標とする、「Fit for 55」政策パッケージについて紹介がありました。この「Fit for 55」政策パッケージは、公正で費用対効果が高く競争的な方法で変革を達成するために設けられただけではなく、世界各国に自国の気候目標達成のための実現可能なガイドラインを提供することを目的としています。ここでは特定の分野・部門に立ち入ることなく、価格設定、ターゲット、規格、規則など他の措置とのバランスを取ることを考慮したさまざまな政策の組み合わせに着目して、大規模産業施設や発電業だけでなく、最近では航空、道路輸送、建物、海上からの排出も対象となった、新しいEU排出量取引制度についても簡単に説明がありました。

 排出量取引制度に関しては、議論のある「炭素国境調整メカニズム」についてもお話しがありました。このメカニズムは、EUの厳しい規制に従うEU内の製造業や経済主体を、緩やかな規制を適用している非EU諸国との競争から守るために考案されたもので、EU域内の製造業が炭素排出基準の低いEU域外へ生産拠点を移す誘因(カーボンリーケージ)を減らすことも目的としています。このメカニズムを導入する難しさは、第一にWTOの規則に準拠している必要があること、第二に同等の規制のもとで生産されたEU域外からの輸入品は、このメカニズムの調整対象外となることを確認する必要があることにあります。

 現在検討されているもう一つの立法措置は再生可能エネルギー指令の改正で、2030年のEUのエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの目標値を、当初の32%から40%に引き上げることを意図しています。現在の再生可能エネルギー比率(2020年)は約20%で、特に、冷暖房、建物、運輸、製造業など主要部門における再生可能エネルギーの比率を上げることを目標としています。再生可能エネルギー指令と並行して、エネルギー効率化指令も現在改正が行われています。

 最後に、運輸部門に影響を与えている現在の政策措置について簡単に説明がありました。運輸部門の排出量は2050年までに90%削減する必要があります。

 プレゼンテーションの後には、参加した学生から多くの質問が寄せられ、学生の関心に十分応えたご講演をいただきました。

 

プレゼンテーション2:エラスムス・プラス - 日本人学生の大学院留学
 次のプレゼンテーションでは、政治・報道・情報部学術協力担当のリチャード・ケルナー氏が、日本の学生にEUが提供しているEU留学の機会について紹介しました。
これまでの2回同様、エラスムス・プラス・プログラムと、世界中の学生にも提供されている多くのコースについて説明がありました。

 エラスムス・プラスは多国間で実施されているプログラムですが、特にこの2年は新型コロナウイルスによる渡航制限から、参加学生が2年間ヨーロッパの異なる大学院で学べるプログラムは一層魅力あるものになっています。ケルナー氏は、プログラムの概要の説明に加え、応募方法や情報の収集先なども具体的に参加学生に提示してくださいました。最後に、2019年まで毎年欧州連合代表部が日本各地で場所を変えながら開催していた「欧州留学フェア」について、新型コロナウイルスの影響により現在はオンラインで開催していることについて説明がありました。

 

駐日欧州連合代表部「オンライン」訪問ポスター